異性装の理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/04 13:33 UTC 版)
宗教的祭礼の服装の場合や、遊戯(仮装)の服装の一種、身を隠す手段(変装)として一時的に異性装をする場合もある。 宗教 異性装は宗教儀式の一環として行われることもある。異性に属する神秘的な力を取り込む目的や、神が行った異性装を模倣する目的などがある。 例えば古代ギリシアではヘラクレスに仕える神官(男性)はヘラクレスに倣って女装を行った。 稚児にさせるかむろも幼年時の男児を女性とも取れる中性的な容姿にすることで、このような魔物から守る例から派生したと考えられている。 女性が男装をして舞う白拍子は宗教的行事のみならず芸能にも通じる。 他にも、男児に女装させる百石踊り(兵庫県三田市の駒宇佐八幡神社)という雨乞い神事、村の長男に女装させる福島県会津美里町の早乙女踊り、男児が早乙女姿で田植えする諸田山神社(大分県国東市)の御田植祭り、氏子の男子が巫女装束で舞いを奉納する玉置神社(奈良県十津川村)例祭、稚児に女装させ舞わせる白鬚神社の田楽(佐賀市))などが挙げられる。その多くが元服前10歳から15歳前後以前の男子や男児に女装させる神事が日本各地に存在する。 近代日本では大本教教祖(正しくは男性聖師)の出口王仁三郎がしばしば女性装を行っていた。 女性の生命を生み出す力を取り込むための女装は原始宗教の中に広く見られる。 また、魔物に子供をとられないように、と、子供に異性装をさせるケースもある。これは魔物が目当ての子供を見つけられない、と考えて行われた。地域によっては病弱な子供だけ、という場合もあったようである。簡略として、男の子の髪型を垂髪にする、という場合も合った(南方熊楠がこれをやらされていた)。 アメリカでは、文化と宗教上の理由により、男子は6または7歳になるまで、社会規範としてジェンダーニュートラルな衣類、白いドレスなどの女子用の子供服を着せていた。その一例が、第32代アメリカ大統領、フランクリン・ルーズベルトの2歳半で撮影された幼少期の写真であり、当時の社会的慣習により、男の子は6歳か7歳まで女の子として扱われ、白いドレス、パテントレザーの靴、羽の帽子と長い髪といった中性的な衣装で過ごしていた。 芸術 何らかの事情により女性(もしくは男性)が役者として起用できない場合、その代替を異性装をした男性(もしくは女性)が担うことがある。こうした異性装を用いた上演は単なる代替にとどまらないその独特の美を高く評価されることもあり、後述する歌舞伎や宝塚歌劇団などには多くの支持者が存在する。 例えば歌舞伎は、いわゆる女歌舞伎が禁止された歴史があり、伝統的に男性のみで演じられるため、女形と呼ばれる女性を演じる役者が必要となった。また、宝塚歌劇団など女性のみで演じられる少女歌劇においても男性役を演じる男役が存在する。中国の京劇や越劇も異性装の使用で有名である。このように商業的に確立している演劇ジャンルのみならず、男子校・女子校などにおけるアマチュアの上演でも異性装を用いた上演はしばしば行われている。 上記のような男性のみ・女性のみの劇団でなくとも、固定的なキャスティングを打破して新しい表現を試みるなどの理由で男優に女性役を割り振ったり、女優に男性役を割り振ることもある。映画『アイム・ノット・ゼア』においてボブ・ディランとおぼしき人物をケイト・ブランシェットが演じた例などが有名である。映画『1999年の夏休み』では、少年役を全て少女が演じ、カルト映画として熱狂的なファンが存在する。また、シェイクスピアの恋愛喜劇『十二夜』や映画『トッツィー』などに見られるように、プロットの上で主要登場人物が自分の身元を隠すために異性装を行うこともある。 ドラァグ・クイーンやいわゆるヴィジュアル系バンドの一部をこの例と見る論がある。ただし、後者の例では異性の服装をただのファッションとして着用しているため、これは異性装には含めない場合の方が多い。 犯罪捜査・検挙 犯罪の捜査や検挙において、女装を行うことで目的を達しようとする手法も存在する。男性巡査が女装をし、いわゆる囮となってひったくり犯を検挙する試みが愛知県警により行われた。 遊戯行為 変身願望や、余興としての仮装(コスプレ)や他者への道化などによって、異性装を行う場合がある。この場合も、行為者は自分が異性装を行っていると自覚していることも多い。
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