アラビカコーヒーノキ 栽培

アラビカコーヒーノキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/04 13:54 UTC 版)

栽培

アラビカコーヒーノキの育成には気候や土壌などの影響が大きく[3][17]、気候の変化や病害にデリケートな品種である[2][14]

気候

質の良いコーヒーを収穫するためには18~21℃の範囲内に年間気温が保たれた環境が最も適している[17]。23℃を超えると果実の発育と熟成が過度に進むためコーヒーの味が落ちる[3][17]。継続的に30℃程度の気温下におくと茎が腫れて葉が黄色くなったりといった異常が見られ、育成も鈍る[3][17]。低温も好ましくなく、17~18℃以下の年間気温では育ちが悪く、たまに霜がかかるだけでも果実に悪影響を及ぼす[3][17]

土壌

有機性に富んだ火山灰土質が栽培に適した土壌とされている[23]。これはアラビカコーヒーノキの起源であるエチオピアのアムハル高原が、火成岩風化したことにより形成された腐食含量の高い土壌であるために栽培地としてこれに近い土壌が自然と選ばれているものと考えられている[23]。実際にアラビカコーヒーノキが栽培されている地域をみると、玄武岩の風化によって形成された赤土のブラジルの高原地帯であったり、火成岩の風化や火山灰地と腐食土の混成で形成されるアンデス山脈周辺やスマトラ島ジャワ島のように、大規模な生産がなされている地域はいずれもエチオピアの高原地帯の土壌に近い[23]。土壌の違いは飲料としてのコーヒーの味に影響を与える[24]。例えば酸性の土壌で栽培・収穫された豆から淹れたコーヒーは一般的に酸味が強くなると言われる[24]

育成

苗床に種をまくとおよそ40~60日で発芽し、6カ月程度で50センチほどの苗木に成長する[12]。木が成長すると収穫の作業能率向上のため通常は2~3メートル程度に剪定される[10][25]。この苗木を苗床から農園に植え替えた約2~3年後の雨季開花する[12][25][26]。この開花期に気温が高いとうまく花が咲かない場合もある[27]。花は2~3日咲いた後に枯れて緑色の果実が実り、開花後6~8か月後に果実が赤色に熟すと収穫を迎える[12][26]南半球ブラジルコロンビア南部、ザンビアジンバブエパプアニューギニアなどの地域では5~9月が収穫期にあたる[26]。一方で北半球中米諸国やエチオピアでは11月頃からが収穫期である[26]。コーヒーの収穫は樹齢6~10年ほどをピークに徐々に低下していくことが多いが[12]、天候、施肥、害虫、害病など、条件に恵まれれば数十年にわたって結実することもある[10]


  1. ^ スマトラ島で栽培されるティピカの亜種[21]
  1. ^ a b c d e f g h Classification for Kingdom Plantae Down to Species Coffea arabica L.” (英語). アメリカ農務省. 2013年2月9日閲覧。
  2. ^ a b c なぜなぜまめ事典 ~コーヒーまめ知識~|お客様相談室”. アサヒ飲料. 2013年2月9日閲覧。
  3. ^ a b c d e f M.B.P. Camargo(2010), p.240.
  4. ^ a b 田口(2003)、8頁。
  5. ^ a b c 広瀬(2008)、63頁。
  6. ^ a b c d e f Amanda Fiegl (2012年11月8日). “The Last Drop? Climate Change May Raise Coffee Prices, Lower Quality”. National Geographic. 2013年4月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年2月9日閲覧。
  7. ^ コーヒーノキ”. 宮城県薬剤師会. 2013年4月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年2月9日閲覧。
  8. ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 172. https://www.biodiversitylibrary.org/page/358191 
  9. ^ a b c d コーヒーノキ”. みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2013年3月15日閲覧。
  10. ^ a b c 田口(2003)、13頁。
  11. ^ コーヒーの豆知識”. KEY COFFEE. 2013年5月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年3月15日閲覧。
  12. ^ a b c d e f 田口(2003)、12頁。
  13. ^ 田口(2003)、9頁。
  14. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p コーヒー豆の種類・基礎知識”. TONEGAWA COFFEE Premiun Beans Shop. 2013年4月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年2月9日閲覧。
  15. ^ 広瀬(2008)、65頁。
  16. ^ A・ルシアンン・ギュイヨー 著、徳田陽彦 訳 『栽培植物の起源』八坂書房、1979年、115頁。ISBN 978-4896943016 
  17. ^ a b c d e f g Davis AP, Gole TW, Baena S, Moat J (2012年11月7日). “The Impact of Climate Change on Indigenous Arabica Coffee (Coffea arabica): Predicting Future Trends and Identifying Priorities” (英語). PLoS ONE 7 (11). doi:10.1371/journal.pone.0047981. http://www.plosone.org/article/info:doi/10.1371/journal.pone.0047981?imageURI=info:doi/10.1371/journal.pone.0047981.t001 2013年2月9日閲覧。. 
  18. ^ a b c d 田口(2003)、18頁。
  19. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 田口(2003)、20頁。
  20. ^ a b 田口(2003)、21頁。
  21. ^ a b c d e f g h i j 広瀬(2008)、64-65頁。
  22. ^ a b c d 田口(2003)、19頁。
  23. ^ a b c 田口(2003)、10頁。
  24. ^ a b c 田口(2003)、11頁。
  25. ^ a b 広瀬(2008)、41頁。
  26. ^ a b c d 株式会社ユニカフェ:コーヒー基礎知識 第2回 コーヒーの栽培 [2]”. 株式会社ユニカフェ. 2013年4月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年2月9日閲覧。
  27. ^ M.B.P. Camargo(2010), p.241.
  28. ^ a b Coffee production by exporting countries” (英語). The International Coffee Organization. 2020年2月11日閲覧。
  29. ^ アラビカコーヒー基本情報”. フジフューチャーズ. 2013年5月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年2月9日閲覧。
  30. ^ Exports of coffee by exporting countries” (英語). The International Coffee Organization. 2020年2月11日閲覧。
  31. ^ コーヒーの基礎知識”. 三本コーヒー株式会社. 2013年2月9日閲覧。
  32. ^ Jerry Baldwin (2009年3月14日). “Appreciating Coffee Like Wine” (英語). the Atlantic. 2013年2月9日閲覧。
  33. ^ 広瀬(2008)、18頁。





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