電子楽器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/17 16:42 UTC 版)
電子楽器(でんしがっき、英: electronic instrument)とは、真空管やトランジスタの電気発振をもとに音をつくる楽器の総称[1]。音源に機械的な振動部分を持たず、電子回路による発振音を用いる楽器[2]。
概要
電子回路で音をつくる楽器であり、電子回路で音の波形を作り出し、音の3要素である音程・音量・音色を制御することができる。
一般に、電子楽器にはエレキギターやエレキベースなど従来の楽器と同じ原理で生じる振動(物体的な振動)を電気的に処理する楽器は含まない[1]。
電子楽器が音色を得る方式としては周期パルス列をフィルタリングすることで音色を得る減算方式、オルガンのように正弦波により倍音を合成する加算方式、FM音源などに代表される変調方式、録音した波形などをメモリに蓄えておき音程ごと再生するPCM音源など幾つかの方式がある。
PCM音源の登場で、ありとあらゆる音が楽器に出来るようになった。PCM音源における電子的なメモリの増加は、飛躍的に音色の質を向上させ、多種多様な音色の作成を可能にした。
歴史
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- 前史 電気楽器(電子楽器以前)
1748年のプロコプ・ディヴィシュによる電磁石を使用したデニスドールの発明を端緒として[3]、1759年にはClavecin Électrique[4]、1785年にClavecin Magnetique[5]、1867年にElectromechanical Piano[6]、1876年にMusical Telegraphが発明された[7]。
ここあたりまでは通常、電気楽器として扱われる。
- 電子楽器の始まり
下では電気楽器でもあり電子楽器でもあるような曖昧なもの、黎明期の電子楽器も含めて解説してゆく。
1897年に発明されたテルハーモニウム(Telharmonium)[8]は、基本は電気楽器ではあるが、電子楽器を予示する性質を備えている。『日本大百科全書』では「世界最初の電子楽器」としており、音を電気的に得ることに関する多くの問題を解決し、「今日の電子楽器の基本的要素はほぼすべて盛り込んだ画期的なものであった」としている[1]、が、総重量200トンという巨大なもので、商業的には失敗した[1]。
1899年にはSinging Arcが発明された[9]。
1915年にリー・ド・フォレストはアメリカ合衆国特許第 1,543,990号を出願した。これはテルミン(テレミン)よりも数年早いものであり、「世界初の電子楽器」とされる[10][11]。
1920年(あるいは1919年)にはソ連の音響物理学者レフ・テルミン(レフ・テレミン)によって電子楽器として有名なテルミン(テレミン)が発明され、アメリカに紹介され、数人の音楽家がこれのために作曲するなど、一定の成功をおさめた[1]。
その他の電子楽器の発明も紹介すると、1916年にOptophonic Piano[12]、1918年にSynthetic Tone[13]、1921年にElectrophon[14]、Hugoniot Organ[15]、1923年にStaccatone[16]、1924年にSphäraphon[17]、1925年にRadio Harmonium[18]、1926年にPianorad[19]、Keyboard Electric Harmonium[20]、Kurbelsphärophon[21]、1927年にDynaphone[22]、Cellulophone[23]、Clavier à Lampes[24]、Electronde[25]、Robb Wave Organ[26]、Superpiano[27]、Neo Violena[28]が発明された。
1928年にはフランス人のモーリス・マルトノによってオンド・マルトノが発明され[29]、これはチェンバロに似ていて5オクターブの鍵盤があり、鍵盤の手前にはグリッサンド用のリボンがある楽器で、テルミンより成功をおさめ、この楽器のために作曲した作曲家は多く、有名なところではオネゲル、メシアン、ジョリベなどがいる[1]。
同1928年にKlaviatursphäraphon[30]、1929年にOrgue des Ondes[31]、Croix Sonore[32]、Hellertion & Heliophon[33]が発明された。
そして1930年代にはドイツのフリードリヒ・トラウトバイン(de:Friedrich Trautwein)がトラウトニウム(en:Trautonium)を発明し、これは成功し、1950年代までこの楽器を用いた曲が作曲され続けた[1]。
[いつ?]電子オルガンが発明され、[いつ?]アナログシンセサイザーが発明され、[いつ?]デジタルシンセサイザーが開発された。
シンセサイザーは1990年代までは音源として専用のカスタムICを使用したハードウェア・シンセサイザーが主流だったが、2000年代後半からはPCの性能向上によりソフトウェア・シンセサイザーが主流になっていった。
種類、分類
- 電子オルガン
- 電子ピアノ
- シンセサイザー
- アナログシンセサイザー(単にメーカーの違いではなく、独特のキャラクタを持つ)
- デジタルシンセサイザー
- ミュージックワークステーション
- シンセベース
- ギターシンセサイザー
- ウインドシンセサイザー(ブレス・コントローラ)
- サンプラー
- ドラムマシン
- ミュージックシーケンサー
- テルミン
- オンド・マルトノ
- キーボード(鍵盤)
- 音源モジュール(トーン・ジェネレータ)
- ボーカロイド(YAMAHA)
- ケロミン(有限会社トゥロッシュ)
電子楽器のメーカー
- AKAI professional
- イーミュ(E-mu )
- 河合楽器製作所
- コルグ
- カーツウェル(Kurzweil )
- オーバーハイム
- ローランド
- ヤマハ
- カシオ計算機
- 有限会社トゥロッシュ ケロミンのメーカー
関連項目
脚注
出典
- ^ a b c d e f g 『日本大百科全書』【電子楽器】
- ^ 『デジタル大辞泉』【電子楽器】
- ^ The Denis D’Or “Golden Dionysis”, Václav Prokop Diviš. Czech republic, 1748
- ^ “‘Clavecin Électrique’ . Jean-Baptiste Delaborde, France. 1759.”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Clavecin Magnetique’. M. l’Abbé Bertholon. France, 1785”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “‘Electromechanical Piano’ Matthias Hipp, Switzerland,1867”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Musical Telegraph’ or ‘Electro-Harmonic Telegraph’, Elisha Gray. USA, 1874”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Telharmonium’ or ‘Dynamophone’ Thaddeus Cahill, USA 1897”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Singing Arc’ William Duddell, UK, 1899”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ Nutube開発者はなぜ真空管造りに蛍光表示管を選んだのか
- ^ The ‘Audion Piano’ and Audio Oscillator. Lee De Forest. USA, 1915
- ^ “The ‘Optophonic Piano’, Vladimir Rossiné, Russia and France. 1916”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Synthetic Tone’ Sewall Cabot, USA, 1918”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The Electrophon (1921), Sphäraphon(1924), kurbelsphärophon (1926), Klaviatursphäraphon(1928), Partiturophon (1930) and Kaleidophon(1939). Jörg Mager, Germany.”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Hugoniot Organ’. Charles-Emile Hugoniot . France, 1921.”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Staccatone’. Hugo Gernsback & C.J.Fitch. USA, 1923”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The Electrophon (1921), Sphäraphon(1924), kurbelsphärophon (1926), Klaviatursphäraphon(1928), Partiturophon (1930) and Kaleidophon(1939). Jörg Mager, Germany.”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Radio Harmonium’ Sergeĭ Nikolaevich Rzhevkin, Russia, 1925”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Pianorad’, Hugo Gernsback, USA, 1926”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The Keyboard Electric Harmonium . Lev Sergeyevich Termen, USA/Russia, 1926”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The Electrophon (1921), Sphäraphon(1924), kurbelsphärophon (1926), Klaviatursphäraphon(1928), Partiturophon (1930) and Kaleidophon(1939). Jörg Mager, Germany.”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Dynaphone’, René Bertrand, France, 1927”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Cellule Photo Electrique’ or ‘Cellulophone’. Pierre Toulon & Krugg Bass, France, 1927.”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “the ‘Clavier à Lampes’ or ‘Piano Radio Èlectrique’ Joseph Armand Marie Givelet, France. 1927”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Electronde’ Martin Taubman, Germany, 1927”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Wave Organ’. Frank Morse Robb. Canada. 1927”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Superpiano’ and ‘Symphonium’. Emerich Spielmann, Austria, 1928”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Neo Violena’ Vladimir A Gurov, V.I. Volynkin & Lucien M. Varvich. Russia 1927”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Ondes-Martenot’ Maurice Martenot, France, 1928”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The Electrophon (1921), Sphäraphon(1924), kurbelsphärophon (1926), Klaviatursphäraphon(1928), Partiturophon (1930) and Kaleidophon(1939). Jörg Mager, Germany.”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Orgue des Ondes’ Armand Givelet & Edouard Eloi Coupleux, France. 1929”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “‘La Croix Sonore’ Nicolai Obukhov. Russia – France, 1929-1934”. 2017年4月9日閲覧。
- ^ “The ‘Hellertion’ and The ‘Heliophon’. Bruno Hellberger & Peter Lertes, Germany, 1929-1936”. 2017年4月9日閲覧。
電子楽器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/23 00:59 UTC 版)
管弦楽において電子楽器・電気楽器が使用されることも近代以降では多い。 主にフランスの作曲家がオンド・マルトノを好んでオーケストラ内で用いた。オネゲルの『火刑台上のジャンヌ・ダルク』やケクランの『燃ゆる茂み』などがその初期の試みとして挙げられる。メシアンは『神の現存のための3つの小典礼楽』をはじめ、代表作『トゥランガリーラ交響曲』ではピアノと並んでソリストとして、そしてオペラ『アッシジの聖フランチェスコ』においては3台のオンド・マルトノを使用している。 エレキギターやエレキベースは主に、映画音楽などの劇伴音楽やポピュラー音楽などにおいて、オーケストラあるいは吹奏楽の中で使われるが、例えばラッヘンマンのオペラ『マッチ売りの少女』などのような作品の中でも用いられている。 オーケストラの生演奏に合わせて、録音された音源を同時に演奏することも行われる。その最初期の例としては、レスピーギの交響詩『ローマの松』において、ナイチンゲールの鳴き声を用いたことが挙げられる。現代においては、例えばラウタヴァーラの「鳥とオーケストラのための協奏曲『北極詩篇(極北の歌)』」で、全編において鳥の声の録音テープがオーケストラの演奏と同時に再生される。 シュトックハウゼンが多用したように、オーケストラ全体の音色をマイクで入力し、リングモジュレーターなど初期のシンセサイザーで変調・加工してスピーカーから出力し、オーケストラと共に用いることもある。 電子音響技術とオーケストラが密接に結びついた例として、IRCAMの研究が挙げられる。演奏行為と密接に結びつく電子音楽の活用の試みが行われており、これをライブエレクトロニクスと称する。初期には4Xというコンピュータが使われ、ブーレーズはこの技術を用いて代表作の一つ『レポン』を作曲している。 1970年代には、コンピュータ技術の支援による音響の分析結果に基づく生楽器のオーケストレーションの作品が多く生まれた。中でもスペクトル楽派と呼ばれる一群の作曲家たち、特にグリゼーの代表作『音響空間』が挙げられる。 1980年代にはコンピュータや電子キーボード楽器のMIDI制御によるテープ録音を伴い、シンセサイザーの各種エフェクトなどを経て奏者の任意のタイミングによって再生し、アンサンブルやオーケストラと共演するという試みが多く行われた。サーリアホやハーヴェイなどの作品にそれらの技術使用が見られる。 1990年代以降はリアルタイム音響制御ソフトMax/MSPにより、ライブエレクトロニクスはより身近なものとなった。IRCAMを中心として多くの作曲家がこの技術を用いており、ソロ、室内管弦楽(主にアンサンブル・アンテルコンタンポランの演奏会では多く用いられる)からオーケストラやオペラに至るまで、ライブエレクトロニクス技術は幅広く用いられている。近年では特に前述のサーリアホが2つのオペラ『遥かな愛』(2000年)と『アドリアナ・マーテル』(2006年)において、それぞれ合唱を舞台裏に配置し、マイクで拾った音を元に会場全体の多くのスピーカーに空間配置して移動音響として用いるなど、あからさまな電子音響だけではなく様々な場面で管弦楽においてライブエレクトロニクス技術が援用されている。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/03 06:22 UTC 版)
シンセサイザーなどの電子楽器(MIDI音源などを含む)では、奏法そのもののほか、そのためのMIDIチャンネルメッセージもそう呼ぶ。
※この「電子楽器」の解説は、「ピッチベンド」の解説の一部です。
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