発展・応用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/19 13:52 UTC 版)
シクロデキストリンは、疎水性の内孔を有する環状分子であり、水溶媒中において疎水性分子を取り込む性質を利用する。したがって、一般的にシクロデキストリンをもちいるロタキサンの合成は水溶媒中で、疎水性の軸分子とおこなう。原田明らは軸分子として高分子に着目し、シクロデキストリンとポリエチレングリコールとを用いることで、ポリロタキサンを世界に先駆けて合成した。この研究はナノチューブへの展開もなされている。また、導入する環状分子として、シクロデキストリンの二量体をもちいた環動ゲルの合成が、伊藤耕三らを中心におこなわれている。環動ゲルは、その応用研究が進められ、携帯電話や自動車の表面塗装として実用化されるにまでいたっている。類似のシクロデキストリンとポリエチレングリコールを基盤とするロタキサンおよびポリロタキサンの研究は多い。 クラウンエーテルはカチオン性の分子をその内孔に取り込む性質がある。したがってクラウンエーテルはカチオン性の軸状分子とロタキサンを形成する傾向がある。これはイオン性の相互作用を利用する方法であるので、一般的に低極性の溶媒中で反応が行なわれる場合が多い。広範な研究を行っているのはフレイザー・ストッダートらであり、彼らは24員環のクラウンエーテルが、二級アンモニウム塩を低極性溶媒中で効率よく包接することを利用して、この部分構造を用いたより高次のロタキサン合成も達成している。代表的な応用例として、分子エレベーターがある。シクロデキストリンの場合と同様な概念によって、ゲルの合成にも利用されている。 現在報告されているもっとも小さなロタキサンは、21員環クラウンエーテルと二級アンモニウム塩によって形成されたものである。 シクロファン(環状分子の中に芳香環を有する化合物の総称)で、ロタキサン合成によく用いられるものとしては、パラコート型と呼ばれる、ビスビオロゲン環状分子がある。この分子はおもにπーπスタッキングによって、電子不足な芳香環を包接する特徴があるので、これをもちいたロタキサン合成がよく行われている。第一人者はストッダートであり、彼はこの分子のことをBlue boxと呼んでいる。代表的な応用例として、分子シャトル、分子モーター、分子バルブ、分子筋肉などがある。カテナンの例ではオリンピーダンなどがある。 ロタキサンやカテナンは、構成分子の相対的な位置関係によって複数の状態を持ちうる分子であるため、単分子スイッチとして分子コンピュータへの応用が期待されている。またドラッグデリバリーシステムや分子チューブ、分子筋肉、ゲル、触媒、機能性表面、分子バルブなどへの応用研究もなされている。また、棒状分子上を環状分子が移動できることに着目した分子シャトルがあり、分子マシンとして研究されている。分子シャトルを初めて発表したのはストッダートらであり、1991年に米国化学会誌に発表された。その後、1994年にネイチャー誌にその制御が発表されて以来、多くのグループによって研究が進められている。初めての米国化学会誌に発表された分子シャトルは、軸状分子の上を環状の分子が熱運動するだけのものであったが、それが応用されてNature誌に投稿されたものでは、軸状分子の電気化学的あるいは化学的な酸化還元反応を駆動力として、環状分子の軸状分子に対する位置関係が制御されている。現在では可視光を照射すると、ロタキサンの軸状分子上を環状分子が左右にシャトリングし続ける分子モーターの研究にまで発展している。この分子モーターは、可視光の照射を止めると環状分子の動的な挙動は停止して、あるステーション上に環状分子が位置するようになる。これら以外にも多くの分子シャトルが今日では合成されており、それを駆動する外部刺激としては、pH、光照射、電圧の引加、添加物、溶媒極性など、様々なものが用いられている。
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「発展 応用」の例文・使い方・用例・文例
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- 商業を発展させる
- 幹線道路の建設は郊外の発展に寄与するだろう
- 私たちの町の経済を発展させる
- 彼のライフワークは趣味から発展した
- 発展途上国
- 電子工学にいくつかの新しい発展があった
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