郷土主義の放棄と国民政党化(2017-)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 03:17 UTC 版)
「同盟 (イタリア)」の記事における「郷土主義の放棄と国民政党化(2017-)」の解説
2017年、翌年の選挙を前に参加する政党連合「中道右派連合」は足並みの揃わないイタリア民主党を中心とした「中道左派連合」、第1党ながら孤立する五つ星同盟に対して優勢を維持している。そうした中でサルヴィーニはこれまで以上に反EU・反移民・反緊縮財政を全面に押し立てた猛烈な選挙戦を展開し、政党単独での支持率は15%に達している。「中道右派連合」は最多得票の加盟政党から首相職を選出する協定を発表しており、選挙連合で指導的な立場であるフォルツァ・イタリアと並んで首相職すら争いつつある。一方、上記の「郷土主義」はイデオロギーとして完全に遠ざけられており、本選挙では南イタリアでも候補者を多数擁立する事を声明している。 2018年1月、北部同盟は2018年イタリア共和国総選挙での選挙スローガンを「プリマ・リ・イタリアーニ」(伊:Prima gli Italiani、英:Italians First)に決定したと発表した。これは自国第一主義で一世を風靡し、ベニート・ムッソリーニとの類似性も指摘されたドナルド・トランプを範としており、ポスターに関してもトランプが使用した青い背景に白文字のポスターが使用されている。同年2月5日、マルケ州マチェラータで発生した外国人への銃乱射事件で、実行犯として逮捕されたネオ・ファシズムの運動家は北部同盟の党員としての経歴を持っていた。結党時からの郷土主義は未だ一定の存在感を持っているが、サルヴィーニ体制での右翼路線は右派ポピュリズムを超えてナショナリズム(Nazionalismo)の傾向を持ちつつある。 こうした中、サルヴィーニは予告していた通り政党名から「Nord」(北部)を除外し、「Lega」(同盟)とのみ記載された選挙人名簿を選挙委員会に提出した。伝統的に使用されてきた騎士ジュッサーノを模った党章からも「北部」の名称が外され、さらに「パダーニア主義」を意味する「アルプスの花」のロゴや党旗も使用を取りやめた。事実上、サルヴィーニ体制下で北部同盟は郷土主義を放棄して国民政党に転向したと指摘されている。現時点では選挙活動としての方針転換に留まり、正式な党名変更の届出などは行われていないが、もし実施されれば「イタリア最大の郷土主義政党」が消滅する事になる。これはかつてイタリア共産党が左翼民主主義者として、イタリア社会運動が国民同盟として穏健化した事例に相当する政界再編となる。 2018年3月4日、郷土政党から国民政党となった「同盟」(Lega)は右翼層・反EU層から広範な支持を集め、下院得票率は17.37%に達して126議席を配分された。議会内全体でも第3党となったが、右派連合内ではフォルツァ・イタリア(14.01%)を大きく凌いで陣営の中心政党になった。既にフォルツァ・イタリアは首相候補を「同盟」から選出する事を明言しており、サルヴィーニ政権におけるEU離脱が現実味を帯びつつある。またトーンを弱めたとはいえ、同盟と並んで反EU政党である五つ星運動も第1党となっており、離脱に慎重な左派連合との大連立が不調に終われば反EU連立が樹立される可能性も指摘されている。 2018年6月1日、同盟と五つ星運動は無所属のジュゼッペ・コンテを首相に擁立、欧州主要国で反EU派が初めて政権を掌握した。学者出身のコンテ首相は連立与党の仲介役に留まり、副首相に選出されたサルヴィーニと五つ星運動のルイジ・ディマイオ(英語版)代表による二頭政治となった。主に経済・福祉を中心に政策を進めるディマイオに対し、サルヴィーニは治安・外交で存在感を発揮した。サルヴィーニは来年の欧州議会選挙に向けて右翼のみならず極右やネオ・ファシズムの政治勢力とも連携を図り、スペインやフランスの非難を跳ね除けて難民船の入港を拒否するなど強硬姿勢を貫いている。人道問題から移民問題には弱腰で反EUについても穏健色を強める五つ星運動は民衆の関心を失い、同盟が既に支持率を上回っているとする調査もある。 2019年5月26日、欧州議会議員選挙で同盟は総選挙を上回る34.3%を得票する圧勝を収めた。五つ星同盟は得票率17.1%と党勢後退の続く民主党の22.7%にも及ばず、政権内の主導権が入れ替わるのではないかと見られている。欧州議会内では複数会派に分かれている欧州懐疑主義政党の一本化を掲げる新会派、アイデンティティと民主主義(ID)を設立した。IDには、ドイツの為の選択肢、フランス国民連合、オーストリア自由党、オランダ自由党、フラームス・ベランフなど有力な極右政党が名を連ねており、五つ星運動から同盟に転向したマルコ・ザンニ(英語版)欧州議員が会派代表を務めている。 現在、同盟内に複数存在した派閥はサルヴィーニ派と反サルヴィーニ派に二分されている。サルヴィーニ派は右派ポピュリストからファシズムの流れを組む極右勢力までを幅広く含んでおり、党内の新興勢力として北部同盟から同盟への転換を主導した。北部同盟時代に勢力が及んでいなかった南部は協力政党「サルヴィーニと共に(英語版)」を通じて支持する傾向もあり、党内改革だけではなく同盟の解散と新党結成を望む声も強い。反サルヴィーニ派はボッシなど反国家主義・分離主義的な極左派は今や少数派であり、中道的な分権論者やリベラルな新自由主義者が中心となっており、むしろ党外のベルルスコーニ率いるフォルツァ・イタリアとの親和性が強いと見られている。
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