コモディティ化の進行と新規参入
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 18:23 UTC 版)
「コモディティ化」の記事における「コモディティ化の進行と新規参入」の解説
古くはテレビ・冷蔵庫・洗濯機などの『三種の神器』とたとえられた製品群や、1980年代以降で言えばパーソナルコンピュータやその周辺機器は、市場に出始めた時点においては新しく先進的な分野の製品であった。しかし、いずれも販売価格の下落とともに幅広く一般家庭に普及し、やがて白物家電として一般化したり、白物家電同然の日常の必需品という立場に落ち着いていった。日常生活に必要なさまざまな製品や道具において、このような変遷をたどったものは数多い。また、それらの多くではモジュール組立方式の導入を用いた製造工程の簡略化、低価格化、そしてコモディティ化が起きている。 コモディティ化の傾向が見え始めると、それと並行して、従来は大手企業や老舗企業の製品がシェアを寡占してきた市場に、新興勢力が価格競争力をもって参入しやすくなる環境が作り出される場合がある。ここで言う「新興勢力」とは主に中小企業や後発企業・国外メーカーなどで、さらには自社では製品の製造設備・開発機能を実質的に持たないファブレスの企業やプライベートブランド・ショップブランドもその範疇に含まれる。これら新興勢力が、先行する主力メーカーが「スタンダードモデル」などと称するローエンドの廉価な製品と機能的にほぼ同等の製品を、より割安な低価格で次々と市場に投入してくることも見られ、やはりこの場合においても、消費者のなかにはメーカーのブランド力よりも低価格や当座の在庫の有無をより重要な判断材料として購入商品を選ぶ傾向を取る者が出てくる。 こういったコモディティ化の進行に伴う新興勢力の市場参入に関しては、日本では2000年代中頃よりデジタル家電の分野が著しい。この分野では、従来先行していた大手家電メーカーの製品とほぼ同等の基本的機能が、モジュール化によって後発メーカーの製品でも比較的容易に実現させることが可能になった結果、国内外数多くの新興勢力の市場参入に繋がり、これらが投入してきたより低価格な製品はコモディティ化のさらなる進展をうながすことになった。 ただそのいっぽうで、消費者にとってはこれら低価格帯の製品を主力とする新興勢力側のメーカーと、先行する主力メーカーを比較した場合、企業の持つ知名度や競争力、さらには企業全体の経営体力や規模・ノウハウの蓄積にともなうアフターケアの充実具合の差などが、単純な製品の価格差に見合わない場合もある。もっとも、消費者にとっては、コモディティ化の進んだ製品の基礎技術は十分に"枯れた"技術であることが多いため頻繁には故障が起こりにくく、アフターケア窓口を利用する機会が少ない、しかし、低価格の魅力に釣られて新興勢力側のメーカーの製品を購入してそれが故障した結果、主力メーカーに比べれば脆弱なアフターケアや修理体制などに直面し、「安物買いの銭失い」という諺が端的に表すような状況におちいる可能性も否定しきれない、などといった要素を商品選択にあたって考慮しなければならず、頭を悩まされるところでもある。 このため、消費者が商品を購入するにあたって、単純な製品の比較検討のみならず、メーカーそのものに対する安心感・信頼性・堅実感なども考慮に入れた上で複数メーカーの製品を比較検討することはよく見られ、結果として多くの消費者が若干割高であることは承知の上で業界の主力や老舗であるメーカーの製品を選択することもさして珍しいものではない。他方では実際に廉価な製品を販売している中小ないし後発・国外メーカーのアフターケアやユーザーサポートの質的不足に不満を抱くケースや、過去には低価格製品を販売していた後発メーカーが経営破綻したり国外メーカーが唐突に日本法人を解散して撤退してしまうなどの事態も発生しており、この様な形でアフターケア体制が崩壊してしまったメーカーの製品や、さらに言えばアフターケア体制の消滅によってメーカー修理が不可能になってしまった故障品などをめぐって、消費者のみならず製品を販売した店舗側をも巻き込みつつ混乱したケースも見出せる。
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