『フランケンシュタイン対地底怪獣』のバラゴン
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「バラゴン」の記事における「『フランケンシュタイン対地底怪獣』のバラゴン」の解説
地下に潜んでいた中生代の大爬虫類が怪獣化したもの。普段は4足歩行で行動するが、戦闘時にはクマのように立ち上がる。地中からの敏捷な奇襲で、フランケンシュタインを翻弄する。左右の耳はフランケンシュタインと組み合った際には前方に閉じ、頭部を保護している。また、耳を伏せたり立てたりすることで相手を威嚇する。口から吐く赤い熱核光線は、地底へ潜る際に用いて前肢での岩盤掘削をしやすくする描写もある。 秋田の海底油田の地下から出現して日光白根山付近のロッジを襲撃し、逃げる人間や家畜をすべて食害するという獰猛性を見せる。フランケンシュタインと富士樹海で交戦し、首の骨を折られて死亡する。 オリジナル公開版では、フランケンシュタインはバラゴンが地中を移動する際に掘削で生じた空洞によって起きた地盤沈下のため、その陥没に巻き込まれて生き埋めになり、絶命する。 スーツアクターは中島春雄。従来の怪獣よりも動物的な動きとなっており、中島はトカゲなどのように肩を交互に前へ出して歩くことを意識したという。土中から出現するシーンでは、中島が入った状態のスーツを土に埋めており、エアホースで空気を送っていた。 『フランケンシュタイン対地底怪獣』公開当時の宣材では「もぐらの親玉」とも称されており、これは後年にプレミアム バンダイからソフビ人形化された際にも用いられている。予告編においては「地底の暴王」と評された。 木村武によって執筆された『フランケンシュタイン対ゴジラ』と題した検討用台本では、ラストシーン以外のストーリーはそのままに、ゴジラがバラゴンの役割として登場する予定だった。 従来の怪獣では示唆されるに留まっていた食人描写が明確に描かれた。 劇場公開の前年に開業した東海道新幹線の「ひかり号」が劇中にも登場しており、バラゴンがこれを襲うイメージ写真も作られたが、こちらは劇中で描かれなかった。 口から吐く赤い熱線は作画合成で処理された。スチル写真では口から稲妻状の光線を吐いていた。 造形 デザインは渡辺明、頭部造形は利光貞三、胴体は八木勘寿、八木康栄、背びれは村瀬継蔵による。 アメリカ側からの「ポストゴジラ」というオファーを受け、デザインされた。海外輸出を意識して、唐獅子をイメージしたとされる。 着ぐるみは従来の怪獣のものより軽量化され、吊りのシーンでも少人数で引っ張り上げることが可能であった。尻尾でジャンプする場面などは、スーツを吊り上げて撮影している。「抜け殻状態のバラゴンのぬいぐるみを、人間形態のフランケンシュタインが担ぎ上げて振り回す」といったアクションスタイルは、翌年に円谷が手掛けたテレビ映画『ウルトラマン』(円谷特技プロダクション、TBS)で、主役ヒーロー「ウルトラマン」と怪獣の格闘の基礎パターンとなった。 額の一本角は村瀬によるポリ樹脂製で、内部に仕込まれた電飾が発光する。リモコンで口が開閉するほか、塩化ビニール板のカバーで覆った眼球が中で左右に動く。この眼球の黒目を黄色い縁取りで囲み、中心に黄色い点が描き込まれているが、これは同年制作の『怪獣大戦争』(1965年、本多猪四郎監督)のゴジラと同じ技法である。当初、耳は金網製であったが、折れやすいことから厚手の布で作り直された。口腔内は造形されていない。 人間が演じている都合上、四足歩行中は腰が高くなってしまうため、腰元を木で隠すなどの工夫がなされた。 崖から落ちるシーンに使用された人形は、後にデパートでの展示を経て、『怪獣総進撃』で富士山の裾野のシーンに使用された。 着ぐるみの流用 本作品での着ぐるみは、映画撮影後に円谷プロに貸し出された。 高山良策によって頭部をすげ替えられ、胴体を傷つけないように布で覆ったうえでラテックスが塗られ、『ウルトラQ』のパゴスに改造された。 『ウルトラマン』では、佐々木明によって塗装が変更された後、新造形の頭部が取り付けられてネロンガに改造され、頭部を付け替えて黒い表皮で全身を覆ってからスポンジ製の棘を追加したマグラーへの改造を経てこの表皮と棘を取り去り、頭部を付け替えて襟巻きを着けてガボラに改造された。さらには再びネロンガに改造され、全国のアトラクション巡業に使われている。パゴス、ネロンガ、ガボラはバラゴンと同じく中島春雄がスーツアクターを務めた。 1968年、『怪獣総進撃』が製作される際には東宝へ返却され、再びバラゴンとして復元された。高山が胴体を布で覆っていたことが幸いし、酷使されたにもかかわらず胴体部の劣化は少なく済んでいる。 この着ぐるみは、1972年に講談社より発行された写真絵本『大怪獣ゴジラブック』の特写用に登場している。1988年に同社より発行された書籍『特撮ヒーロー大全集』ではこのバラゴンを「パゴスなどに改造されたのは別のもう一体」と解説しているが、村瀬は着ぐるみが複数存在したという説を否定している。 テレビ番組『ウルトラ怪獣大百科』では、バラゴンを含め、パゴス、ネロンガ、マグラー、ガボラを「これらの怪獣になんらかの関連性があるのではないか」という説を提唱している。 鳴き声 ネロンガは着ぐるみと同じく、鳴き声もバラゴンのものを使用している。
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