アルコール添加(あるこーるてんか)
アルコール添加
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 15:45 UTC 版)
上槽の約2日前から2時間前にかけて、30%程度に薄めた醸造アルコールを添加していくこと。 「アルコール添加」または略して「アル添(アルてん)」という語感から、工業的に何か不純な添加物を加えるかのようなイメージをもたれることが多い(参照:当記事内『美味しんぼ』)が、古くは江戸時代の柱焼酎という技法に遡る、伝統的な工程の一つである。次のような目的がある。 防腐効果 現在のアルコール添加の起源である江戸時代の柱焼酎は、酒の腐造を防ぐため焼酎を加える技法であった。かつては防腐効果がアルコール添加の最も重要な目的であった。衛生管理が進んだ現代では、こうした意味合いは薄れてきている。シェリーやポートワイン等の酒精強化ワインも、同じ目的でアルコール添加を行っている。 香味の調整 現在のアルコール添加の目的の第一はこれである。適切なアルコール添加は、醪からあがった原酒に潜在している香りを引き出す。特に吟醸系の酒の香味成分は、水には溶けないものが多く、それを溶かし出すためにアルコール添加が必要となる。そもそも吟醸酒自体が、アルコール添加を前提として開発された酒種であった(参照:日本酒の歴史#吟醸酒の誕生)。吟醸酒を生産する酒蔵では、アルコール添加は酒質を高めるために必須と考えているところが多い。 味の軽快化 現在のアルコール添加の目的の第二。醪(もろみ)の中には、発酵の過程で生成された糖や酸が多く含まれており、これらを放置しておくと、完成した酒が、良く言えば重厚、悪く言えば鈍重な味わいになる。ここでアルコール添加を行っておくと、それらが調整される。また純米酒はその性質上、多かれ少なかれ酸味が飲んだ後に残る。アルコール添加により酸味が抑えられ、飲み口がまろやかになる。さらに、現代の食生活では旨み・油が多用され、飲料としては軽快な味わいのものが求められるようになってきたために、酒の切れ味を良くするために、アルコール添加が活用されている側面もある。 増量 三増酒の全盛時代には、酒の量を水増しするために行われた。「『アル添』という工程が、一般的に悪いイメージを持たれるのには、主にそうした前の時代の負の遺産である」と言い訳されることもあるが、「実際に『アル添』された酒は、臭みが増す」との声もある。 添加するアルコールの原料を日本国内産の酒米に限り、品質の高さやトレーサビリティをアピールする取り組みもある。
※この「アルコール添加」の解説は、「日本酒」の解説の一部です。
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