音楽と脳
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/26 22:07 UTC 版)
詳細は「音楽心理学」を参照 音楽を、単なる「音」ではなく、また「言語」でもなく、「音楽」として認識する脳のメカニズムは、まだ詳しくわかっていない。それどころか、ヒトが周囲の雑多な音の中からどうやって声や音を分離して聞き分けているのかなど、聴覚認知の基本的なしくみすら未解明なことが多い。しかし、音楽と脳の関係について、以下のようないくつかの点はわかっている。 音楽に関係する脳:側頭葉を電気刺激すると音楽を体験するなどの報告から、一次聴覚野を含む側頭葉が関係していることは確かである。 音楽、とくにリズムと、身体を動かすことは関連している。 音楽には感情を増幅させる働きがある。たとえば映画・演劇などで、見せ場に効果的に音楽を挟むことによって観客の涙を誘ったり、あるいは怪談話の最中におどろおどろしい音楽を挟むことにより観客の恐怖感を煽る、といったものである。 幼い頃から練習を始めた音楽家は、非音楽家とくらべて大脳の左右半球を結ぶ連絡路である「脳梁」の前部が大きい(Schlaugら、1995)。楽器の演奏に必要な両手の協調運動や、リズム・和音・情感・楽譜の視覚刺激などといった様々な情報を左右の皮質の各部位で処理し、密接に左右連絡しあうことが関係している可能性がある。 絶対音感:聴いた音の音階、基準になる音との比較なしに、努力せずに識別できる能力のことで、9 - 12歳程度を超えると身に付けることができないといわれている。アジア系の人には絶対音感の持ち主が多いと言われているが正確なデータはなく、これが遺伝的、文化的要因のいずれによるのかも医学的な根拠は示されていない。また、絶対音感を持っている人と持っていない人では、音高を判断しているときに血流が増加する脳の部位が異なる。持っていない人では、音高を短期記憶として覚えることに関係する右前頭前野の活性が弱いのに対し、持っている人では記憶との照合をする、背外側前頭前野の活性が強かったという。また絶対音感保持者では側頭葉の左右非対称性(左>右)が強いという(Zattoreら、2003)。 音楽と数学の関係:中世ヨーロッパで一般教養として体系化された「自由七科」では、音楽は数学的な学問の一つとして数えられている。また、子供に音楽の練習をさせると数学の成績が伸びたという報告(Rauscherら、1997)もあり、音楽と数学の関連性を示唆する。 楽器を習うと脳の両側が刺激され、記憶力が強化される。 音楽は、認知機能を刺激し、幸福を促進し、生活の質を改善する。リラックスしたり、エネルギーを増やしたり、思考を改善したり、その日のやる気を引き出したりする必要がある場合でも、明るい音楽は最も必要なときに追加のサポートを提供できる。科学者たちは、音楽を聴くことで、思考や動きを変えるさまざまな脳の領域を刺激できることを発見した。 多くの研究は、勉強しながら環境音楽を聞く大学生は、不安が少なく、集中力があり、テストスコアが高いことを示している。 環境音には、自然音、アコースティックギター、ピアノ、電子音などの心地よい楽器音が含まれる。お気に入りの音楽の曲は、前向きな思い出をかき立て、気分を高め、落ち着いたリラックスできる雰囲気を作り出すことができる。環境音楽はまた、分析的思考と創造性に関与する脳内の領域を活性化し、情報を吸収して保持する脳の能力を高めると考えられる。 残念ながら、音楽は脳に多くの利点をもたらすが、言語と音楽は脳の同じ部分で処理されるため、環境音楽を除くすべての種類の音楽を聴きながら作業すると、創造性と読解力が大幅に損なわれる。研究者たちは、音楽を聴くと、言語情報を記憶し、タスクを完了する能力が破壊されたと推測した。
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