起源と初期の機種
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/08 04:31 UTC 版)
「PET 2001」の記事における「起源と初期の機種」の解説
1970年代、テキサス・インスツルメンツ (TI) は電卓用CPUの主要な供給企業であった。コモドールもTIのチップを使った電卓を製造販売していた。しかし、1975年にTIはチップの外販価格を上げた。それによってTI自身の電卓の価格競争力を上げるためである。このため業界は冷え込むこととなる。 コモドールは電卓用チップを供給してくれそうな会社を探し、6502マイクロプロセッサを設計していたモステクノロジーを見つけた。モステクノロジーのチャック・ペドルは6502を使ったワンボードのコンピュータキットKIM-1をコモドール社長ジャック・トラミエルに見せ、電卓市場はもう終わりであると納得させた。1976年9月、ペドルの紹介でスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックが Apple II のプロトタイプのデモンストレーションをコモドール側に披露し、これを買ってくれないかともちかけた。しかし、コモドール側はジョブズの提示した金額が高いと判断した。トラミエルは、1977年6月のコンシューマー・エレクトロニクス・ショーに間に合うよう6カ月でコンピュータを設計・試作することをペドル、ビル・セーラー、ジョン・フィーガンスに命じた。トラミエルの息子レナードは、PET独自のグラフィックキャラクターを含む文字セットPETSCII(英語版)の設計を助け、品質管理面で働いた。その結果、世界初のオールインワン型ホームコンピュータ PET が生まれ、最初の機種は PET 2001 と名付けられた。6502プロセッサがディスプレイ、キーボード、データレコーダを制御し、さらに拡張ポートに接続する任意の周辺機器を制御する。メモリ(RAM)が4Kバイトの機種 (2001-4) と8Kバイトの機種 (2001-8) があり、基本的にはワンボードマイコンに制御回路を加えて、内蔵モノクロディスプレイ(40桁×25行表示)を駆動した。PETは設計思想面では最初のMacintoshに似ている。また、データ記録用のカセットテープレコーダー (Datassette) もキーボードの横に装備していた。カセットテープへのデータ転送レートは1500ボーだが、転送を確実に行うために同じビットを2回送るので、実質の転送レートは750ボーとなっている[要出典]。メイン基板には、メモリ拡張用、2台めのデータレコーダ接続用、パラレルポート(ディスクドライブとプリンター接続用)、IEEE-488ポート(モデム接続用)の4つの拡張ポートがある。 PET 2001 は1977年1月の Winter CES で発表され、同年10月に最初の100台が出荷された。数ヶ月間出荷が注文に追いつかない状態が続き、ペースを上げるために4KバイトRAMバージョンを翌年早々にキャンセルし、8Kバージョンのみとした。 マシンは成功したが、電卓のような小さなキーボードには不満が集中した。感触がガムのようだということでチクレットキーボードと呼ばれた。またキートップの表示が容易にかすれてしまうという問題もあった。そのころのホームコンピュータでは珍しいことではないが、信頼性も乏しかった。このため、キーボードを置換するサードパーティ製品がすぐさま登場している。 このため1979年、新たな改良機種である "2001-N" を投入。最初の機種ではディスプレイの表示色がライトブルーだったが、2001-Nでは一般的なグリーンになっている。またデータレコーダを内蔵するのをやめて、もっと大きくて使い勝手のよいキーボードを装備した。また内蔵ROMを更新して、新たに投入したフロッピーディスクドライブ装置を接続できるようにした。RAMの搭載容量によって 2001-N8 (8kB)、2001-N16 (16kB)、2001-N32 (32kB) の3機種を用意している(このうち8kB版は早々に販売停止となった)。さらに内蔵ROMに機械語モニターを搭載し、メモリ上の任意のアドレスの内容を読み書きできるようにした。これには6502のBRK命令を利用している。ただし、アセンブラは内蔵していないので、ユーザーは16進の数値を直接打ち込む必要がある。 これら新機種もよく売れ、コモドールはヨーロッパにも販路を拡大する。しかし、ヨーロッパにはすでにPETという名が商標登録されていたため(フィリップス)、名称の変更を余儀なくされた。結果として、CBM 3000シリーズ(Commodore Business Machines)と改称し、機種名も3008、3016、3032となった。また、3008は早々に販売停止となった。
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