運動の発端と発展
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 14:15 UTC 版)
「タイガーマスク運動」の記事における「運動の発端と発展」の解説
2010年12月25日、「伊達直人」を名乗る30代のサラリーマンの男性から、群馬県中央児童相談所へランドセル10個が送られたことを皮切りに、2011年1月1日には神奈川県小田原児童相談所にも同人物名義で寄付が行われるなど、全国各地の児童養護施設へ複数存在すると思われる「伊達直人」からの寄付行為が相次いだ。これらの寄付行為は、寄付者の名義である「伊達直人」が漫画『タイガーマスク』の主人公で、自らが育った孤児院へ素性を隠して寄付を行う人物と同名であることから、「タイガーマスク運動」と呼ばれるようになった。また、この寄付行為は全国で相次いだ現象と見なして「タイガーマスク現象」と呼ぶこともある。 寄贈された物品は、ランドセルの他にはプラモデル、玩具、筆記用具、現金、商品券、食品、紙おむつ、金塊などがあり、寄付を受け取った施設の職員たちは口々に感謝を述べている。2011年1月11日に『あしたのジョー』の主人公、矢吹丈名義で千葉県船橋市の「おんちょう園」に文房具が寄付されるなど、「伊達直人」以外のフィクションのキャラクターや実在の人物の名を借りた寄付も相次いで行われた。これら匿名による寄付行為の運動は、2011年1月12日までに全国47すべての都道府県へ広がった。 寄付者の中には、70歳代の年長者や小中学生もおり、寄贈品の届け先も老人保健施設や警察、大手スーパー、社会福祉協議会、学校などに及んでいる。漫画『タイガーマスク』の原作者の梶原一騎が1940年代に一時入所していたといわれる川崎市中原区の児童養護施設にも、1月11日から12日にかけてランドセル8個や折り紙などが届けられた。また、奈良県では施設内で上級生が下級生に匿名の贈り物をしたケースもあった。2011年1月15日の時点で確認された寄付行為の件数は1000件を超え、贈られたものはランドセルだけで750個余り、現金や商品券は約3200万円分となっている。前年(2010年)の全国の児童養護施設への寄付は約4000万円なので、約2週間で9か月分を超える寄付金が届いた計算になる。 困惑を招いた事例 一方で、匿名の人物による行動であるため、困惑を招いた事例も存在する。1月16日夜、神奈川県相模原市の市立あじさい会館の管理室ドアノブに、手作りとみられるチャーシュー4本入りの保冷バッグが置かれ、「子供たちにおいしいチャーシューを食べさせてあげてください。伊達直人を尊敬するラーメン界の勇者より」と書かれた手紙が入っていた。同市では「製造日時などがわからず食品としての安全性が確認できない」という理由からチャーシューを冷蔵保存していたが、贈り主がラーメン店店主と判明したため、18日夜に市職員が事情を説明してチャーシューを返還した。店主は「子供たちにごちそうできるよう、次からは事前に相談します」と答えたという。 全国児童養護施設協議会は「児童養護施設へのご厚意にかかわるお礼とお願い」と題した文書をウェブサイトに掲載。子どもや施設に何が必要か、事前に問い合わせたうえで寄付してもらえれば、「よりみなさんのご厚意を活かすことができるとともに、子どもたちも、どなたからいただいたご厚意かを知ることで、今後の成長の糧ともなる」としている。 その他 これら一連の運動の原点については諸説あるが、2008年4月に発足した全国20あまりの漫画サークルが連携したボランティア団体「プロジェクトZ」が行っている「リアル・タイガーマスク計画」と銘打った活動が運動のきっかけではないかという報道がある。 一部メディア報道やインターネット上では、名前が同じ菅直人首相を「伊達直人」と対比させた言葉遊びがみられ、選挙での投票において、「タイガーマスク」や「伊達直人」と記入した無効票を投じる者も現れた。 施設側とされる意見 2016年現在、施設にランドセルや学用品を送るこの運動は続いているが、施設職員と思われる人物がランドセルは子供本人の好みに合わせた新品を購入したいこと、学用品も必要ないことを吐露すると同時に寄付ならば現金が一番良いと訴えている。施設の本当のニーズを見極めて寄付を行うことが、肝要である。
※この「運動の発端と発展」の解説は、「タイガーマスク運動」の解説の一部です。
「運動の発端と発展」を含む「タイガーマスク運動」の記事については、「タイガーマスク運動」の概要を参照ください。
- 運動の発端と発展のページへのリンク