緊急避妊薬市販
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/04 05:55 UTC 版)
「緊急避妊薬」も参照 経口妊娠中絶薬は1988年にフランスなどで初承認された。アメリカ、イギリス、スウェーデン、オーストラリア、タイ王国、台湾、インドなど65カ国以上で認可され、WHO必須医薬品モデル・リストに指定されている。中華人民共和国では1988年に、チュニジアでは2001年に、アルメニアでは2007年に認可された。2021年時点で認可国は70か国以上となっている。 日本 外科手術を必要としない、より苦痛の少ない中絶を可能にする経口妊娠中絶薬は、日本では厚生労働省に市販が認可していない。インターネットを通じて購入した中絶薬を使った女性が、大量に出血するなどして受診した事例から、個人の輸入を制限し、使用しないよう呼びかけている。 日本は妊娠を回避する緊急避妊薬(アフターピル)「ノルレボ錠」は医師の診断なしには処方されずかつ約15000円と高価であるため、「意図しない妊娠のリスクを抱えた全ての女性は、緊急避妊薬(アフターピル)にアクセスする権利がある」とする世界保健機関の勧告に逆行している。なお2019年にジェネリック薬「レボノルゲストレル錠」が適用となり約9000円で処方可能となった。 2020年3月から5月にかけて、新型コロナウイルス感染症拡大予防のためにとられた全国での一斉休校において、学校や部活も無くなり自宅にいる中高校生が性行為の機会を持ち望まない妊娠に至ったり、妊娠の不安を感じたりしてこうのとりのゆりかごを設置する慈恵病院(熊本市)の妊娠相談窓口に、過去最多の中高生からの相談が寄せられている。 この状況に対し緊急経口避妊薬の市販化への議論が高まったが、日本産婦人科医会の前田津紀夫副会長は「日本では若い女性に対する性教育、避妊も含めてちゃんと教育してあげられる場があまりにも少ない」「“じゃあ次も使えばいいや”という安易な考えに流れてしまうことを心配している」と2020年7月にNHKでコメントし、物議を醸した。 これとは対比的に、富山市では、10代の人工妊娠中絶率はこの5 - 6年、女子の人口1000人あたり1人前後の割合で推移している。対して全国平均は6人前後で、福岡県や沖縄県などは10人前後となっている。1990年代に女子高生等の性が商品化され、全国で人工妊娠中絶が急増したことに危機感を抱いた産婦人科医と富山市は協力し、1991年から性教育の出張授業を始めた結果となっている。性教育とは危機管理を学ぶことという意識で教育が行われている。 アメリカ合衆国では、大学校内の自動販売機でこの薬が購入できる一方、日本において人工妊娠中絶は病気でなく、自由診療で相場は15万円前後であるため、緊急避妊薬が容易に手に入るような環境が広まると、結果として産婦人科医の人工妊娠中絶の件数減少により、クリニック収入が減ることを医師が懸念する可能性を指摘する意見もあり、中絶が「罪人に対する処罰」であり産婦人科医の「いい金づる」との批判的意見がされている。 一方で、産婦人科医からは中絶薬を使用することで起こる不正出血を防ぐための入院もあり得るとして、開業医の収入は減らず女性自身の負担が増加する可能性を述べる者もいる。世界で承認されている、子宮内避妊システムの小さいものの利用、腕に入れるインプラント、皮膚に貼るシールの利用を含め「産む・産まない」の選択を女性自身が決める「リプロダクティブ・ヘルスアンドライツ」の権利が尊重される必要がある。 カナダに拠点をおく非営利団体「ウィメン・オン・ウェブ」(WoW)はオンライン診療を通して日本人女性にも避妊薬・妊娠中絶薬を処方しており、メールは日本語でも可能である。厚労省によると、WoWを通じて処方を受ける場合には制度上「個人輸入」にあたり医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき医師の診断書や指示書が必要になるが、国外の医師の処方せんもこの指示書にあたるため問題がないとされる。しかし、本人を含む、母体保護法指定医以外の人が中絶をした場合、刑法上の堕胎罪に当たる可能性があることも報道されている。この団体代表者レベッカ・ゴンパーツ医師は、社会権規約(ICESCR)に批准している日本政府には、避妊薬、その他の避妊方法、緊急避妊薬、中絶薬を含むWHOの必須医薬品を確保する義務があるため、日本の女性たちには中絶薬を使う権利を持ち中絶薬は安全であり世界中で使用されていると表明している。日本からWoWに連絡をした女性たち、支援を受けた女性たちは年々増加し、2011年から2020年までに合計4175件の相談件数と、2286件の避妊薬・妊娠中絶薬の発送件数があった。 岡山県津山市で住宅団地の浄化槽から乳児の遺体が見つかった事件では、岡山県警はベトナム国籍の女性技能実習生について死体遺棄容疑で4月16日に逮捕し処分保留で釈放したが、5月に堕胎容疑で再逮捕している。実習生のため妊娠が発覚したら帰国させられると思った末の犯行だった。 しかし彼女がもしベトナムにいたとしたら中絶費用は妊娠初期で500円弱、中期でも1万円強。貧困地域や遠隔地では無料であった。今でも日本では堕胎罪、妊婦自身が行った場合には自己堕胎として罪に問われる問題がある。
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