フォーマット (ストレージ)
(ディスク・フォーマット から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/15 14:37 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動HDDやSDカードなどといった記憶装置(電子媒体)におけるフォーマット(初期化、イニシャライズ)とは、コンピュータやデジタルカメラなど対象となる情報機器で使用できる状態にすること。またデジタル家電[注釈 1]では、データを関連機器で扱うために必要なデータを記録することが必要な場合もある。これをアプリケーションフォーマットと呼ぶ。
なお日本ではフォーマット実施の事を初期化 (initialize)と呼ぶが、本来はフォーマット (formatting)は初期化の際の一要素であり、初期化そのものではない。
概要
記録装置は、そのままではデータ(ファイル)を記録することはできない[注釈 2]。記録するためには、「ファイルシステムの識別子」や「パーティション情報」、「ディレクトリやファイルの名前や構成情報」などの初期値を記録する必要がある。この初期化が終わって初めて特定のディレクトリやファイルを作成することができる。なお、初期化の方法は、ファイルシステムによって異なる。
フォーマットの種類
物理フォーマット
物理フォーマット(ローレベルフォーマット)(英: low-level format)とは、(書き込み可能な)記録媒体のデジタル信号列を、記憶装置で読み書き(認識)可能な状態に初期化する事、またその初期化された型式を言う。
書き込み可能なディスク媒体(磁気ディスク、光ディスク等)の場合、トラックやセクター等の信号列を含めてディスク全体を規定パターンで書き直す。セクター内のプリアンプル形成や、初期化データ列、誤り訂正符号の書き込みも含まれる。
フロッピーディスクやMO、初期の容量の小さいハードディスクでは、ユーザーがしばしば物理フォーマットを行う事がある。
ハードディスクの容量が増大し、トラック密度が高くなるとともに、ヘッドのシーク機構も、ステッピングモーターからサーボモーターに切り替えられた。サーボモーターでは、ディスク上での厳密なトラックの絶対位置を決めることが出来ないため、今日のハードディスクでは、ユーザーが物理フォーマットを行うことはできない。メディアへの物理フォーマットは、工場で専用の装置により行われている。
ディスク全体を上書きする事から、論理フォーマットよりも遙かに作業時間が掛かる。
論理フォーマット
物理フォーマットが成された記憶媒体上に、パーティションやファイルシステムのために必要なデータを書き込む事である。また、そのような論理フォーマットされた形式・方式を言う。フォーマットと言うと通常、論理フォーマットを指す事が多い。
多くのOSでは、ファイルシステム作成時に「クイック」と言うオプションを選べる。これは、メディアの物理フォーマット(およびパーティショニング)が完全に出来ていることを前提として、最低限必要なファイルシステムデータを書き込むことにより、フォーマットに掛かる時間を短縮できるものである。これを「クイックフォーマット」と言う。クイックフォーマットに対して、クイックでない通常フォーマットを行うと、ハードディスク上の全セクターに対してテスト読み込みもしくは書き込みを実施するため、長時間を要する。
また、記憶媒体のフォーマット時容量は、物理フォーマット後のファイルシステム等に使える容量であるが、実際にユーザがデータとして使える容量は、パーティションやファイルシステムなどの情報の容量分を除いた分である。
フォーマットとデータ消去の関係
物理フォーマット
物理フォーマットされた記憶媒体は、以前に記録されていた(場合の)データの痕跡も消去されて、通常の方法では読み出しが困難になる。磁気メディアの場合、専門的で高度な技術や高価な機材を使用して記憶媒体のアナログ的な信号を解析すれば、物理フォーマットされた記憶媒体のデータの痕跡を探る事が不可能ではないとする向きもある。そのような事を考慮して、記憶媒体の信号列を複数の特殊な規定パターンで複数回書き直すと良いとされ(DoD標準、NSA標準、NATO標準など)、そのような機能を売りにしているデータ消去ソフトウェアなども一般に市販されているが、パーソナルコンピュータでの通常の用途では、(ディスクの全データを上書きする点を除いては)殆どの場合オーバースペックである。
パーソナルコンピュータでは、フロッピーディスクの時代までは、FORMATプログラム (BASIC) や、formatコマンド(MS-DOS以降)において、物理フォーマットを選択肢により指示すると、物理フォーマットを一般的に行っていた[注釈 3]。HDDや光学ディスクなどメディアが大容量化するにつれ、物理フォーマットに要する時間が長大なものとなり、専用ツール等による一般的ではない行為となっていった。
Mac OSでは漢字Talkの頃より標準で付属のソフトウェアで物理フォーマット可能である。macOSではディスクユーティリティにて可能。ゼロフィルなどのオプションがある。また、空き領域のみのデータ消去も可能である。
Microsoft Windows2000(SP3以降)/XPでは、 cipher /w コマンドにより、NTFSのディスク空き領域に限って[注釈 4]DoD標準に基づく痕跡抹消が標準で可能である。但し、cipherコマンドをシステムドライブ(通常C:)に掛けた場合、ファイルシステムが温存されたままであるため、空き領域は痕跡消去できても、データ等の欠片の極一部が、ファイルシステムの一部分に残存する可能性もある[注釈 5]。ハードディスクの場合はなるべく、消去ツールやメーカーが頒布しているメンテナンスツールでゼロフィル(0で埋める)を掛けた方が良い。尚、メディアを物理的に破壊する行為は、殆どの場合に於いて確実且つ有効な手段である。
使用した媒体を第三者に譲渡する場合、データ消去の確実性の観点において論理フォーマットより物理フォーマットが推奨される。
論理フォーマット
論理フォーマットでは、以前に記録されていたデータがある場合には、その大部分が痕跡として残存する事がある。また、そのデータ痕跡は、通常のパソコン等で少々特殊なソフトウェアを使用すれば容易に読み出す事ができるため、プライバシーやセキュリティ上において重要な問題となる。この様な事情は、記憶媒体上のファイル等を単に削除した場合でも同様である。
コンピューター上での初期化やフォーマット機能が実際に物理フォーマットと論理フォーマットのどちらに該当するのか、確認することが重要である。またコンピューター以外のデジタル機器(AV機器等)の場合、フォーマットや消去や削除処理をした場合に実際にどのように処理されるか不明確な事が多い。そのような機器で使用した記憶媒体を譲渡・廃棄等手放す場合等で必要な場合には、ダミーのデータを撮影や録画等することにより、記憶媒体の全容量を埋めるか、さもなくば可能な場合には媒体を物理的に破壊する事が望ましい。
アプリケーションフォーマット
ここでは、主にデジタル家電でディスクメディアやメモリーカードなどを利用するために必要なデータを書き込む行為について述べる。mp3やwmaなどのコンテナフォーマットについては該当の記事を参照のこと。なおアプリケーションフォーマットはいままで述べてきたストレージ内のデータを消去する行為とは無関係である。
記録メディアにおけるアプリケーションフォーマットとは、コンピュータ以外のデジタル機器、AV機器など関連機器において扱う文書、音声、画像、動画などの情報を、特定の利用方法や関連機器上のアプリケーションで扱うための共通の形式や規格のことを言う。近年のデジタル機器では、メディアの論理フォーマットにコンピュータ由来のものを使用したり(例:メモリーカード[1][2])、またコンピュータ・ファイルフォーマット上に上位データ構造として実現するもの(例:DVD[3])が多い[注釈 6]。
また、デジタル関連機器で実際に情報を記録する容量として使えるのは、本稿で述べた3つのフォーマット分に加え、ファイルフォーマットのために必要な容量分を差し引いた物である。ただし、各レベルのフォーマットでデータ圧縮形式が用いられている場合には、実際に記録する容量と、実際に読み書き出来るデータや情報の容量は異なる。
脚注
注釈
- ^ テレビに接続するハードディスクなど
- ^ なお、近年ではフォーマット済みの状態で販売されていることも多いが、機器によっては初回の使用でストレージの初期化を求められることもある。
- ^ なお、formatコマンドのオプションに「クイックフォーマット」があるが、FDに対しては非「クイックフォーマット」で物理フォーマットとなる一方、HDDやMOに対しては、非「クイックフォーマット」でも、パーティション上の領域の一部にだけ情報を書き込む処理をするだけであり、物理フォーマット(ローレベルフォーマット)は行わない仕様である。
- ^ FAT32だと4GB以上の領域は処理されない。
- ^ システムドライブをcipherしただけでは、市販のファイル復旧ツールで、データ等の欠片の極一部を容易に復旧できる事が多い。
- ^ その他、DVD-Video、DVD-VR、BDMV、BDAV、ATRAC等がある。
出典
関連項目
外部リンク
ディスクフォーマット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 04:26 UTC 版)
CP/Mの公式な標準フォーマットはIBM System/34やIBM 3740で使われた片面単密度フォーマットの8インチディスクだった。非公式な5.25インチディスクもあり、フォーマットにはKaypro、Morrow Designs、Osborneなどの種類があった。InfoWorldは1981年9月に、ソフトウェアメーカーがサポートすべき主なフォーマットは20種類以上あると考えていると推測した。例えばJRT PascalはNorth Star、Osborne、Apple、Heathなどのフォーマットで5.25インチディスクのハードセクタ版やソフトセクタ版をリリースし、Superbrainに8インチ版をリリースした。Ellis ComputingもHeathの両フォーマットや、2つのTRS-80用CP/Mの改変版を含む16種類の5.25インチフォーマットでリリースした。 一部のフォーマットは普及したが他のフォーマットは普及しなかった。最も多くのソフトが採用したのはXerox 820フォーマットで、Kaypro IIなどの他のコンピュータも対応していた。CP/Mが利用されていた時代は5.25インチディスクのフォーマットが1社に統一されるということは無く、基本的にハードメーカーが異なればフォーマットに互換性がなかった。ソフト自体はどのマシンで動作しても、ソフトメーカーはハード毎にメディアを分けてソフトを販売しなければならなかった。Kayproなど一部のメーカーのディスクドライブは、自社の製品でも機種が変わると互換性がない事すらあった。こうした状況によりフォーマット変換プログラムが流行し、混乱を軽減させる一助になったほか、カーミットなどの通信プロトコルによりどのCP/M機にもあるシリアルポートを使ってプログラムやデータを転送することもできた。 様々なフォーマットがハードの特徴や設計者の一存により選ばれた。CP/Mはディスクの予約領域やディレクトリ領域のサイズを指定でき、CP/Mのアプリケーションから見える論理セクタとディスク上の実際の配置である物理セクタのマッピングなどを指定可能だった。各システムはこれらのパラメーターを用いて様々なカスタマイズを加えることができたが、一度設定を決めた後は、どのような設定のディスクであるのかを調べる標準的な方法がなかった。CP/Mの時代は8インチ、5.25インチ共に様々なフロッピーディスクのフォーマットが存在しており、異なるCP/Mマシンの互換性は採用したディスクドライブのタイプやコントローラーに依存した。ディスクはハードセクタ方式とソフトセクタ方式があり、単密度や倍密度、片面や両面、35トラック、40トラック、77トラック、80トラック、セクタのレイアウト、サイズ、インターリーブなどの様々な違いがあった。異なるマシン用のディスクを読むために変換プログラムを使用できたが、これもまたディスクのタイプやコントローラーに依存した。1982年頃にはソフトセクタ、片面、40トラックの5.25インチディスクがCP/Mソフトの配布用として最も普及したフォーマットとなり、Apple II、TRS-80、Osborne 1、Kaypro II、IBM PCなど当時主流だったマシンのほとんどが採用した。変換プログラムはタイプが近いディスクドライブ用のフォーマットを読むことを可能にした。例えばKaypro IIはTRS-80、Osborne、IBM PC、Epson QX-10(英語版)などのディスクを読めた。80トラックのような他のフォーマットや、ハードセクタ方式のディスクは全く読めなかった。Epson QX-10などが採用した両面ディスクは半分だけデータを読むことができた。Apple IIはAppleのGCRフォーマットだけしか読めず他社のフォーマットを読めなかったため、Appleフォーマット版のCP/Mソフトを入手するか、またはシリアルポートで転送するしかなかった。 CP/M市場によるディスクフォーマットの断片化は、複数のフォーマットに対応したディスクの在庫を抱えたり、複数のフォーマットに対応したディスクコピー装置を購入したりすることをソフトメーカーに強いた一方で、IBM PCはディスクが規格化されて統一されており、1981年以降にCP/Mが急速に市場を失う要因となった。 1985年に発売されたコモドール128は末期に発売されたCP/M機で、6502ベースのCPUを採用しながら、CP/MをサポートするためにZ80も搭載していた。CP/Mを使うには、ソフトセクタ40トラックMFM方式のディスクが読み書きできるディスクドライブの1571(英語版)か1581(英語版)が必須だった。 始めて3.5インチフロッピーを採用したSony SMC-70(英語版)ではCP/M 2.2が動作した。 コモドール128、ラップトップのBondwell-2(英語版)、Micromint/Ciarcia SB-180、MSX、TRS-80 Model 4(英語版) (Montezuma CP/M 2.2が動作)なども3.5インチディスク版のCP/Mが動作した。アムストラッドPCW(英語版)は当初3インチフロッピーでCP/Mが動作し、後に3.5インチフロッピーへ切り替えた。
※この「ディスクフォーマット」の解説は、「CP/M」の解説の一部です。
「ディスクフォーマット」を含む「CP/M」の記事については、「CP/M」の概要を参照ください。
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