コモディティ化の例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 18:23 UTC 版)
「コモディティ化」の記事における「コモディティ化の例」の解説
コモディティ化が進んでいる製品群は、視点を変えれば消費者にとっては日常生活に不可欠な日用品となっている製品とみなすことが可能である。これらの商品はなくては困るし、どこのメーカーの製品でも基本的機能をきちんと満たすことが要求される反面、基本的な機能のみを求める限りにおいては均質化が進んでおり、製造元や販社については細かく比較する必要がない面がある。さらに、主にローエンド帯の製品では、同一のEMSから多数のメーカー・販社・小売業者にOEM供給がなされていることもあり、たとえば、大手電機メーカーA社や後発ファブレスメーカーB社の製品、チェーン店C社や量販店D社が販売するPB製品という、複数社で異なる型番が付けられている製品を比較しても、外見やケースに付けられたメーカーロゴは異なってもモジュールや部品の構成が同じで性能も同一であったり、実際にはEMS側の社内では販売先毎に枝番が違う程度の事実上同一の型番で扱われ、モジュール構成どころか組立作業自体も全く同一というケースもあり、性能面を比較する意味がないなどということもある。 生活の必需品という意味では、白物家電(生活家電)が先進国では標準的に普及しているが、これらで例えるならば、掃除機であれば「軽量で細かいごみを強力に吸引して内部に蓄え捨てやすくする機能」、冷蔵庫であれば「中の食品が腐らないようじゅうぶんに冷やす機能」など、日々の使用における使い勝手のよさは求められるが、あとは消費電力(省エネルギー)・容量・操作性・デザイン・付加機能などの細かい選択基準があるのみで、基本的な性能や機能は大手・中小の電機メーカー、プライベートブランドの各製品を比較しても大きな差異はなく、消費者はどのメーカーの製品を選んでもほぼ同等の基本的機能を有する製品を手にすることができる。また新製品と従来製品の差が基本的な機能の部分ではほとんど発生せず、壊れるかよほどの陳腐化でもしない限り新製品に対する買い替えの必要性が乏しいといった面もある。 しかし白物家電の大半がコモディティ化した結果、メーカーにとってうまみの薄い製品になっていることに違いはなく、多種多様な製品を広範に取り扱っている大手メーカーにとってもこれらが経営の足を引っ張っている傾向が強い。ただ消費者には日常生活に必須のアイテムとして同製品カテゴリの製品の需要と、顧客が求めるブランド力が確実に存在するため、安易に切り捨ててしまうわけにも行かないし、単価の低下による利益の減少があったとしても、販売網やアフターケア窓口などの規模を安易に縮小することもできない。このためメーカーでは、これらコモディティ化の著しい製品群は生産拠点やサポートデスクを人件費や家賃が安い地方や海外に移転したり外注に委託することでコストダウンを図ったり、あるいはOEMを取り入れて自社生産拠点への注力を回避するなどの対策を図り利益を確保する必要がある。他の多くのコモディティ化が著しい分野でも、おおむね似たような事情や動向が見え隠れしている。また、後発の専業メーカーにとっては、主力商品のカテゴリーがコモディティ化しうまみが薄れてゆく、つまり主力製品の1個あたりの単価が低下したり利益額や利幅が減少してくることは経営戦略の根幹にも関わってくる。 ただし、こういった市場の方向性においてもコモディティ化の流れから抜け出す手法を模索する企業は多く、たとえばデザイン家電のように意匠性に特化したり、あるいは多機能化やインターフェースの先進性で優位性を獲得、さらにはそれら複合化された付加価値によって新しい利用方法が創出され、従来の単機能製品が持ち合わせていなかった強力な製品価値をも創造するケースが見いだされる。もっとも、このような手法を自在に取れるのは総合的な開発力や製品企画能力に優れる大手・老舗メーカーにほぼ限られ、いっぽうでコモディティ化戦略によるシェア確保を目指すファブレス・ファブライトや、モジュール組立に特化したメーカーでは、外部のモジュールメーカーの開発進展具合や供給状況にも左右されやすく、概して最新の機能やパーツによる新しい時流が起きた時に即座の最新機能搭載製品投入と確実な大量安定供給という手段では追随しきれず、結局は新基軸をセールスポイントにする電機メーカーの製品を横目に従来型製品の低価格勝負の薄利多売路線の強化によって走り続けざるをえないのが実際ではある。 この「うまみが薄い」という面は販売でも同様で、家電量販店における白物家電には「一定の需要はあるが売れ筋商品のように短期間で大量に売れない」「売り場の占有スペースが大きい」という一面があり、宣伝にも販売にも余り人員やコストを割いていなかったり、売り場の位置が店内の客の回遊経路から外れた奥まった場所にあるなど、娯楽家電など他分野よりは積極性が感じられない様子が見られる。1990年代に隆盛したパソコンショップのように、一時期のブームに乗じて全国にチェーン店や中小店舗が乱立したが、主力商品であるパソコンやその関連商品の販売価格が低下し、事実上の白物家電化を遂げてゆく内に業態自体が衰微してしまい、淘汰や統合を経て現在では専門店として一握りのチェーンの店舗が残るのみといったケースも見られる。
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