ベビーフード産業発展の背景
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/10 15:54 UTC 版)
「ベビーフード」の記事における「ベビーフード産業発展の背景」の解説
社会的側面 日本においては、少子化にも関わらず、ベビーフード産業は年々成長を遂げている。日本ベビーフード協議会の推計では、2018年の市場規模は440億円と過去最多であった。その社会背景には共働き世帯の増加、ベビーフードを使うことへの心理的抵抗感の薄れとかつてより少ない子供に費用をかける志向、外出先に携行できるレトルトパウチ入りや1歳過ぎても使える製品の開発などがある。離乳食の調理は非常に時間と手間の掛かる作業で、それらは主な養育者である母親の負担になっていた。それが育児と仕事を両立させるとなると、相当な労力である。順って、調理の手間を省くことができる既成の調理品であるベビーフードがその利便性故に重宝されるようになったのである。 栄養面 ベビーフード使用拡大の背景には、栄養に対する不安も大きい。栄養に対する知識は育児の上では絶対に欠かせない事項であり、バランスの取れた食事を摂っていかないと、子どもの成長に支障を来す恐れがある。しかし、離乳食は作るのが難しく、仮に作ったとしてもそれがどれぐらいの栄養、塩分なのか素人では栄養摂取量の計算が困難である。だからこそ、予め栄養が表示された調理品を利用する傾向にあるといい、これならいつどのくらいの栄養を摂ったかすぐに計算できる。また、調理品の場合、栄養バランスが偏らないように配慮されたものが多いので、確実な栄養摂取ができるようになっている。これらベビーフードは大体、メーカー直属の栄養士が指導に当たっている。栄養のプロが指導した食品であるゆえに、消費者は安心して栄養摂取の方法を得ているわけである。 安全面 そして今日では食に対する安全性も重要な要素である。一般に出回っている食品類は残留農薬や抗生物質、細菌類、食品添加物などの面で乳児にとって決して安全とは言い難く、成人はこれらの毒素を分解、濾過、排泄などを行う各種内臓器官が発達しているが、乳児ではそれが未発達であるため、一定のリスクが伴う。また、成人の食事では味付けが濃いために、塩分や糖分夥多になる恐れがある。そのため、ベビーフードに安心と信頼を置いて、利用しているのである。 ベビーフード各社で作るベビーフード協議会は、食品衛生法やJAS法、健康増進法などに基づき、非常に厳しい安全基準を設定している。 まず、食品添加物類はほとんど用いられない。塩分や糖分もかなり控えられており、ナトリウム含有量にも規定値が設けられている。そのほかにも内分泌攪乱物質(一般に言う環境ホルモン原因物質)、使用する容器に対する安全基準など非常に厳しい決まりがある。 特に年々厳しくなっているのが使用原料に対する規制である。2002年にベビーフードメーカーの調理品から基準値以上の残留農薬が検出されたことがマスコミに取りあげられ、世間のベビーフードに対する視線は厳しい物となった。それによって協会、及びメーカーは対応に追われ、安全基準の抜本的な見直しが図られることになったのである。故に今日では使用する穀物、野菜や魚介類、精肉などの原料類にも厳しい規制が設けられ、消費者のニーズに応えるようになっており、メーカーはより安全な原料の確保を行うようになった(例として原料を輸入冷凍野菜から、国産の契約農家からの仕入れに変えた、などがある)。 むしろ、そうしないとメーカーは消費者からの信用、信頼を失うからである。顕著な例として、森永乳業が起こした森永ヒ素ミルク中毒事件に見られる様に、一度信頼を失ったメーカーは確実に競争に敗れ、後退してしまう。それほど消費者はベビーフードに対して高い安全意識を持つ。そのたとえとして、ベビーフードと食品を扱うドラッグストアでは、インスタントラーメンやジュース類などはだいたい賞味期限まで半月ぐらいに迫ったら店から下げたり、ワゴンで値下げ販売をしたりするのが一般的だが、ベビーフードに至っては2ヶ月前になったら店から下げるのが常識と言われる。賞味期限切れのベビーフードを買わせたとして裁判沙汰になったケースもあるほどである。
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