自動車用燃料
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 06:52 UTC 版)
近年、石油の代替燃料としてのエタノールの自動車用燃料用途に注目が集まっている。こうしたエタノール燃料はサトウキビやトウモロコシなどの植物、いわゆるバイオマスから生成されるものであり、バイオマスエタノールとよばれる。 自動車の登場期にすでに燃料として使われており、フォード・モデルTもエタノールの燃料使用が当初は考慮されていた。アメリカ合衆国(米国)では、1920年代にゼネラルモーターズが石油会社と共に(会社の利益となる)有鉛ガソリンの普及を推進するようになったため、以降ほとんど使われなくなった。 「トマス・ミジリー#エチルの発見」も参照 フランスでは、1920年代から1950年代頃にかけて砂糖大根で作ったエタノールをガソリンに混ぜて使っていた。石油が安価に手に入るようになると、ほとんどの国ではエタノールを使わなくなった。しかし、ブラジルでは、1973年の石油ショックによる原油価格の高騰に対処するため、政府が1975年からプロアルコール (Proalcool) 政策を実施し、自国で豊富にとれるサトウキビから生産できるエタノールをガソリン代替にすることを進めてきた。1977年にフォルクスワーゲン・ブラジリアを皮切りに導入され、既にブラジルでは年間に販売される新車の半数以上がエタノール燃料に対応した車となっている。2003年よりブラジルでのガソリンに対するエタノール混合率は25 %となっている。 米国でも、1970年代から中西部のとうもろこし生産地帯においてエタノール混合率10 %のガソリン「ガソホール」が販売されてきた。1990年代になると、クリーンエア・アクト(大気浄化法)にもとづき、エタノール混合に優遇措置がなされた。これらは米国では農業生産者が政治に対して力をもっているからなしえたことでもあった。2000年代になり、米国内では、州によって状況が異なるが、通常E10とよばれる10 %混合ガソリンが広く販売されるようになっている。しかし、すべての米国人がその実態を知っているとはいえない程度である。エタノールとガソリンの混合燃料(フレックス燃料)に対応した車(フレックス燃料車)の販売も増加している。通常の米国車は基本的にE10対応となっており、普通にガソリンをいれていると思いながらE10フレックス燃料をいれているようなケースも実際には多く、使用者の意識がなくともフレックスを使用している場合がある。米国ではフレックスに対応している車はE10対応、E25対応とよばれるが、E10対応はすでに標準であり、フォードではE85というような車も販売をはじめている。 日本においては、実験を進めていた経済産業省が、コストの観点から日本国内での生産よりも輸入によることによる普及促進を狙い、2006年(平成18年)2月にブラジルの国営石油会社ペトロブラスと日本の日本アルコール販売の50 %出資で、「日伯エタノール」を設立した。2007年(平成19年)2月時点で経済産業省の政策に対し石油会社の協力が得られておらず、ガソリンとの混合およびその販売にはまだ明確な道筋が立っていない。日本の法制度上では、過去にメタノールが主成分のガイアックスを高濃度アルコール燃料と名指しした上で事実上の販売禁止令を発布した経緯があり、その際に自動車部品への安全性を確保する基準とされた「アルコール添加量3 %以下(E3相当)」という文面が現在でも法的根拠として残り続けていることや、「高濃度アルコール燃料」に対する過度のバッシングによる悪印象が未だ尾を引いている事から、E3以上の濃度のアルコール燃料の普及の目処は全く立っていないことが現状である。 モータースポーツのインディカー・シリーズでは2007年より98 %エタノール燃料(飲用防止と発火を目視できるように2 %のガソリンを混ぜてある)を使用している。 詳細は「アルコール燃料」を参照
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