純古生物学と地質学への貢献
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「フランツ・ノプシャ」の記事における「純古生物学と地質学への貢献」の解説
化石に関する学術論文を35年間で100編以上発表したノプシャは、「恐竜の骨格へ肉付けすること」を試みた最初期の古生物学者の一人でもあり、これは彼が成し遂げた古生物学分野への(そして純古生物学分野への)最大の貢献のひとつでもある。その当時、古生物学者たちは見つかった化石を如何に組み立てるかばかりに注力していたが、ノプシャは化石から恐竜が生きていた時の生態を推定しようと試みた。恐竜が現代の鳥類ように子育てをし複雑な社会的行動をとっていたとも提言しているが、この考えは1980年代になるまで理解を得られなかった。恐竜の生態に注目した研究を行った最初期の人物であることから「純古生物学の父」とも呼ばれたノプシャであったが、自身では生理学と生物学から発展したこの学問を paleophysiology (古生理学)と名付けている。 この他にもノプシャは、鳥類は恐竜から進化したものとし、飛翔の起源は走行にあるとする説を時代に先駆けて唱えた。ノプシャは、鳥類の祖先はプロアビス (Proavis) という、前肢を地面に着かないよう持ち上げて走行し、跳躍の際に羽ばたいた動物であり、この働きを助けるため前肢には羽毛が発達し、結果として空を飛ぶことができるようになったと考えた。この説は1960年代に注目され広く受けいれられたが、後に発見された樹上性の羽毛恐竜の化石調査結果から、飛行能力の獲得はノプシャが思い描いていたよりももっと複雑なものであったと考えられている。また、ノプシャは、中生代の爬虫類の少なくとも一部は温血動物であったと主張したが、この考えは今日古生物学界で広く共有されている。 ノプシャが研究したのは主にトランシルヴァニア産の恐竜であったが、それらは世界の他の場所で見つかった「いとこたち」よりも小型であった。例えばノプシャが発掘し名付けたマジャーロサウルスは通常15メートルから30メートル以上にもなる竜脚類の恐竜であるもかかわらず、全長6メートルほどしかない。地質学者でもあるノプシャは、この化石の見つかったエリアは中生代にはハツェグ島(現在ではルーマニアのハツェグ盆地)という島であったと推論し、島という資源が限られた環境に対応するため、世代を重ねるごとに体の大きさが小さくなる島嶼性矮小化という現象が恐竜にも起きたとする説を提唱した。このノプシャの島嶼矮小化説は当時はほぼ無視されたものの、後にハツェグの恐竜が欧州だけでなくアジアや北米で発見された恐竜に比べても小型であることが確認されるなどした結果、今日では広く受け入れられている。なお近年ドイツ北部でも小型竜脚類エウロパサウルスが発見されている。 1926年には、恐竜の性的二形説も発表した 。なかでもハドロサウルス科種について、頭蓋隆起があるものはオス、ないものがメスと提唱したが、実際のところノプシャが比較した化石は別々の場所、別々の年代から発見された化石であることが指摘されている。 1930年代には、化石となった骨の組織構造を顕微鏡で調べることでその個体の死亡時の年齢を推定できることを示す論文を発表し、北米大陸で発見された新種の恐竜とされる化石が実は既知の種の若い個体であることを指摘した。骨の組織学的研究は現在の古生物研究でも行われ、2010年には独・米・ルーマニアの研究チームがマジャーロサウルス化石は成体に達したものであることを確認し、ノプシャの島嶼矮小化説を裏付ける結果ともなっている。 ノプシャが存命中に発見し、命名した種には次のようなものがある。1899年に命名したモクロドン・ロブスタス Mochlodon robustus 」は、1915年ラブドドン・ロブスタス Rhabdodon robustumに改名している。ストルティオサウルス Struthiosaurus transylvanicus も1915年に。テイヌロサウルス(Teinurosaurus、尻尾の伸びたトカゲ)は1928年にノプシャが命名した種である。この他、古代のカメに「カロキボティオン・バジャジディ Kallokibotion bajazidi」と名付けている。この名の意味は「バヤジッド Bajazid の美しい箱」だが、 その由来は甲羅の形がバヤジッドの尻の形を思い出させるからであった。 ノプシャは地質学者としても重要な人物で、バルカン半島西部、特にアルバニア北部の地質研究を史上初めて行った学者のひとりである
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