橋本駅 - 極楽橋駅( - 高野山駅)
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「南海高野線」の記事における「橋本駅 - 極楽橋駅( - 高野山駅)」の解説
橋本駅 - 高野山駅間は「こうや花鉄道」の愛称が付けられ、駅名標も通常のものに加えて独自仕様のものが設置されており、各駅の標高が記されている。橋本駅 - 極楽橋駅間は山岳鉄道であり、特に高野下駅以南は50‰の勾配や、制限速度33km/h、半径100m以下の急カーブが続く登山鉄道となっており、21m級の車両は走行できないため、この区間に乗り入れる列車にはズームカーと呼ばれる17m級の中型車両のみが使用されている。 山岳区間、とりわけ高野下駅 - 極楽橋駅間においては完全に線路が山の中に入るために、途中にある駅へは幹線道路からすれ違いの困難な狭い道路や林道があり、車で辿り着くのは容易でない。各駅の周辺の山間部は民家が少なく利用客もきわめて少ないが、すべての駅に簡易型の自動改札が完備され、駅係員も橋本駅および下古沢駅、紀伊細川駅から極楽橋駅のすべての駅に配置されている。橋本駅 - 極楽橋駅間は単線であるが、上古沢駅を除く全ての駅が行き違いのできる交換可能駅である。 上古沢駅と下古沢駅の間には、鉄道橋としては日本で10箇所だけで供用されているトレッスル橋(全長67.6m、高さ33.4m)の中古沢橋梁がある。この橋は、トラス構造とトレッスル橋脚とを組み合わせた鉄道用鋼橋としては日本に唯一現存するもので、2011年に土木学会選奨土木遺産に認定されている。橋の下には、南海電鉄が2010年2月25日に設置した観光用の展望デッキと電車の通過時刻を記した時刻表を備え、トレッスル橋を下から見上げられる。展望デッキまでは上古沢駅・下古沢駅から徒歩20分の道のりである。 九度山駅 - 極楽橋駅間には、橋本駅以南でもっとも長い「椎出トンネル」(九度山駅 - 高野下駅間、399m) をはじめ、大小24箇所のトンネルがあり、このうち高野下駅 - 極楽橋駅間の23箇所には坑口に番号が振られている。 2009年(平成21年)2月6日に紀伊清水駅、学文路駅、九度山駅、高野下駅、下古沢駅、上古沢駅、紀伊細川駅、紀伊神谷駅、極楽橋駅、高野山駅、紀ノ川橋梁、丹生川橋梁、鋼索線が近代化産業遺産(高野山参詣関連遺産)に認定されている。 橋本駅を出ると線路は単線となり、東進してすぐ緩やかな左カーブとなりやや勾配を下る。JR和歌山線は見えなくなるが、やがて大きく右にカーブをして南進を始め、同線および国道24号のガードをくぐると線路は紀の川を渡る。さらに大きく右カーブし西進、ここからしばらくは車窓左側には山々が迫り、住宅地と田園地帯の錯雑が見られるようになる。右側には先ほど停車した橋本駅周辺の市街地を紀の川越しに望む。しばらく進み、国道371号と平面交差すると紀伊清水駅。この付近から右側に国道370号が並走を始める。車窓左側に学文路天満宮、かむろ大師奥之院を見上げると学文路駅。この駅の入場券は、毎年受験シーズンが近づくと、学文路天満宮の祈祷を受けた5枚セットが縁起物として販売される。線路はなおも紀の川に並行して南西に進み九度山町に入り、右・左にカーブしながら勾配を上ると九度山駅である。九度山には戦国武将の真田信繁(幸村)が潜伏していた真田庵があり、九度山駅の駅舎も2015年にそれにちなんだデザインにリニューアルされた。やがて左に大きくカーブをして南進を始める頃から、車窓右側には丹生川の深い渓谷が続き、左側は終点までほぼ完全に山に覆われる。丹生川橋梁で国道370号と美しい渓流の景観が見える丹生川を渡り、椎出トンネルを抜けるとすぐ島式ホームの高野下駅に着く。この駅から先は各駅停車の本数がさらに半減する。 ここから先は急カーブやトンネルの連続区間となり、車窓右側もいくつかの集落が見えるほかは山々に覆われた光景となる。高野下駅を出ると、ゆっくりしたスピードで右へ大きくカーブし、体感できるほどの急勾配を大きな音を軋ませながら上り始める。下古沢駅は2002年に行き違い設備がいったん撤去されていたが、2018年に隣の上古沢駅から移設される形で復活し、交換可能駅となった。やがて中古沢橋梁に差し掛かるあたりからは周辺の集落もほぼ見えなくなり、さながら秘境の様相を呈してくる。2017年の台風21号に伴う地すべりの影響で棒線駅化された上古沢駅を出て2か所のトンネルを通過し、笠木橋梁を渡って3本目のトンネルを抜けた付近で高野町に入り、さらにトンネルを1か所通過すると紀伊細川駅、続く7本のトンネルを経て島式ホームの紀伊神谷駅に至る。最終の4か所のトンネルを抜けて、右側に朱塗りの極楽橋が見えると、鋼索線(高野山ケーブル)との接続駅である終点の極楽橋駅に到着する。ケーブルカーのりばは列車を降りて車止め方向に歩いて突き当たった右側にあり、およそ5分で高野山駅とを結んでいる。 不動谷川(高野下駅 - 下古沢駅間)をズームカーが渡る 終点・極楽橋駅に停車中の特急「こうや」
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