作用素論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/16 13:53 UTC 版)
数学における作用素論(さようそろん、英: Operator theory)は、微分作用素や積分作用素をはじめとする線型作用素の研究である。各作用素は、有界性や閉性などといった特徴によって抽象的に表すことができ、また非線型作用素なども視野に含むこともあり得る。そのような研究は函数空間の位相に非常に依存しており、函数解析学の一分科を成す。
作用素の集合が体上の多元環を成すならば、それを作用素環と呼ぶ。作用素環を記述することもまた作用素論の一部である。
個別の作用素論
個々の作用素論では、個別に与えられた作用素の性質や分類について扱う。例えば、スペクトルを用いた正規作用素の分類はこの範疇に属する。
作用素のスペクトル
スペクトル定理は線型作用素や行列に関する無数の結果の総称である[1]。広義のスペクトル定理は、作用素や行列が対角化可能である(即ち適当な基底の下で対角行列に表せること)ための条件を提示するものをいう。この対角化可能の概念は直接には有限次元空間に対するものだが、無限次元空間上の作用素に対しては少々の修正を要する。一般に、スペクトル定理はもっとも単純な場合として乗算作用素によって形作ることのできる線型作用素のクラスを同定するものである。より抽象的には、スペクトル定理は可換 C∗-環に関する主張ということができる。歴史的背景はスペクトル論の項を参照。
スペクトル定理が適用できるような作用素の例としては、自己随伴作用素やより一般にヒルベルト空間上の正規作用素などが挙げられる。
スペクトル定理はまた、作用素の作用する台となるベクトル空間に関する(スペクトル分解、固有分解(固有値分解)などと呼ばれる)標準分解 (canonical decomposition) をも提示する。
正規作用素
複素ヒルベルト空間 H 上の正規作用素は、連続線型作用素 N: H → H であって自身のエルミート共軛 N∗ と可換 (NN∗ = N∗N) となるものである[2]。
正規作用素はそれに対するスペクトル定理が成り立つという点で重要である。今日では正規作用素のクラスはよく理解されている。正規作用素の例には
などが挙げられる。また、正規行列は Cn を有限次元ヒルベルト空間とみるときの正規作用素のことと考えることができる。
スペクトル定理は行列のより一般のクラスに拡張できる。A は有限次元内積空間上の作用素とする。A が正規行列であるとは、A∗A = AA∗ を満たすことを言う。A が正規であるための必要十分条件が「それがユニタリ行列で対角化可能であること」であることを示すことができる。実際、シューア分解により A = UTU∗(U はユニタリ、T は上三角)と書くと、A は正規ゆえ TT∗ = T∗T となり、T は対角行列でなければならない(正規な上三角行列は対角行列である)。逆は明らか。
即ち、A が正規であるための必要十分条件は、ユニタリ行列 U と対角行列 D で
作用素論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/01/23 12:28 UTC 版)
特にベクトル空間のような任意の具象圏(英語版)において、自己準同型はある集合からそれ自身への写像であり、その集合上の単項演算子として解釈されることもある。それは元に対して作用し、元の軌道の概念の定義を許すものである。 手近な圏に対して定義される追加構造(トポロジー、距離など)に依存して、そのような作用素は連続性や有界性などの性質を持つこともある。その点に関する詳細は作用素論に関係する記事を参照されたい。
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