ノンキャラクターの模索~チョコエッグの時代
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 09:57 UTC 版)
「海洋堂」の記事における「ノンキャラクターの模索~チョコエッグの時代」の解説
売上もそれなりのレベルを維持していた海洋堂だったが、ガレージキットが主力商品であった頃から、あるキャラクターが売れてくる、さらにいえば海洋堂が市場を作り出すと、版権を海洋堂が取得していたにもかかわらず、さらに大規模な商業展開をできる大手企業に奪われ独占されてしまう、という事態が幾度となく発生していた。その様な業界大手の横暴、理不尽さに何度も辛酸を舐めさせられてきた海洋堂は、既存キャラクターや版権による利益に依存しない方向性を模索する様になってゆく。 決定打といえる方策がなかなか打ち出せない日々を送っていた時、同じ大阪の菓子会社・フルタ製菓から仕事の依頼が来た。もともとはポケットモンスターのおまけの造形がうまくいかず、何とかならないかという話だったが、工場を見学した宮脇修一がなんとはなしにチョコエッグを試しに持ち帰って来た事により話は変わってきた。 宮脇修一はチョコエッグのおまけは今のところたいしたものではなく、これを海洋堂が作る事でもっと良い物ができると思いついたのである。アクションフィギュアでノウハウを蓄積した中国の工場も使える。その話をフルタ製菓に持ちかけたところ合意に達した。フルタ製菓は古い体質の会社だったが、チョコエッグという商品自体は、フルタ製菓の常務取締役(当時)・古田豊彦がほぼ全権を握っていたので話は円滑に進み、動物というノンキャラクターのおまけフィギュアをつけて売り出すことになった。造型担当は松村しのぶ。彼の造る恐竜はニューヨーク自然史博物館からも展示物の製作依頼が来るほどのものであり、自然史分野においては海洋堂一の腕を持つ造型師である。 結果は大成功した。他社の人気キャラクターのおまけつき商品を押さえ、圧倒的な売り上げを記録した。本来の狙いである子供はもとより、おまけの完成度の高さに感心した大人までがこぞって買い始めた。加えて第二弾途中からツチノコがシークレット(=ラインナップ表に載っていないもの)で入っているということが口コミで広がり、チョコエッグファンの収集欲を刺激し、人気に拍車がかかり、2001年には大流行商品となった。以降、食玩におけるシークレットアイテムの存在は一般的なものになっていった。 その一方で、フルタ製菓は、社員が発売前のフィギュアをインターネットオークションに流通させる不祥事を起こした。また、海洋堂に何ら相談する事なくチョコエッグのラインナップに既存のキャラクターものを加えたり、海洋堂を通して原型提供を受けていた造型師に直接接触をとるなどの背信行為を繰り返し、海洋堂との信頼関係を損ねた。その後フルタ製菓は経営陣が内紛状態となり、分裂してしまったため(この時、フルタ製菓を離れた古田豊彦は食玩会社・エフトイズを興し、独立している)、海洋堂はチョコエッグ、ひいてはフルタ製菓と縁を切る事となる。さらには後にフルタ製菓の生産数量虚偽報告が発覚し、訴訟に発展した。第一審では海洋堂のほぼ全面勝訴といえる判決が出たが、フルタ側は控訴。控訴審で判決は覆らずフルタ側の敗訴が確定した。チョコエッグとの決別は、海洋堂にとっても痛恨の極みといえる選択であったが、製品の質が維持できないならきっぱりやめてしまう海洋堂らしさが出た一面でもあった。その後は大手玩具企業・タカラトミーからチョコエッグの続きとしてチョコQを継続発売し、「おまけの元祖」・江崎グリコ、金沢の菓子会社・北陸製菓など数多くの企業から食玩を出し、ヒットさせている。 このチョコエッグの大ブームは、海洋堂自身にも大ブームを引き起こした。その結果、一時は食玩とガレージキットの業界における話題性において独占的な状態となり、「海洋堂デザイン」というだけでも大きなセールスポイントとなった為、この時期、菓子業界・玩具業界において、新製品はもとより、既存商品の新展開などであっても、デザインに海洋堂を起用し、また海洋堂デザインのものに切り換えるメーカーが相次いだ。結果として、食玩・ガレージキット産業の市場拡大の主役になると同時に、従来は多くの小規模企業や個人商店などが並び競っていたこの業界に、淘汰と変革の波さえ起こす事になった。 現在は食玩製作を主業として続けながらも、ブームの沈静化を受けて「食玩の次」を模索している状況である。他方、現在のガレージキット業界のメインストリームである「塗装済み完成品美少女フィギュア」には完全に乗り損ねた感があり、山口式可動をベースにした新機構「リボルバージョイント」を導入した低価格アクションフィギュア商品「リボルテック」シリーズに注力している。この過程で、仏像のアクションフィギュア化という珍しい参入も果たす。
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