片目
『三国志演義』第18回 夏侯惇は左眼を射られ、矢を引き抜くと眼球までいっしょに抜けてきた。彼は「これは父母の血だ。棄ててなるものか」と言って、そのまま口に入れ呑みこんだ。
『神道集』巻4-17「信濃国鎮守諏訪大明神秋山祭の事」 奥州の賊・悪事の高丸は、諏訪明神の化身である侍の矢で、左目を射られた。
『南総里見八犬伝』第6輯巻之5第60回 犬飼現八は、夜の庚申山で、馬に乗った妖怪(赤岩大角に化けた山猫)の左目を射る。妖怪は眼瘡治療の薬として、胎児を求める→〔切腹〕2。
『平家物語』巻9「二度之懸」 後三年の役の折、16歳の鎌倉権五郎景正(景政)は、左の眼を射抜かれながらも、返し矢を射て敵を討った→〔片目〕6の『和漢三才図会』巻第65。
★1b.片目を抉る。
『黒猫』(ポオ) 「わたし」は酔って、飼い猫プルートーの片目をナイフで抉り、後には木に吊るして、縛り首にしてしまった。そのことを悔いた「わたし」は、ある夜、酒場でプルートーそっくりの猫を見て、家に連れて来た。しかし翌朝見ると、その猫はプルートー同様に、片目がつぶれていた。
『封神演義』第7回 姜皇后は、「紂王暗殺を企てた」との濡れ衣を着せられて、片目を抉り取る刑を受ける。執行吏が、長さ8寸・直径8分(ぶ)の竹筒を皇后の眼窩に立て、拳で叩くと眼球は飛び出た。
★2.自らの片目をくり抜く。
『ギュルヴィたぶらかし(ギュルヴィの惑わし)』(スノリ)第15章 北欧の主神オーディンは、ミーミルの知恵の泉を一口飲むために、片目を代償にした(『巫女の予言』28に同話)。
『国性爺合戦』初段 明の右軍将李蹈天が、自らの左目をくり抜いて韃靼の使者に捧げる。これは、李蹈天が明を裏切り韃靼に味方する、との合図だった。
★3.片目が抜け出る。
『墓場の鬼太郎』(水木しげる) 幽霊族の最後の生き残り夫婦が山奥から人間界に出てくるが、しばらくして2人とも死ぬ。土中に埋葬された母親の身体から、鬼太郎が誕生する。古寺に放置された父親の死体は腐乱し、片目が抜け出て手足が生え、目玉親父となる。
『用明天王職人鑑』初段・4段目 妖術師伊賀留田の益良の右目が抜け出、小仙人の姿となって空を飛び、さまざまな悪事を働くが、誕生間もない聖徳太子の左の掌から発した光に打たれて、地に落ちる。刀で刺し貫くと、もとの目玉の形にもどった。
★4.神像の目を取る。
『播磨国風土記』揖保の郡浦上の里 神嶋の石神の顔に五色の玉があり、胸に流れる涙があってそれも五色である。昔、新羅の人が石神を見て珍しい宝石と思い、神の顔を壊して1つの瞳を抉り取った。それゆえ石神は泣いているのである。
★5.二人の片目を足し合わせれば一人の両眼と等しい、という計算。
『ギリシア奇談集』(アイリアノス)巻13-24 ザレウコスは、「姦通者はその両眼を抉り取る」との法規を定めたが、彼の息子が姦通罪で捕らえられてしまった。彼は息子が完全に失明するのを救うため、自分の一眼を息子の一眼に代えて抉らせた。
★6.片目の魚。
片目の鯉の伝説 薬師様を祀る慈林寺の坂下に、龍燈の池がある。この池に棲む鯉や鮒や亀は、すべて片目である。それは、目を患う人が薬師様に祈り、病気平癒のお礼として池に放した鯉や鮒が、病人の身代わりに片目になったのである。それゆえ、「この池の魚を釣ったり悪戯したりすると、目がつぶれる」と言われる(埼玉県川口市安行慈林)。
『和漢三才図会』巻第65・大日本国「出羽」 鎌倉権五郎景政が鳥海弥三郎と戦って右眼を射られたが、景政は返し矢を放って鳥海を射殺した(*→〔片目〕1aの『平家物語』巻9「二度之懸」)。景政は眼にささった鏃(やじり)を抜き、鳥海山の麓の川で眼を洗った。それで、この川にいるかじかは、一眼が眇(すがめ。=「つぶれた眼」あるいは「やぶにらみ」)である。
★7.片目の蛙。
片目の蛙の伝説 泰澄大師産湯の池で眼を洗えば、眼病が治る。眼病の者や眼のつぶれた者が大師に願をかけると、大師は蛙の目をもらって人に下さるので、この池の蛙は片目であるという(福井県鯖江市三十八社)。
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