積極的財政政策
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積極的財政政策は、公共投資の増加や国民や企業への現金給付や減税を通じて有効需要を増大させることで、GDPの拡大や失業率の低下を図ると同時に民間経済活動の生産性向上を支援するものである。財政拡大や減税にあたっては、政府が財政赤字の拡大を厭わず税収を大きく超えた支出を行うことが必要になる。管理通貨制度を持つ国では財源の制約がないため、制度上は経済状況に応じて柔軟な財政拡大が可能となる。逆に景気が過熱すれば緊縮財政政策を行い、公共投資を減少させたり事業期間の延長で財政拡大を抑制したり、増税によって消費やバブルを抑制して、景気変動の幅を小さくしようとする。 マリネア・S・エクルズ元FRB議長は「財政政策は民間の信用が拡大している時だけ緊縮し、民間活動が低下している時だけ拡大すべきである」と主張していた。 経済学者のケネス・ロゴフは「世界不況に陥るかもしれないという場合に、必要な政策には積極的なマクロ経済政策が含まれる。財政政策は減税とインフラ投資に焦点を合わせるべきである」と指摘している。
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積極的財政政策
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古典理論家は、伝統的に均衡の取れた政府財政を熱望してきた。これにたいし、ケインジアンは、そのような政策は基礎問題を悪化させると信じている。ケインズの考えは、金融政策とともに、一度的に財政赤字を招いても、積極的な財政支出を行なえというものだった。 ケインズは、購買力が十分でないことが不況の原因であるというフランクリン・ルーズベルトの考えに影響を与えた。彼が大統領職にある間、ルーズベルトはケインズ経済学のいくつかの政策を採用した。1937年以降、深刻な不況の中で、財政縮小に続いて米国経済が景気後退すると、その考えはとくに強まった。しかし、多数の目には、ケインズ政策の真の成功は第二次世界大戦の始まりにあった。大戦は、世界経済に一撃を与え、不確実性を取り払い、破壊された資本の再建を強要した。ケインジアンの考えは、大戦後、ヨーロッパでは社会民主主義政権のほとんど公式の政策となり、1960年代には米国においてもそうであった。日本でも、戦後、1990年代まで同様であった。 ケインズの展開した理論は、積極的な政府政策が経済運営に有効であることを示している。政府財政の不均衡を悪と見るのでなく、ケインズは反循環的(counter-cyclical、景気循環対抗的)財政政策と呼ばれるものを提唱した。それは、景気循環の良し悪しに対抗する政策である。すなわち、国内経済が景気後退に苦しんでいるとき、あるいは景気回復が大幅に遅れているとき、あるいは失業率が長期にわたり高いときには、赤字財政支出を断行し、好景気のときには増税や政府支出を切り詰めるなどしてインフレーションを押さえ込むという政策である。市場の諸力が問題を解決するには長い時間がかかるが、「長期には、われわれは死んでしまう」から、ケインズは政府が短期に問題を解決すべきであると論じた。 この考えは、古典派および新古典派経済学における財政政策の分析と対照的である。財政支出による刺激は生産を活性化させることができる。しかし、これら経済学にとって、この刺激が副作用をしのぐものと信ずる理由はなかった。古典理論家は、赤字財政が民間投資を押し出す(crowd out、クラウドアウト)ことを恐れた。その径路は二つある。第一は、財政刺激によって労働需要が増大し、賃金が上昇し、それが利潤獲得を阻害すること。第二は、政府部門の赤字が政府債券の総量を増大させることによる。そうなると債券の市場価格が低下し、利子率が高騰し、産業界が固定資本を投資する費用を割高なものにしてしまう。このように、経済を刺激しようとする努力は、それ自身を無効にするものでしかない。 ケインジアンはこの点につき、次のように応答する。このような財政政策は失業率が自然失業率(NAIRU, インフレを加速しない失業率)が持続的に高いときにのみ適切である。この場合、「押し出し」効果は極小にとどまる。さらに、逆に民間投資が引き込まれる(crowded in)可能性もある。財政刺激は企業部門の産出量を引き上げ、それが企業のキャッシュフローと採算性を引き上げ、企業部門の楽観的気分をかもし出すかもしれない。ケインズにとって、この加速度効果は、当該状況においては政府と企業部門とは代替的関係ではなく補完的関係にあることを意味した。 第二に、刺激によって総生産が引き上げられる。それによって、貯蓄総量を引き上げ、固定資本への投資を増大させるための資金調達を助ける可能性を増大させる。最後に、政府支出は、つねに浪費的であるとは限らない。利益追求者によっては供給されない公共財への政府投資は、民間部門の成長を促進するかもしれない。言い換えれば、基礎研究や公衆衛生、教育、社会基盤などへの政府支出は長期には潜在産出量を増大させることに貢献する。 ケインズ理論においては、財政拡大が正当化されるためには、労働市場における相当な供給過剰の存在がなければならない。 批判者の多くが特徴付けるのと違って、ケインズ主義は赤字財政支出からのみからなっているのではない。ケインズ主義は、景気循環対抗的な政策を奨励している。その一例は、需要サイドの過剰な成長がある場合には、経済を冷却しインフレを防止するために増税し、経済が下向いているときには雇用を刺激し賃金を安定化させるために、労働集約的な社会基盤整備に赤字支出することである。古典理論は、逆に、財政が収入超過の場合には減税し、景気後の下降期には財政支出を切り詰めたり、あまり行なわれないが増税せよと、要求している。 ケインズ経済学者は、好景気に減税を通じて利潤や所得を増加させることや、景気下降期に財政支出削減により経済から所得や利潤を引き上げると景気循環を悪化させてしまうと考える。このような効果は、政府が経済の大きな部分を占める場合には、とくに大きくなる。
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