ガンド
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/20 07:27 UTC 版)
フィン人(サーミ人)とガンド
ヴァイキングは、「フィン人」(フィンランドの多数民族スオミ人ではなく、少数民族サーミ人のこと)を呪術に堪能な民族であると見なしていた。事実、「フィン人(サーミ人)も呪術もどちらも信じてはならない」という法が制定され、「フィン人(サーミ人)の呪いをかける」(古ノルド語: finnvitka)という動詞まであった[16]。
12〜13世紀の歴史書『ノルウェー史』には、サーミ人のシャーマンが交霊会を行う描写が含まれており、シャーマンが召喚する精霊を、著者はガンドゥス(ラテン語: gandus)と呼んでいる[17]。この記述で特徴的なのは、サーミ人の信仰における様々なタイプの精霊を「ガンドゥス」とひとまとめにしており、儀式に関わる動物も何故か(本来のトナカイではなく)鯨や海獣としていることである[18]。クライヴ・トリーは、『ノルウェー史』の著者が持つガンドへのイメージが、本来は別物であるサーミ人の信仰を把握するうえで現れているのだと主張している[15]。
脚注
参考文献
- Tolley, Clive (1995). “Vǫrðr and Gandr: Helping Spirits in Norse Magic”. Arkiv för Nordisk Filologi 110: 57-75 .
- Neckel, G.、Kuhn, H.、Anne, Holtsmark ほか 編、谷口幸男 訳『エッダ―古代北欧歌謡集』新潮社、1973年。ISBN 4-10-313701-0。
- Ström, Folke 著、菅原邦城 訳『古代北欧の宗教と神話―先史時代からヴァイキング時代まで』人文書院、1982年、243-244頁。
- Hermann, Pálsson 著、大塚美津子、西田郁子、水野智昭、菅原邦城 訳『オージンのいる風景―オージン教とエッダ』東海大学出版会、1995年、92-94頁。ISBN 4-486-01318-2。
- Nordal, Sigrdur 著、菅原邦城 訳『巫女の予言―エッダ詩校訂本』東海大学出版会、1993年、23, 26頁。ISBN 4-486-01318-2。
- Simek, Rudolf Angela Hall訳 (2007). Dictionary of Northern Mythology. Boydell & Brewer. ISBN 0-85991-513-1
注釈
出典
- ^ a b Hermann 1995, p. 93.
- ^ Ström 1982, p. 243-244.
- ^ Ström 1973, p. 244.
- ^ 谷口 1973, p. 11.
- ^ 『巫女の予言』 1993, p. 23.
- ^ 谷口 1973, p. 12.
- ^ 『巫女の予言』 1993, p. 26.
- ^ Ström 1973, p. 243.
- ^ Simek, p. 115.
- ^ Hermann 1995, p. 112.
- ^ 谷口 1973, p. 18.
- ^ Ström 1973, p. 102.
- ^ Simek, p. 179.
- ^ Tolley 1995, p. 71.
- ^ a b Tolley 1995, p. 66.
- ^ Tolley 1995, p. 62.
- ^ Tolley 1995, pp. 62–64.
- ^ Tolley 1995, pp. 65–66.
- ガンドのページへのリンク