起源と初期の開発
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 14:35 UTC 版)
「X Window System」の記事における「起源と初期の開発」の解説
Xの考え方がMITで生まれたのは1984年、Jim Gettys(Project Athena)とBob Scheifler(MITコンピュータ科学研究所)によるものであった。ScheiflerはArgusというシステムのデバッグ用の表示環境を必要としていた。Project Athena(DEC、MIT、IBM によるコンピュータのユーザインタフェースを改善するプロジェクト)ではプラットフォームに依存せず、マルチベンダーシステムで利用できるグラフィックスシステムを必要としていた。当時、カーネギーメロン大学のAndrew Projectでウィンドウシステムが開発中だったが、ライセンス提供を受けることができず、他に代案もなかった。 解決策として、ローカルなアプリケーションも動作させることができ、リモートでも動作させることができるプロトコルの開発という考えが生まれた。1983年中ごろ、WがUNIXに移植された(Vのときの5分の1の速度)。1984年5月、Scheiflerは同期型だったWのプロトコルを非同期型に変更し、これがXバージョン 1となった。Xは世界初のハードウェアやベンダーに依存しないウィンドウシステム環境となった。 Scheifler、Gettys、Ron Newmanが開発を進め、Xは急速に進化していった。1985年1月にはバージョン 6をリリース。当時Ultrixを搭載したワークステーションをリリースしようとしていたDECは、Xの搭載を決断した。DECの技術者がX6をDECのQVSSディスプレイ付きMicroVAXに移植した。 1985年第二四半期、Xはカラーをサポートし、DEC VAXstation-II/GPXで動作した。これがバージョン 9となる。MITはX6を外部グループに料金を徴収してライセンスしていたが、X9リリース時点からMIT Licenseを適用することとした。X9は 1985年9月にリリースされた。 ブラウン大学のグループがIBM RT-PCにX9を移植したが、整列されていないデータの読み込みで問題が発生し、プロトコルに非互換となる変更が必要となった。このため、1985年末にバージョン 10となった。1986年には外部からXについての問合せが増えてきた。X10R2は1986年1月、X10R3は1986年2月にリリース。X10R3では広く製品に採用されるようになった。DECとヒューレット・パッカードはX10R3ベースの製品をリリースし、他のグループが アポロコンピュータのマシンやサン・マイクロシステムズのワークステーションへの移植を行い、IBM PC/ATへの移植も行われた。このころ、Autofactという見本市でXを使った商用アプリケーションが初めてデモンストレーションされた(Cognition Inc.の機械系CAEシステム)。X10の最後のバージョンはX10R4で、1986年12月にリリースされた。 Virtual Network Computing (VNC) がデスクトップの共有を可能にしているように、Xサーバをそのように拡張する試みはこのころから既に行われていた。例えば、Philip J. GustのSharedXツールがある。 X10は強力な機能を持っていたが、Xプロトコルはさらに広く使われるようになる前に、もっとハードウェア中立となるよう再設計する必要があることがわかってきた。しかし、MIT だけではそのような全面的な再設計をするだけのリソースがなかった。そこでDECのWestern Software Laboratory (WSL) がこのプロジェクトに参加を申し出た。DEC WSLのSmokey WallaceとJim Gettysは、DEC WSLがX11を開発し、それをX9やX10と同じ条件でフリーにリリースすることを提案した。設計は1986年5月に開始され、8月にはプロトコルが完成した。アルファテストは1987年2月に開始され、ベータテストは1987年5月に開始された。X11のリリースは、1987年9月15日に行われた。 Scheiflerが中心となって行われたX11プロトコルの設計は、USENETのニュースグループとオープンなメーリングリスト上で盛んに議論しながら進められた。したがって、Xは最初の大規模フリーソフトウェアプロジェクトと言われることもある。
※この「起源と初期の開発」の解説は、「X Window System」の解説の一部です。
「起源と初期の開発」を含む「X Window System」の記事については、「X Window System」の概要を参照ください。
- 起源と初期の開発のページへのリンク