起源と利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/12 16:25 UTC 版)
この旗は元来、1955年12月8日、欧州評議会によって、アイルランド首席紋章官のジェラルド・スレヴィン (Gerard Slevin) の案が採用されたものである。 欧州評議会は当初からこの旗を、他のヨーロッパ統合を目指す地域内組織に使用してもらいたいと望んでいた。1983年4月11日、まず欧州議会がこの旗を採用した。次いで、ヨーロッパの経済統合を進めた欧州共同体 (EC) はこの旗を1986年5月26日にシンボルとして採用した。1992年、マーストリヒト条約によって欧州共同体に代わり政治的統合を求めて発足した欧州連合(EU)もこの旗を採用した。それ以来、欧州旗の利用方法などは欧州連合と欧州評議会の共同で管理されている。欧州連合は、1950年5月9日に欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立のきっかけとなったシューマン宣言が発表されたことを、欧州統合の第一歩として記念し5月9日をヨーロッパ・デーと定めており、この日は加盟各国の各地で欧州旗が飾られる。 欧州旗は、「欧州憲法」の条文中で公式な法的地位が与えられるはずであった。しかし欧州憲法条約の批准失敗により、各国の首脳たちはこれに代わる改革条約の中からは公式な旗や歌の制定など国家の憲法を思わせる条項を排除した。欧州議会は欧州のシンボルについて条約で言及することを支持していたが、これが排除されたことに対抗して、欧州議会が欧州旗などのシンボルをより積極的に使用するよう提案した。ドイツ選出の議員ヨー・ライネン(Jo Leinen)は、欧州議会が再びシンボルの使用においてさきがけの役割を果たすべきことを示唆した。 欧州連合の各組織・機関が独自のロゴを定めている中、行政執行機関である欧州委員会は欧州旗のみをシンボルとしている。また欧州連合は域内で発行される運転免許とナンバープレートに欧州旗のデザインを使うほか、ユーロ採用各国で発行されるすべての紙幣(ユーロ紙幣)の表面に欧州旗は描かれ、12個の星はユーロ硬貨に表されている。 欧州旗は加盟国の首脳会議である欧州理事会の議長の公式演説の際には必ず使われなければならず、また議長による欧州連合非加盟国への公式訪問の際にもしばしば使われる。また欧州理事会メンバーである各国首脳たちの中には、自国内での公式な場でも自国旗とともに欧州旗を使用する独自のルールを定めているところもある。また加盟国の役所や警察に国旗と同様に掲げられている場合もある。欧州旗の使用の際、欧州連合や欧州評議会の目的や原則に相容れない目的での欧州旗の使用はしてはならない。 欧州旗は欧州連合のみならず、広くヨーロッパを代表するシンボルとして扱われている。青と黄色の配色や12個の星は、欧州のスポーツや政治経済などを扱う様々な組織や各種イベントのシンボルマークにも応用されている。また汎ヨーロッパ主義や欧州志向・西側支持を表すシンボルとして欧州連合の内外で使われている(例えば、グルジアのバラ革命ほか旧ソ連諸国での民主化運動など)。2000年代前後に制定されたボスニア・ヘルツェゴビナの国旗やコソボの国旗は、強いEU志向を反映して欧州旗に似たデザインや色を採用している。 国旗と欧州旗を並べて掲げるベルギーの連邦議会(2013年) 国旗と欧州旗を背景とするイタリアのマッタレッラ大統領の公式写真(2015年) 暗殺された反政府野党政治家のボリス・ネムツォフを追悼するロシアのデモ(2016年) スペインの国旗を飛ばしてカタルーニャの旗と欧州旗を並べることでカタルーニャ独立運動の主張が示されている(2012年)
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