起源と先史時代
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 21:58 UTC 版)
「マラリアへの遺伝学的抵抗性(英語版)」および「霊長類に感染するマラリア原虫(英語版)」も参照 マラリア原虫の最も古い証拠は、約3000万年前の古第三紀の琥珀中に保存されたカから見つかった。ヒトのマラリアはアフリカに起源を持ち、宿主であったカと非ヒト霊長類と共進化したと考えられる。マラリア原虫は、霊長類、齧歯類、鳥類、そして爬虫類の宿主系統へと多様化している。ヒトに感染する5つのプラスモジウム属の種のうち、熱帯熱マラリア原虫 Plasmodium falciparum はゴリラからヒトへ伝播した可能性があり、三日熱マラリア原虫 P. vivax もまたアフリカのゴリラとチンパンジーに由来すると考えられている。2004年、ボルネオ島で見つかったサルマラリア原虫 P. knowlesi はヒトに感染することが判明し、アジアのカニクイザルなどのマカクを自然宿主としている。四日熱マラリア原虫 P. malariae はヒトへの宿主特異性が高いが、野生のチンパンジーの間でも低レベルの不顕性感染が起こっているというエビデンスも存在する。 約1万年前からマラリアはヒトの生存に大きな影響を与え始めたが、これは新石器革命における農耕の開始の時期と一致する。その影響には、鎌状赤血球症、サラセミア、グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症、東南アジア楕円赤血球症(英語版)、遺伝性楕円赤血球症(英語版)、赤血球上のGerbich抗原 (glycophprin C) やDuffy抗原の欠損などの自然選択が含まれる。これらの血液の異常は、マラリア感染に対しては選択的な有利性を与えるために選択される (平衡選択(英語版))。遺伝的なマラリア抵抗性の3つの主要な型(鎌形赤血球症、サラセミア、グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症)は、約2000年前、ローマ帝国の時代までには地中海世界に存在していた。 分子的手法によって、古代エジプトで P. falciparum によるマラリアが広く蔓延していたことが確認されている。古代ギリシアの歴史家ヘロドトスは、エジプトのピラミッドの建設者たち(紀元前2700年-1700年前後)は大量のニンニクを与えられていたと記しており、これはおそらくマラリアを防ぐためであったと思われる。エジプト第4王朝の創始者で、紀元前2613年–2589年まで統治を行ったスネフェルは、蚊を防ぐために蚊帳を用いていた。古代エジプト最後のファラオであるクレオパトラ7世も、同じように蚊帳の下で寝ていた。しかしながら、蚊帳がマラリアの予防を目的としていたのか、それとも単純に蚊に刺される不快を避けるためであったのかはわかっていない。紀元前800年前後以降のエジプトにマラリアが存在していたことは、DNAに基づいた手法によって確認されている。
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