ドラッグデリバリーとは? わかりやすく解説

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ドラッグデリバリーシステム

(ドラッグデリバリー から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/18 00:57 UTC 版)

ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System, DDS)とは、体内の薬物分布を量的・空間的・時間的に制御し、コントロールする薬物伝達システムのことである。薬物輸送(送達)システムとも呼ばれる。

ロバート・ランガーはDDSの功績によりチャールズ・スターク・ドレイパー賞を受賞した。また高分子ミセルによるDDSの研究者としてフンボルト賞、クラリベイト引用栄誉賞を受賞した片岡一則、EPR効果の発見をした前田浩、Kydonieus賞 (2020)[1]やClemson賞(2017)[2]を受賞したサミールミトラゴトリがいる。

メリット

この技術を使うことにより期待されることは大きく以下の5つに還元できる。

  1. 薬物作用の分離 - 特定の作用だけを取り出す、または抑え込む。
  2. 効果の増強/発現 - 効果がより的確なものとなり、再現性も向上する。投資量の削減や適用拡大(新しい効能の発現など)が期待できる。
  3. 副作用の軽減 - 安全域の拡大を図ることにより、QOLを改善し、患者の負担を軽減する。また、副作用から製薬化が頓挫した化合物を薬として復活させることもできる。
  4. 使用性の改善 - 患者および医療従事者の負担を軽くし、薬物の服用指示違反(コンプライアンス不順守)問題の解消につながる。
  5. 経済性 - 製品のライフサイクルの延長、差別化が図れる。また、医療費や関連費用の削減ができる。研究・開発の効率化が期待できる。

種類

大別すると、標的指向型DDS、放出制御型DDS、吸収制御型DDSの3種類がある[3]。標的指向型は更に、能動的薬物送達系と受動的薬物送達系に分けられる[4]

  • 能動的薬物送達系:薬物運搬体に抗体や糖鎖などを結合させて標的組織への指向性を制御する。
抗体、糖結合、 ホルモン結合、 受容体結合、 抗体薬物複合体融合タンパク質
  • 受動的薬物送達系:薬物運搬体の粒子径や親水性などの物理化学的性質を利用して薬物の体内動態を制御する。
プロドラッグ、ポリエチレングリコール修飾、高分子ミセル、リポソーム、マイクロカプセル、シクロデキストリン、ナノ粒子等
薬物を含む粒子の径[5]
粒子(リポソーム[6]ミセル[7])の径のこと。
  • 直径150nm以下の小さな粒子を皮下投与すると、毛細血管壁を通過できないが毛細リンパ管には侵入できる。リンパ管は癌転移や細菌感染の主な経路であるので、抗がん剤や抗生物質を投与する際に適している。
  • 直径100nm以下の粒子を静脈内に投与すると、腫瘍組織内の新生血管は壁が粗いので、血管壁を通過する。従って粒子が高濃度に腫瘍内に集積する。
  • 直径5μm程度の粒子を静脈内投与すると、毛細血管を通過できないので肺に粒子が集積する。
抗体等の使用
トランスフェリンレセプターや他の腫瘍特異抗原に結合する物質(トランスフェリンや各種抗体)を粒子表面に固定すると、粒子は目標組織に高濃度に集積する。
徐放製剤
そのままでは短時間で吸収・分解されてしまう薬物を長時間にわたって一定の速度で放出し、体内への供給を持続させるよう工夫された製剤。
経皮吸収
経皮吸収剤では、そのままでは吸収されにくい薬物をより多く吸収させるためのデリバリーシステムが開発されている[8]
経皮吸収を促進させる技術として、電流を使ったイオン導入や超音波を使った超音波導入[9]、極小針で皮膚に穴をあけるマイクロニードルがある[10]

出典

  1. ^ 2020 Awards Announced | Controlled Release Society (CRS)”. www.controlledreleasesociety.org. 2020年11月15日閲覧。
  2. ^ Plenary Session I: Clemson Awards”. Society for Biomaterials. 2017年2月27日閲覧。
  3. ^ 【DDSの現状と展開】第2回 「DDSの3大テクノロジー」|薬事日報ウェブサイト”. 2022年1月4日閲覧。
  4. ^ Papaka, Mamaka (2021年3月8日). “受動的ターゲティング(Passive Targeting) | ちょっと新しいドラッグデリバリーシステム(DDS)”. common-pharm-sci.net. 2022年1月4日閲覧。
  5. ^ 患部を狙い撃つためのDDSによるターゲティング”. 2014年10月9日閲覧。
  6. ^ トランスフェリンを用いたがん細胞へのターゲテイング(Active Targeting)”. 2014年10月9日閲覧。
  7. ^ ミセル化ナノ粒子(高分子ミセル)”. 2014年10月9日閲覧。
  8. ^ ILTS~独自の経皮製剤技術~”. 2014年10月9日閲覧。
  9. ^ 杉林堅次「新しい経皮投与法イオントフォレシス」『ファルマシア』第37巻第5号、2001年、385-387頁、doi:10.14894/faruawpsj.37.5_385NAID 110003644857 
  10. ^ 杉林堅次「薬物の皮膚透過促進とコントロールドリリース」『Drug Delivery System』第31巻第3号、2016年、201-209頁、doi:10.2745/dds.31.201NAID 130005433005 

関連項目

  • プロドラッグ (: prodrug) - ある薬物に、別の分子を化学的に付加して作られた物質。そのままでは薬効を示さず、付加された分子が体内の酵素によって外れると元の薬物に戻る。直接投与すると吸収されなかったり、副作用が現れる薬物をプロドラッグ化することにより使用性の改善を図っている。
  • アンテドラッグ(: antedrug) - 局所に投与して効果が現れたのち、すばやく代謝され副作用の少ない物質に変わる薬物(出典:薬学用語解説 アンテドラッグ”. 2014年10月19日閲覧。
  • スマートポリマー: Smart Polymers) - 外部からの刺激に応答してその性質を変化させる高分子材料の総称であり、生体内の特異的な環境(標的分子やタンパク質、DNAなど)に応答して薬剤を放出するDDS基材への応用が期待されている。

外部リンク


ドラッグデリバリー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/09 01:00 UTC 版)

固体脂質ナノ粒子」の記事における「ドラッグデリバリー」の解説

固体脂質ナノ粒子は、経口および非経口ドラッグデリバリーシステム基礎をなして働く。SLNは、脂質エマルションとポリマーナノ粒子システム利点兼ね備えており、従来のポリマーナノ粒子ドラッグデリバリーアプローチで問題となっていた時間的および生体内での安定性の問題克服するSLNは、他のコロイド担体比べて多く利点兼ね備えていることが提案されている。すなわち、親油性および親水性薬物取り込みが可能であること、キャリア生物毒性がないこと、有機溶媒使用しないこと、薬物放出の制御および薬物標的化が可能であること、薬物安定性向上すること、および大規模生産に関して問題がないことである。最近の研究では、親水性分子である硫酸鉄(II)(FeSO4)をステアリン酸構成され脂質マトリックス組み込むことにより、栄養ミネラルである経口投与するためのプラットフォームとして固体脂質ナノ粒子使用することが実証された。カルベジロール担持した固体脂質ナノ粒子は、脂質としてCompritolを、界面活性剤としてPoloxamer 188用いて経口投与用の熱均質化法で調製された。SLN用いたドラッグデリバリーの別の例として蒸留水懸濁した経口固体SLNがあり、SLN構造内に薬物閉じ込めるために合成された。消化不良になると、このSLN胃酸や腸酸にさらされSLN溶解して薬剤体内放出する多くナノ構造システム眼のドラッグデリバリーに採用されており、いくつかの有望な結果得られている。1990年代から、SLNは、薬剤担体システムとして注目されてきた。SLNは、生理的脂質から調製されるため、生物毒性示さないSLNは、薬物角膜吸収促進し親水性および親油性の薬物の眼内バイオアベイラビリティ向上させることができるため、眼のドラッグデリバリーにおいて特に有用である。また、固体脂質ナノ粒子は、眼科薬製剤化必要なステップであるオートクレーブ滅菌ができるという利点もある。 SLN利点には、生理的脂質使用急性および慢性毒性危険性低減)、有機溶媒不使用潜在的な幅広い適用範囲経皮経口静脈内の投与)、高圧ホモジナイザーによる製造方法確立されていることなどが挙げられる。さらに、難水溶性薬物固体脂質マトリックス組み込むことによって、バイオアベイラビリティの向上、や光などの外部環境から敏感な薬物分子保護さらには放出制御特性などが主張された。さらに、SLN親油性親水性両方薬剤を運ぶことができ、高分子界面活性剤ベース担体比較してより低価格である。

※この「ドラッグデリバリー」の解説は、「固体脂質ナノ粒子」の解説の一部です。
「ドラッグデリバリー」を含む「固体脂質ナノ粒子」の記事については、「固体脂質ナノ粒子」の概要を参照ください。

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