性欲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/29 04:52 UTC 版)
概要
一般に第二次性徴が発現して生殖能力を獲得したとき、「性の目覚め」が起きるとされる[1]。異性のアイドルに対する関心などは、それ以前から抱くこともある。性欲の高まる時期や強さは、個人差や性差が大きい。多くの伝統的な宗教で、性欲は慎むべきもの、忌避すべきもの、警戒すべきもの、とされてきた。医学的研究により、性欲には男女[注釈 1]で異なったピークの時期があることが明らかになっている[要出典](#生物学的・医学的な説明を参照)。
人間の性欲は個人によって多様性を持つ。また、「動物で同性愛など生殖に結びつかない性行動もある」という[2]。
精神分析学における性的欲求
19世紀末から20世紀初頭に精神分析をおこなった学者であるフロイト(1856年 - 1939年)が創始した精神分析学では「リビドー」(ラテン語) (libido) が「性的衝動を発動させる力」とする解釈を、当時心理学で使用されていた用語リビドーにあてた[3]。フロイトは性欲が空腹や権力への意志に類似していると分析している[4]。同派の性欲の研究について言えば、フロイトによる小児性欲のエッセイが著名である。フロイトは未発達の小児にも性欲があると考え、口唇期、肛門期、男根期(エディプス期)、性器期という段階に分類した。こうした性行動をともなわない性欲を充足させるか否かが後の人格形成に大きく関わると考えたフロイトは、こうした性欲の抑圧(欲求不満)をヒステリーの原因と想定した。またそうした性欲を根源的な性欲と名付けた。フロイトはこうして、人格形成を性欲に起因する欲求で説明しようと考えた。これを汎性欲論と呼ぶが、近年では多くの批判を受け、妥当性に欠けるとされている。
リビドーの考え方を前提とした場合、性欲そのものは非常に単純であり根源的な欲求である。ただしその性衝動をどう充足するかによって、性的指向は個々に変化する、と考える。フロイト的な解釈によれば、口唇期の欲求不満が固着した場合は、悲劇的で不信感に満ち、皮肉屋なパーソナリティが形成される可能性があるという、いささか「非科学的な結論」になってしまう。
一般に性的欲求が強まるのは、思春期以降と言われるが、個人差が大きい。性的好奇心は年齢を問わずにおこり、発現の仕方も多様である。
状況によっては、関係性への欲求や所有欲、共感欲といった別の欲求に置き換わる場合もある。無性愛(性的な欲求を一生自覚せずに過ごす)もまれに存在する。
生物学的・医学的な説明
男性の場合
男性の性欲は睾丸が精子をつくるリズムと連動する[5]。睾丸で分泌されるテストステロンに左右される。(そのため、去勢を行うと性欲は低下する)。テストステロンが急激に増加する思春期(13~22歳頃)に性欲は高まり、70歳頃まで高い状態が続く[6]。『ボディ・リズム』の著者リン・ランバーグの指摘によると、男性の性欲は年周期で変化しており、10月にもっとも多く精子がつくられ性欲もピークを迎える[5]。複数の研究者ら[注釈 2]の研究でもセックスやマスターベーションの回数が多いのも10月だといい、結果、女性の妊娠も増えるという[要検証 ]。逆にテストステロンの分泌が減るのは3月である[5]。ピークの10月と最も低い3月の差は25%に達するという[5]。男性の性欲と年齢の関係について言えば、思春期がもっとも性欲が強いと言われ(より具体的には精子製造では15歳前後。テストステロンの分泌量では19歳がピークだとされ[5])、ピーク以降年齢とともに漸減する。
女性の場合
女性の性欲は排卵期間(卵抱期)を頂点として高まり、月経の周期で変化していると言われている[5]。つまり(月経が順調な女性であれば)1か月前後周期で増減を繰り返している。
女性はホルモンの分泌の変化で40歳以降から性欲が増していき、50代半ばくらいにピークがくるとする説があった。その根拠は更年期・閉経に向けて女性ホルモンが低下し、女性でも少量分泌されている男性ホルモンの割合が相対的に増えるからというものであった。2022年1月に、民間病院とリサーチ会社による20代-50代の女性各650名(10歳階級)、計2,600人の女性に対する「理想的な性行為の回数」に関するインターネット調査が行われた。その結果、理想的な性行為の回数が、「理想とする性行為の回数」からみると、女性の性欲のピークは、20代女性であった。また30代、40代、50代と年齢が進むごとに女性の性欲は低下していく傾向が見られた。また、女性が理想とする性行為の回数は、「1週間に1回」前後とする回答が20代-50代のどの年代でも多くなった。性行為がまったくなくてよいと答えた割合は低く、50代女性でも4人に約3人(73.5%)で、回数の差はあっても性行為が必要と考えていることもわかった[6]。
注釈
出典
- ^ “体の発達-第二次性徴などの変化”. www.ibmjapankenpo.jp. 日本アイ・ビー・エム健康保険組合. 2021年5月9日閲覧。
- ^ Bruce Bagemihl, Biological Exuberance: Animal Homosexuality and Natural Diversity, St. Martin's Press, 1999; ISBN 0312192398
- ^ https://hdl.handle.net/10131/2758 岩切正介 フロイトとヘルバルト。とくにリントナー編『経験的心理学教本』について Die Beziehung zwischen Freud und Herbart: Lindners Lehrbuch von Psychologie
- ^ Malabou, Catherine (2012). The New Wounded: From Neurosis to Brain Damage. New York: Fordham University Press. p. 103. ISBN 9780823239672.
- ^ a b c d e f 日本博学倶楽部『「人体の謎」未解決ファイル』PHP研究所、2009年。
- ^ a b “女性の性欲のピークは40歳、50歳というのは間違いだった!”. 竹越 昭彦(浜松町第一クリニック院長). 2023年11月16日閲覧。
性欲と同じ種類の言葉
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