頭端式ホーム
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/09 13:55 UTC 版)
頭端式ホーム(とうたんしきホーム、英語: bay platform)とは、線路終端側に向けて旅客流動のある(改札口や階段等がある)プラットホームのことをいう[1]。
路線の起終点駅またはスイッチバック駅においてみられる形態であり、ホームの線路終端側で、旅客が歩行する通路の横に車止めがある。なお駅構内の複数のホームのうち一部のみがこの形状となっている場合もある。
また、並行した2面以上のホームを持つ場合、上空から見ると、「コ」又は「ヨ」の字にプラットホームが形成されており、その形状から櫛形ホーム(くしがたホーム)とも言われている[2]。
概要
主に、ヨーロッパ各地の中央駅やターミナル駅に見られ、日本も私鉄又は私鉄に源を発する路線に見られることが多い。ターミナル駅のほかに中間駅にも存在するケースがある[3]。また、地上駅以外にも高架駅や地下駅にも存在し、さらには地下と地上の2層構造になっている駅もある。
頭端式ホームは貨物駅にも存在する[4]。この場合、ホームに入る際は機関車を最後部に付替え、推進運転で入線する。国鉄時代は誘導員を乗車させるため先頭に控車を連結させることもあった。
利点と欠点
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本節は頭端式ホームと同一平面の行止まり側に、改札口等の駅施設が設置されている駅を想定して記述する。
頭端式ホームの部分は必然的に始発・終着駅(線路が一方向のみに伸びる場合)又はスイッチバック駅(線路が二方向以上に伸びる場合)となるため、それぞれの駅の特徴を併せ持つことになる。
利点
- 上下移動が無いため、必然的にバリアフリーに対応しやすい[5]。列車本数がそれ程多くない始発・終着駅の場合、構造物の少なさやバリアフリー化、機回しを必要とする客車列車廃止等の観点から、通過式ホームから頭端式ホームに改造される場合もある。
- 改札内に階段も設置する必要がないため、構造物が少なく、構内の見通しが良い[5]。
- ホーム頭端部がつながっているため、その全幅に渡り改札を横一列に並べることで、階段を使用せず乗降客をスムーズに捌くことが可能[5]。
- ホームのつながっている部分が各ホームの共有スペースとなり、商業施設や休憩所などを置く事ができる。
- 乗車用と降車用でホームを分けることも容易になるため、人の流れをスムーズにしやすい(阪神大阪梅田駅、阪急大阪梅田駅など多数)[5]。
- 線路は駅から片方向にのみ伸びているので、都心部に一直線に向かう形で駅を設置することができ、さらに駅の最も都心側に駅舎を設置できる。
欠点
- 一方向からしか線路が来ないため、線路容量の余裕が少なくなり、通過式よりも効率が悪い。通過式の終着駅であれば一時的に進行方向の奥側にある引き上げ線に車両を留置してホーム運用効率化を図ることが出来るが、頭端式ホームでは行止まりのためそれが出来ない。用地の余裕が少ない都心部に位置することも多く、ホーム増設も困難が伴うが、2層式にして解決する場合(JR上野駅や小田急小田原線新宿駅等)もある[5]。
- 構造上線路の延伸や他路線との直通が困難。延伸する場合は通過式ホームを併設するか、頭端式ホームを廃止して改良工事、若しくは全く別の位置に駅を移設することになる(京王電鉄京王線の新宿駅に対する新線新宿駅、東急東横線の渋谷駅及び桜木町駅、近鉄難波線の大阪上本町駅の地下ホーム等)[5]。地下鉄と直通する場合、その路線の起終点とは別に路線の途中駅から分岐して乗入れさせる路線もある(西武有楽町線、近鉄京都線等)。
- 行止まり側の改札を出入りする場合は、行止まり側から離れる程歩行距離が長くなるため、混雑が行止まり側となる車両に偏る。そのため、車両を増結しても混雑緩和効果が低く、遅延原因となることもある。このためホームの中間部に階段等を設け、別に改札を設置することもある[5]。
- 安全上、停車前からかなり低速度に減速しておく必要があるので到着時間が遅くなる[5]。
頭端式ホームの状況
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ヨーロッパ
ヨーロッパでは、大都市のターミナル駅は大規模な頭端式ホームを備えた駅となっている場合が多い(キングス・クロス駅等)。ロンドン、パリなどでは、壮麗な駅舎を持つ大規模な頭端式ターミナル駅が方面別に複数あるが、これらは各方面に向かう路線を別々の鉄道会社が建設し、ターミナル駅は各社の顔となる駅として建設されたためである。また、ローマのテルミニ駅も頭端式の終着駅として名高い。
日本
日本では、国鉄時代から頭端式ホームの旅客駅は非常に少ない。
また、将来の延長を見越した駅に限らず、港町など物理的に延長の不可能な終着駅においても機関車付替え及び機回しのため単式・島式複合ホームが採用されることが多かった。1970年代頃までは動力集中方式の列車も多く、終着駅においても機関車牽引列車が入線することが多かったことから、機回しが困難な頭端式ホームは敬遠されていた。国鉄末期において大規模な頭端式ホームを有する駅は、上野駅(地上ホームと高架ホームの一部)、天王寺駅(阪和線ホーム)、高松駅程度であった。
私鉄(私鉄として開業したのち、国有化された路線も含む)では動力分散方式である電車での運転を前提としていたこと、先への延長を見込んでいなかった路線が多いことや、上記の通り乗車客と降車客を分断できることから、頭端式ホームの採用が多い。
頭端式ホームの例
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日本
(旅客駅を対象とする。面線数は頭端式部分のみ)
北海道地方
東北地方
関東地方
中部地方
近畿地方
中国地方
四国地方
九州地方
日本以外の国
イギリス
フランス
- パリ
- マルセイユ・サン・シャルル駅 - 南仏最大のターミナルで、TGV等多くの列車が当駅でスイッチバックする。
- リール=フランドル駅
- オルレアン駅
- トゥール駅 - リール、オルレアン、トゥールとも頭端式の駅の他に通過式の新駅があり、上記の駅には始発・終着列車のみ発着する。
ドイツ
イタリア
- ローマ・テルミニ駅
- ミラノ中央駅
- ミラノ・カドルナ駅
- ミラノ・ポルタ・ガリバルディ駅
- ヴェネツィア・サンタ・ルチーア駅
- フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ駅 - ローマ - ミラノ間幹線ルート上にあり、当駅を経由する列車はスイッチバックを行う。
- トリノ・ポルタ・ヌオーヴァ駅
- ナポリ中央駅
オランダ
オーストリア
スイス
スペイン
ポルトガル
- リスボン
- サンタ・アポローニャ駅
- ロシオ駅
- カイス・ド・ソドレ駅 (CP)
- ポルト
- サン・ベント駅
ハンガリー
エストニア
ノルウェー
スウェーデン
フィンランド
ルーマニア
ロシア
トルコ
インド
スリランカ
タイ
インドネシア
中華人民共和国
- 北京市
- 重慶市
- 上海市
- 竜陽路駅の上海トランスラピッド
- 広東省広州市
- 林和西駅(APM線)
- 広東省珠海市
- 珠海駅
- 山東省青島市
- 山東省煙台市
- 煙台駅
- 吉林省長春市
長春駅(長春軌道交通3号線・旧駅)
- 香港特別行政区
大韓民国
朝鮮民主主義人民共和国
アメリカ合衆国
- ニューヨーク
- グランド・セントラル駅(44面67線)
- グランド・セントラル-42丁目駅・42丁目シャトルのりば(2面3線)
- グランド・セントラル駅(44面67線)
- シカゴ
- ユニオン駅
- ラサール・ストリート駅
- ミレニアム駅
- シカゴ・Lブルーライン オヘア空港駅(2面3線)
- デンバー
- ユニオン駅(5面8線)
- ロサンゼルス
- サンフランシスコ
- バート サンフランシスコ国際空港駅(2面3線)
- カルトレイン 4th and King駅(英語版記事)(6面12線)
カナダ
脚注
- ^ “駅ホームにおける安全性向上のための検討会 中間とりまとめ” (pdf). 国土交通省鉄道局. p. 14 (2016年12月). 2017年7月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月4日閲覧。
- ^ 日本大百科全書(ニッポニカ). “駅(鉄道)(えき)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2024年4月9日閲覧。
- ^ 東武野田線柏駅、小田急江ノ島線藤沢駅等。
- ^ 隅田川駅・東京貨物ターミナル駅等多数。『2016貨物時刻表』、公益社団法人鉄道貨物協会、2016年3月、258 - 296頁
- ^ a b c d e f g h 曽根悟「便利な列車ダイヤと停車場の形態」『鉄道ピクトリアル』第598号、電気車研究会、1994年11月、42 - 43頁。
- ^ 河出書房新社「日本最大の私鉄 近鉄 知らなかった凄い話」(新田浩之著。2024年5月17日発売)P144-147 ISBN 9784309486024
関連項目
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