有識者の評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 10:19 UTC 版)
鈴木おさむは、過去のジャンプ作品と比べてテンポが速く、鬼が各々の事情でそうなってしまった経緯を読むことで悪役に対してとてつもない情が湧くとした。 日経エンタテインメント!は、シリアスさもあるがコミカルさも持ち合わせ、吾峠の独特の言葉選び、台詞回しが絶妙なバランスで成立して圧倒的な読後感と早く続きを知りたい渇望感を生み出しているとみる。 島田一志は、友情努力勝利を活かしながらも、雑誌の売り上げのために毎回できる限り盛り上げて強烈な引きで以下次号とする後先考えないのではなく、単行本で読んだときに大きな感動や驚きを与えるように伏線張りするゆとりあるネーム作りがジャンプの方向性になっている可能性を指摘した。 小新井涼は、友情努力勝利に代わって人情堅実救済があり、縁で繋がる人情、特訓は超人的ではなく長男だからという理由で頑張る堅実さ、鬼を倒すことが苦しむ鬼の救済だとして、少年漫画というより朝ドラのような面があり、アニメファンだけでなく老若男女に受け入れられやすい要素があるとする。 伊藤剛は、最近のバトル漫画は戦闘ルールや知略が複雑する中で、本作はシンプルで子供にもわかりやすいが、ジャンプらしからぬ作品でもある。キャラクターデザインや色彩は敵味方双方に気味悪さがあってかつてなら俗悪だと批判されたがそうではない。絵柄の独特さや異質な内容は『進撃の巨人』と似ているが、進撃は閉塞感など説明しやすいものがあるが本作はうまく説明がつかず、炭治郎の鬼への無私の優しさは社会の摩擦を表したのような今までの批評には収まらずイデオロギーを超えたものを感じている。また伊藤は残酷な描写も多いが批判が大きくないのは炭治郎たちのいい子さが全体を明さを添えているためであり、激闘の末に鬼を倒しても手を握り締めたり鬼の武器であった手鞠を亡骸に添えるシーンを例に人と鬼の分け隔てなく優しく接しているからとする。 品田英雄は、悪側の事情に寄り添う作品の特徴はかつてのベトナム戦争への反戦活動により国家への信用低下、それによるアメリカン・ニューシネマのはみ出し者の主人公の生き方が共感を得たり、中国の文化大革命が若者中心で起こり、権威や体制に刃向うことが正義とされた現象と同じで、テレビドラマ『子連れ狼』の一族を殺された拝一刀が唯一生き残った息子、大五郎を連れて剣客として活躍、悪でもみるところがあって否定せず受け入れる物語と通じ、時代が一周して本作が登場、現代は閉塞感やストレスを感じやすい反動で否定しないものを強く求めるのは心理的に必然だとみている。 漫画、アニメ制作側の見方として、2016年10月から2019年3月まで本作の編集を担当した週刊少年ジャンプ編集部の高野健は、アニメをきっかけにファンになった人も多く、吾峠は読者を大切にするためにアンケートの分析を重視、吾峠は嘘がつけず正直な性格であることがハード展開と関係しており、リアルな戦闘を描くために人間が常勝できない鬼の強さにより、実直に世界観が命のやり取りをリアルに描こうとしていることと心に残る台詞、リズムがよくて繰り返しや倒置法の使い方が魅力的で『ONE PIECE』と共通する「言葉の力」があるとみている。 別の担当編集浅井友輔も、リアルな駆け引きの懸命さを見て元気をもらったり応援したり、涙をこぼしたり色んな感情が起こって引き込まれるのが大きな魅力だとする。 ジャンプ編集長の中野博之は、ここ10年で本作のヒットは特殊で急に面白くなったのではなくアニメを通してやっと伝わったと言い、主人公の側面が大きい今のジャンプでは鬼滅の敵も丁寧に描写されるのは少し外れていて初期はもっと主人公の描写が見たいとの声もあったはずだがそこがストロングポイントとして刺さったと感じている。 アニメ版プロデューサーの高橋祐馬は、友情努力勝利のジャンプ王道作品で、単なる勧善懲悪ではなく登場人物の敵味方に哀しい過去があって人物造形が深いと分析した。
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