設計と設備
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/02 00:45 UTC 版)
「イギリス国鉄マーク3客車」の記事における「設計と設備」の解説
インターシティ125において200km/hでの高速運転を実施する必要から、先代のマーク2客車とは全く異なる、完全新規設計となっている。外観はマーク2客車の中でも1971年量産開始の空調標準搭載・側窓が固定窓化改良車のマーク2D以降の各グループに類似するが、屋根がマーク2客車では滑らかなのに対して、マーク3客車は前後方向に多数の突起が伸びている点で容易に識別可能である。マーク3客車の全長はマーク2客車より10フィート(約3m)長い23mとなり、車体構造は完全なモノコック構造となっており、高い強度と耐衝撃性を有する。 マーク3客車用のBT10ボギー台車は、空気ばねを枕ばねとしてボルスタアンカーを枕梁・台車枠間の牽引力伝達に用い、さらに軸箱支持機構として直進安定性に優れた軸梁式を採用する、現代的な構造の高速2軸ボギー台車である。複列の金属ばねを枕ばねとし、ウィングばねを軸ばねとしていたマーク2客車用のB4台車と比較するとその設計には明らかな進歩や改良が認められるが、枕ばねはB4と同様に枕梁と揺れ枕の間に設置し、枕梁は心皿と側受で車体を支持する従来通りのインダイレクトマウント構造が採用されている。一方、基礎ブレーキ装置としてはマーク2客車用B4台車で標準であった踏面ブレーキより効果的に減速が可能で作動音が静かなディスクブレーキが用いられている。これらの改良により、マーク2客車の最高時速100マイル(約160km)に対して、マーク3客車は最高時速125マイル(約200km)での高速運転が可能となった。 配電板や冷房装置などのサービス機器は空気抵抗を考慮して配置されている。冷房装置のエバポレーターや圧縮機といった機器類をマーク2客車では屋根上と床下に分散配置したのに対し、マーク3客車では床下に集中配置している。照明やエアコン関係の装備品は、製造当初からシーリングパネルによって覆われている。 この他の新機軸(正確にはマーク2F客車で先行採用)としては、床の圧力パッドを踏むと作動する、気圧作動式の自動貫通扉が採用されたほか、デッキの乗降用外開き式ドアにも集中制御式の自動ロック機構が装備されている。 エアコンや照明などの電気機器類は三相交流415/240V・50Hzの電源で駆動するが、電源供給方式はHST用と一般機関車用とで異なる。HST用では上記の電圧・周波数の三相交流電源を、両端の動力車に搭載した補助発電機から供給する。一般機関車用では機関車から給電される(客車内電気暖房用として一般的な)直流/単相交流1,000Vを、床下の電動発電機で三相交流式 415/240V 50Hzに変換してから各種車内機器に供給する。また、HST用のマーク3客車については、連結器の左右にバッファー(緩衝器)が配置されていないのも特徴である。 マーク3A客車には寝台車(SLE車)も存在しており、マーク1客車(英語版)の寝台車の後継として202両が生産され、現在でもナイト・リビエラとカレドニアン・スリーパーの各列車で運用されている。 後期型のマーク3B客車は、西海岸本線の列車に1等座席車増結用に製造された。基本構造はマーク3A客車の1等座席車同様ながら、照明やシートなどの内装が改良されている。また、機関車を連結した側とは反対側の編成末端部に連結してプッシュプル運転を行うための制御荷物車(英語版)(以下:DVT)も同時期に開発・製造されている。なお、DVTの運転台より後方が客車ではなく荷物車とされているのは、当時のイギリスの法律で最高時速160km以上で走行する列車の先頭車への乗客の乗車が認められなかったためである。
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