スペクトル理論
スペクトル論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/10 01:11 UTC 版)
詳細は「スペクトル論」を参照 複素数体上の単位的バナッハ環は、スペクトル論を構成するための一般的な舞台となる。各元 x ∈ A のスペクトル(spectrum)σ(x) は、x − λ⋅1 が A において可逆とならないようなすべての複素スカラー λ の集合である。任意の元 x のスペクトルは、C 内の 0 を中心とする半径 || x || の閉円板に含まれる閉部分集合であり、したがってコンパクトである。さらに、各元 x のスペクトル σ(x) は空ではなく、スペクトル半径公式 sup { | λ | : λ ∈ σ ( x ) } = lim n → ∞ ‖ x n ‖ 1 / n {\displaystyle \sup\{|\lambda |:\lambda \in \sigma (x)\}=\lim _{n\to \infty }\|x^{n}\|^{1/n}} を満たす。x ∈ A が与えられたとき、正則汎関数計算(英語版)によって、σ(x) の近傍で正則な任意の関数 ƒ に対し、ƒ(x) ∈ A を定義することが出来る。さらに、スペクトル写像定理: σ ( f ( x ) ) = f ( σ ( x ) ) {\displaystyle \sigma (f(x))=f(\sigma (x))} が成り立つ。バナッハ環 A が、複素バナッハ空間 X の有界線型作用素環 L(X)(例えば、正方行列環)ならば、A におけるスペクトルの概念は、作用素論における通常の概念と一致する。コンパクトハウスドルフ空間 X 上で定義された ƒ ∈ C(X) に対して σ ( f ) = { f ( t ) : t ∈ X } {\displaystyle \sigma (f)=\{f(t):t\in X\}} が確かめられる。C*-環の正規元 x のノルムは、そのスペクトル半径と一致する。これは正規作用素に対する同様の事実の一般化である。 A を複素単位的バナッハ環で、すべての非ゼロ元 x は可逆であるとする(すなわち、可除多元環)。どの a ∈ A に対しても、a − λ⋅1 が可逆でないような λ ∈ C が存在する(これは a のスペクトルが空ではないことによる)から、a = λ⋅1 となり、この環 A は C に自然同型である。これはゲルファント=マズールの定理の複素数の場合である。
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スペクトル論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/28 08:13 UTC 版)
正規性の概念の重要性は、正規行列がスペクトル定理にはっきりとかかっている行列であるということにある。 スペクトル定理 行列 A が正規であるための必要十分条件は、それが対角行列 Λ とユニタリ行列 U により、 A = U Λ U ∗ {\displaystyle \mathbf {A} =\mathbf {U} \mathbf {\Lambda } \mathbf {U} ^{*}} なる形に書けることである。ただし、対角行列 Λ の各成分 λ は A の固有値であり、U の各列は A の固有ベクトルで与えられ、Λ の対角線上に並ぶ固有値の順番と U の列に並ぶ固有ベクトルの順番は対応する。 スペクトル定理を別な形で述べれば、正規行列は Cn の適当な正規直交基底に関して対角行列として表されるような行列である。あるいは、行列が正規となる必要十分条件は、その固有空間が Cn を生成し、かつ各固有空間はどの二つも Cn の標準内積に関して直交することである。 正規行列に対するスペクトル定理は、より一般の任意の正方行列に対する結果であるシューア分解の特別な場合と見ることができる。実は、A が正方行列ならば、シューア分解により上半三角行列 B にユニタリ相似となる。A が正規の場合には、先に述べたように正規な上半三角行列は対角行列ゆえ、B は対角行列でなければならない。 スペクトル定理により、正規行列をそのスペクトルによって分類するということができる。例えば、正規行列がユニタリであるための必要十分条件は、そのスペクトルがガウス平面上の単位円に含まれることである。あるいは、正規行列が自己随伴であるための必要十分条件は、そのスペクトルが実数直線上にあることである。 一般に二つの正規行列の和や積は必ずしも正規でないが、A および B が正規で AB = BA を満たす特別の場合には AB も A + B も正規である。さらに言えば、この二つの行列は同時対角化可能(英語版)、すなわち A と B は同じユニタリ行列 U によって UAU∗ および UBU∗ がともに対角行列となるようにすることができる。この特別の場合において、U∗ の列ベクトルは A と B に共通の固有ベクトルで Cn の正規直交基底をなすものからなる。このことは、代数閉体上で交換可能(英語版)な行列が同時三角化可能(英語版)であることと、正規行列が対角化可能なことを組み合わせれば従う。
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スペクトル論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/17 06:35 UTC 版)
「太鼓の形を聴く(英語版)」および「ディリクレ固有値」も参照 ラプラス作用素のスペクトルは、対応する固有函数 f が − Δ f = λ f {\displaystyle -\Delta f=\lambda f} を満たすようにできる固有値 −λ の全てからなる[要検証 – ノート]。上の式はヘルムホルツ方程式と呼ばれるものである。 Ω を Rn の有界領域とすれば、ラプラス作用素の固有函数全体はヒルベルト空間 L2(Ω) の正規直交基底を成す。この結果は本質的にはコンパクト自己随伴作用素に関するスペクトル定理をラプラス作用素の逆作用素(これはポワンカレ不等式およびコンドラコフ埋蔵定理(英語版)によってコンパクト)に適用することにより従う。固有函数が無限回微分可能函数であることも示せる。この結果はより一般に、任意の境界付きコンパクトリーマン多様体上のラプラス=ベルトラム作用素について成り立ち、また実際に有界領域上滑らかな係数を持つ任意の楕円型作用素に対するディリクレ固有値問題についても正しい。Ω が超球面であるときの、ラプラス作用素の固有函数は球面調和函数と呼ばれる。
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