生活機能分類(ICF)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/28 14:16 UTC 版)
「リハビリテーション」の記事における「生活機能分類(ICF)」の解説
疾病や外傷で起きる障害を把握する指標としてWHO は国際疾病分類(ICD)を補完するものとして1980年に国際障害分類(ICIDH)を発表した。しかしICIDH は医学モデル(疾病や外傷が身体の機能障害を招き、これが日常生活の能力を障害し、社会生活上の不利を招くとする思想で、障害は疾病と同様に個人の問題だとする立場)による分類であることから、これを改訂して社会モデル(障害は社会の様々な障壁に制約されて作られたものだから、完全参加が可能な環境の変更を社会全体の共同責任で取り組むべきだとする立場)による概念を含んで、両者を統合したモデルである国際生活機能分類(ICF)を2001年に作成した。 ICFの目的は①健康状況を研究する科学的基盤の提供、②健康状態を表現する共通言語の提供、③国家・職種・時根の相異に影響されないデータの比較、④健康情報システムに用いるコードの提供だとされている。 ICFの最大の特徴は、個人の生活機能はその人の健康状態だけで決まるものではなく、社会と個人の背景因子との双方向的な相互作用によって決まるものであるとしたことである。さらに大きな特徴は分類を(1)生活機能と障害、(2)背景因子の2部門に大別し、(1)生活機能を ①心身機能と構造、②活動と参加の2構成要素に分け、(2)背景因子として、環境因子と個人因子の2構成要素を掲げたことである。ICFのもう一つの特徴は、表現を心身機能と身体構造、活動と参加という中立的用語を用い、その障害を機能障害、活動制限、参加制約としたことである。中立的な表現を用いた根底には障害を否定的なものと捉えるべきでないとする立場が窺える。 心身機能には①精神機能、②感覚機能と痛み、③音声と発話の機能、④心血管系・血液系・免疫系・呼吸器系機能、⑤消化器系・代謝系・内分泌系機能、⑥尿路・性・生殖機能、⑦神経筋骨格と運動に関連する機能、⑧皮膚および関連する構造の機能があり、身体構造も同様に8項目に分類されている。 活動と参加は①学習と知識の応用、②一般的な課題と要求、③コミュニケーション、④運動・移動、⑤セルフケア、⑥家庭生活、⑦対人関係、⑧主要な生活領域、⑨コミュニティライフ・社会生活・市民生活がある。 環境因子は5項目で、①生産品と用具(採集・創作・生産・製造された自然あるいは人工的な生産品・装置・器具)、②自然環境と人間がもたらした環境変化(地理、人口、動植物、気候、災害、光、時間、音、振動、空気など)、③支援と関係(日常活動で提供される家族・友人・地域・上司・ボランティア・専門職などの人的支援)、④態度(家族・友人・地域・上司・ボランティア・専門職などの態度)、⑤サービス・制度・政策(消費財・建築・土地・住宅・公共事業・コミュニケーション・交通・保護・司法・団体・メディア・経済・社会保障・社会支援・保険・教育・労働・政治などに関わる)で構成される。 これらの分類は階層的に5段階に細分化される。結果は生活機能が9段階に評価して、小数点以下1桁目を実行状況、2桁目は能力(現時点で発揮できる最高のレベル)をもって評価する。環境因子は阻害因子5段階、促進因子5段階に評価し、小数点以下1桁目を阻害因子、促進因子があれば1桁目に+記号をつけて記述する。個人因子の分類項目はまだ完成されていない。
※この「生活機能分類(ICF)」の解説は、「リハビリテーション」の解説の一部です。
「生活機能分類(ICF)」を含む「リハビリテーション」の記事については、「リハビリテーション」の概要を参照ください。
- 生活機能分類のページへのリンク