津軽海峡及び周辺地域のムダマハギ型漁船コレクション
名称: | 津軽海峡及び周辺地域のムダマハギ型漁船コレクション |
ふりがな: | つがるかいきょうおよびしゅうへんちいきのむだまはぎがたぎょせんこれくしょん |
種別: | 交通・運輸・通信に用いられるもの |
員数: | 67隻 |
指定年月日: | 1997.12.15(平成9.12.15) |
所有者: | 財団法人みちのく北方漁船博物館財団 |
所有者住所: | 青森県青森市 |
管理団体名: | |
備考: | |
解説文: | 津軽海峡を中心に秋田県の北部、岩手県の北部から北海道一円にかけての地域には、かつては、ムダマハギと呼ばれる形式の木造漁船が広く分布し、漁船の名称・構造・使用方法などに多くの共通点がみられた。この地域にはその数は少なくなったものの、現在も各地にムダマハギ型漁船やその痕跡を残す木造漁船が使用されている。ムダマハギとは、船底にカツラやブナ・ヒバ・スギなどの刳り抜き材を使用し、平底の船底にタナイタ(カイグともいわれる)をつけ、アバラと呼ぶ補強材をつけた独特の構造をもつものである。この形式は、オモキ造りと呼ばれた造船技術に連なるもので、秋田県下では能代市付近を境に南にはオモキ造り、北にはムダマハギ造りの漁船が分布している。また、北海道一帯にかつては広く分布していたムダマハギ型漁船は、ニシン漁の関係で北に広がっていったものであるが、津軽海峡に面した渡島半島南部地域を除いてその消滅が進んでおり、現在では礼文島・利尻島を除くその他の地域にはほとんどみられなくなっている。 本コレクションは、みちのく銀行が合併二〇周年を記念して建設を計画している木造漁船博物館(仮称)の資料として収集した、この地方の木造漁船など一一〇隻余のコレクションのなかから、ムダマハギ技法による漁船とその先行形態である丸木舟、およびムダマハギ型漁船を継承し、船形等にその影響を色濃く残す、四枚接ぎと呼ばれる構造船を選んでとりまとめたものである。 この地域のムダマハギ型漁船は、主にアワビやウニの採取、昆布やワカメなど海藻類の採取、カレイなどを対象とする刺し網や釣り漁などの、この地方で磯廻【いそまわ】り漁と呼ばれる漁撈に用いられてきた。 この地域のムダマハギ型漁船に共通してみられることは、 ○ムダマ・タナイタ・アバラを基本的構造とすること ○操船のためにクルマガイを用いること ○ムダマの材料は、カツラ材を最良とするが数が少なく、ブナは重く腐りやすい欠点が指摘されるものの入手しやすいために広く使用されており、ほかにクリ・トチ・スギ・ヒバなどが用いられていること ○ムダマは昔は一枚ものを基本にしたと考えられるが、材料の制約から二、三の部材を接ぎ合わせることが多く、その方法には「チョウアワセ」という二枚の材料を合わせる方式、チョウアワセの中にさらに一枚加えて三枚とする「ナカチョウ」の方式、船底の両端の角の立ち上がりの部分に補助材を接合する「コスギ・ツケギ」の方式などがみられること ○ムダマの接ぎ合わせには、古くは、接着剤として漆が用いられること ○ムダマの継ぎ合わせ技法としては、古くは接合部に彫り込みをいれ、ここに「タタラ」という板を差し込んで接ぎ目から割れるのを防ぎ、「リュウゴ」と呼ぶ鼓型【つづみがた】の楔【くさび】(チキリとも呼ばれるもの)で材が離れないように固定する方法が用いられたこと ○ムダマとタナイタの接合は縫い釘によって行うこと などがあげられる。なお、ムダマの接ぎ合わせにタタラとリュウゴを併用する方法は、現在では秋田県地方には残るものの、青森県下では早くから鉄釘の普及が進み、鉄の「落し釘」と「鉄鎹【てつかすがい】」の併用ないしは「落し釘」のみで接合する方法に変化している。 こうした操船の方法や構造上の共通性を念頭において、さらに細部の構造や外形上の特色に着目すると、今回の収集地域は概ね以下の四つの地域に分けることができる。 秋田県北部・青森県西海岸地方 この地方のマルキと呼ばれる船は、ムダマの接合にタタラとリュウゴを使用し、舳先が幅広に作られており、丸木舟の形態を色濃く残している。舳先の尖った形態のムダマハギ型の漁船はマルキが変化したもので、ホッツと呼ばれており、ホッツにはさらに四枚接ぎの技法で作られたものがある。この地域のムダマはスギが用いられるのが特徴である。青森県側では、早い時期にムダマから四枚接ぎの技法を取り入れたイソブネに変化したが、技法的には四枚接ぎに属するもののシキとシタダナは平底に接合されており、シキの部分にムダマハギの名残となる彫り込みを残し、これをムダマとも呼んでいることから、完全な四枚接ぎの構造船に移行する過渡的段階の船形といえる。また、この地方で使用される推進具は、クルマガイとともに、櫓・サッカイ・ネリガイも併用している点に特徴がある。 |
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