現代の研究・評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 03:37 UTC 版)
「死霊解脱物語聞書」の記事における「現代の研究・評価」の解説
明治以降本書が顧みられることは少なかったが、柳田によって全文の印影が、服部によって詳細な紹介と全文の活字翻刻が初めて出版され、さらに高田により本書の包括的解析と再度の翻刻が行われるに至った。それ以後上記本文引用にあるような研究や著作がいくつか発表され、小二田により初めて翻刻と詳細な現代語訳と解説が一般向けにまとめられたことで、近年また新たな「累もの」がアニメや劇で上演されている。さらに物語の底流に、まだ殺伐とした戦国時代の名残の多い当時の村社会の因習と差別に着目するものもある。また累の身の上を女性差別の象徴と見るものや、逆に菊を差別に対抗し憑依を自演して立ち上がるヒロインとしてとらえるものもあるが、「菊が(数え年)十四の春、子の正月四日」の事なので、すでに婿のいる新妻とはいえ、当時菊は満十二歳、今の小学六年生であり、そのようなヒロイン像には無理があるようにも見える。さらにブラッティ脚本の映画エクソシストになった元の憑依事件の様相と脳炎の症状の共通性の指摘を菊の行状に当てはめようという試論もある。しかし本書が祐天の人気、評判を画策するプロパガンダ書として、その目的のため筋書きや登場人物の言動の細部に至るまで綿密かつ巧妙に再構成されたものだとすると、本書に書かれた細部を詮索して別の意味を引き出そうというこれらの試みは、書かれたことが全て事実に基づくという仮定を暗黙の裡に引き入れることになり、それは本書の江戸時代の読者と同じく、現代のジャーナリズムとも比肩しうる「聞書き」スタイルの記述の説得力に乗せられてしまっているという可能性がある。 本書の翻刻・現代語訳(出版年代順)(完全に原本に忠実で正確な現代語訳は未刊) 松崎仁三郎 『実説かさね物語』 祐天寺教化部、1962年。(おそらく最初に活字化された本書の現代語訳だが異本の内容も混入) 服部幸雄 「死霊解脱物語聞書」『変化論-歌舞伎の精神史』、服部幸雄、平凡社<平凡社選書41>、1975年。(元禄版・本書の最初の活字翻刻) 高田衛・原道生編 『近世奇談集成』第1巻、国書刊行会、1992年。(元禄版翻刻) 志村有弘 『江戸怪奇草紙』 角川書店<角川文庫>、2005年。(現代語訳だが初歩的誤訳が散見される) 深沢秋男・菊池真一・和田恭幸編 『仮名草子集成』第39巻、東京堂出版、2006年。(元禄版翻刻) 伊藤丈・主編 『祐天寺史資料集』第3巻 大東出版社、2006年。(元禄版、正徳版、正徳版挿絵入り改版、筆写の異本の翻刻) 小二田誠二 『死霊解脱物語聞書-江戸怪談を読む-』 白澤社、2012年。(正徳版挿絵入り改版翻刻、現代語訳、現代語訳は細部まで忠実な訳ではなく、解りやすく補足・詳述し、また省略してある) ウィキソースに死霊解脱物語聞書の原文があります。
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