破綻の原因と破綻後の地域への影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 12:29 UTC 版)
「林原 (企業)」の記事における「破綻の原因と破綻後の地域への影響」の解説
林原の前専務であった林原靖の著書によると、林原の破綻の原因として一般に流布された内容は更生法の早期終結のためのストーリー的な意味が大きかったという。すなわち「管財人側はあくまで〝戦略〟として誇大宣伝をし、公平・中立な立場ではなく、単なる〝作戦〟として情報を流していた」が、マスコミ各社は「巨額な損害賠償請求、形だけの第三者委員会の諮問内容などを、そのまま事実のごとくセンセーショナルに報道していた」という。また旧経営陣もスポンサーへの高値売却を目的として、不愉快ながらもそのストーリーに乗っていたという。それは「経営者は違法まみれの極悪人だが、会社は殊の外すばらしかった。銀行は完全な被害者で、経営者を丸裸にしておっぽり出してしまえば、残るのはすばらしい会社のみ。巨額を投資しても借金ゼロで、新経営者は驚異的手腕だと高い評価が受けられる……(中略)この三文芝居を理想的な結末までもっていくには、どうしたってわれわれ旧経営陣は一時的に「悪役」を演じきるしかない。しかし、この汚れ役は(旧経営陣にとって)、まことにきびしいものであった。」という内容である。 粉飾決算に先立つ破綻の原因として、専らインターフェロン・吉備製薬工場への巨額の研究投資向けの借入金、およびそれに伴う金利の発生が原因で膨らんだ最大期で約1700億円の負債が原因であり、「粉飾の根っこはただひとつ、子会社の林原生物科学研究所である。この研究所が恐るべき“金食い虫”だった」と述べている。また研究投資は「マスコミや世間が〝モデル・ストーリー〟としての基礎研究をいかに称賛したとしても、株式非公開・銀行借り入れ中心の経営下では、あまりにリスクの高い仕事であった」としている。 その他の原因として、破綻を直接招いたキーとしてメインの中国銀行と、サブの住友信託銀行の一連の対応をあげている。 メインバンクの中国銀行は住友信託銀行の岡山支店長に呼び出されたときから、あるいは西村あさひ法律事務所を巻き込んだときから、実現性も少ないADRの掛け違いをし、民事再生の可能性を閉ざし、また債権者のとりまとめに関してもリーダーシップをほとんど発揮できず、結果的に破綻劇の幕を開けてしまったという。 なお西村あさひ法律事務所の森倫洋弁護士から林原靖に郵送されてきた質問への回答書には「はじめに中国銀行からは債務整理を依頼された」と書いてあったという。つまり中国銀行はADRを行わせるために西村あさひ法律事務所とPWCを会社に入れたのではなく、最初から会社更生法の基本シナリオを共有していた西村あさひ法律事務所を「会社の中に引き込むために」ADRを口実として、債権者たる他の銀行をも騙していた疑いが強いという。さらに中国銀行は金融庁の指示に反して、林原の持つ大量の自社株担保の事実を外部に知らせず隠蔽していた疑惑、林原創業家の持つ自社株TOBの前後に奇怪な業績発表を繰り返し、風説の流布により市場操作と価格操作をなした疑惑があげられている。 また住友信託銀行の対応は、ADR会合で他行が口を揃えて糾弾したとおり、場当たり的でかつ感情的とも思える強引なものであり、現状のサブ・バンクでありながら、土壇場になると他行を尻目に詐害行為におよび、また他行から集中攻撃を受けても〝出口論〟を変えようせず、さらに中国銀行との間で、いったんはADRでいくことを了解しながら、実際はそれを反故にするような行動を行い、結果的に私的整理の可能性を自ら閉ざしてしまったという。 林原靖は同じく著書で、破綻後の影響として、「岡山駅前の広大な土地も県外資本に安く売却されてしまい、海外から岡山をめざした多くの訪問者も消え、技能の伝承と、正社員採用にこだわった独自の創造的な雇用機会も失われた。地域の権益と発信力を守ってきたさまざまな防波堤が、あっという間に壊されてしまったのだ。結局、大山鳴動してネズミ一匹、大騒ぎをした割に得るものは何もなかった」と結んでいる。 なお2015年(平成27年)1月、長瀬産業創業家からの出向であった長瀬玲二が株式会社林原の代表取締役を辞任、同時に長瀬産業でも代表取締役専務を辞任し代表権の無い副会長となった。なお同時に長瀬産業本体の長瀬洋社長も、長瀬産業代表取締役社長を退き代表取締役会長職に着いた。 その後2015年4月に長瀬玲二の後任の林原の代表取締役社長となった森下治は2018年3月31日に退任し、後任に副社長の安場直樹が就き、現在も代表取締役社長を務めている。長瀬産業の買収後は、長瀬玲二は3年、森下治は3年という短期政権が続いている。 長瀬玲二は林原関係では林原美術館の代表理事のみ2016年2月現在就任している。
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