『フランス詩小論』とは? わかりやすく解説

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『フランス詩小論』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 16:50 UTC 版)

テオドール・ド・バンヴィル」の記事における「『フランス詩小論』」の解説

そして彼の詩論実作の形ではなく、はっきりと示されたのは1872年の『フランス詩小論』である。この作品二つ側面で重要である。第一は、これがロマン主義から1857年世代高踏派経て象徴主義まで至る詩法流れ記述していることであり、そして第二は、その詩法の持つ意味についての思考展開されていることである。 まずバンヴィルは、詩の必要条件として、それが歌われるのであることを強調している。歌うことのみによって、人は普段失われている神性超自然取り戻すことができるのだ。これがバンヴィル定め叙情性の定義といえる。そして「歌」としてもっともふさわしい、叙情そのものである詩形オード称揚される。ここでバンヴィルオードの定義を拡大し、ほかのあらゆる下位ジャンルオード内包していると書いている。つまり、詩と名づけられるものは全て抒情詩ということになる。このジャンル観は、アリストテレス叙事的叙情的劇的三区分とは全くことなったものであり、これはヴィクトル・ユゴーの『クロムウェル』の序文意識されている。そこでユゴー喜劇悲劇要素共存するドラマ」という形を称揚していたが、バンヴィル場合そのような要素混交称揚するではなく、「叙情」のキーワードのもと、全ての要素統合されるのであり、古典的ジャンル区分一種否定ともいえる。 具体的な詩法面では、奇数脚も偶数同様に可能であると1音節から13音節までの韻律の例を引き、古典主義以来多く用いられてきた12音節8音節詩句以外の韻律存在強調したまた、12音節詩句10音節詩句における「句切り」について、その位置はどこにおかれてもよいと主張した。ここでバンヴィル詩句韻律属する「句切り」césureと、文章リズム生じ区切り混同しているが、一方で、この主張韻律構造文章構造一致という古典主義傾向を完全に脱した証と見ることもできる他所で彼は詩句韻律文章リズム別の次元にあるもので、無理に一致させるべきものではないと述べている。実際バンヴィル詩句には、詩句句切り文章一致しない結果起こる「句跨ぎ」enjambementがしばしば見られる第2章第5章)。 続いてバンヴィル論じるのは「脚韻」である。彼はこれを詩句ひいては詩の必要条件とすら言い切る。それは一見詩作品単なる「題韻詩」Bout-Rimé(あらかじめ決められ脚韻語から出発して詩を作ること)に貶めるように理解されるが、ラシーヌユゴーの例をひいたバンヴィル自身説明を見ると、脚韻はそれ自身響きのみによって効果もたらすではなく詩句他の語意味的音声的に影響しあって効果をなすのであって他の語存在もまた構成要素として必須であり、彼が脚韻のみに詩を還元しているわけではないことがわかる。そして、位置的、音声的にもっとも目立つ脚韻位置詩句のキーワードをおくことで、その語をより印象付けるのである。ここで脚韻は、単に韻文形式構成する要素だけではなく詩句表現力高めるものとしてあった。前世紀においては規則則って用いるものだった韻律脚韻は、19世紀になって詩人たちが自身表現のために用いる「道具となったのである第3章第4章)。 19世紀における16世紀定型詩再発見反映しバンヴィルロンドーロンデル、トリオレ、バラッド、シャン・ロワイヤルといった16世紀定型詩説明多くページ割いている。これらの詩形用いることは、単なる復古趣味ではなく古典主義対す一つ定立であったことは忘れてならない。 しかし、『フランス詩小論』は本来学生向けの教科書であり、バンヴィル詩論十全表現されているわけではない。その多くは、未だ研究の対象となっていない彼の散文作品や、未刊のままとなっている新聞記事批評など現れている。これらの記事については、2003年に二冊本の選集Championから出版されているが、全体からするとごく一部にすぎず、バンヴィル時評校訂版出版待たれる

※この「『フランス詩小論』」の解説は、「テオドール・ド・バンヴィル」の解説の一部です。
「『フランス詩小論』」を含む「テオドール・ド・バンヴィル」の記事については、「テオドール・ド・バンヴィル」の概要を参照ください。

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