昇龍拳とは? わかりやすく解説

リュウ (ストリートファイター)

(昇龍拳 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/31 04:30 UTC 版)

リュウ(隆)
ゲームでの初登場 ストリートファイター
詳細情報
肩書き 格闘家
格闘スタイル
  • 空手をベースとした格闘術(『CvS』)
  • 暗殺拳をルーツとした格闘術(『ストIV』以降)
出身 日本
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リュウ(隆)は、カプコンが開発・販売している対戦格闘ゲームストリートファイター』シリーズに登場する架空の人物。シリーズ全作品に登場しており、主役的存在である。

概要

1987年に『ストリートファイター』(以下『ストI』と表記)の主人公、1P側のプレイヤーキャラクターとして初登場する。

『ストI』では漢字で「」の表記が使用されているが、その続編として1991年に発売された『ストリートファイターII』(以下『ストII』と表記)で「リュウ」と表記されるようになり、以後定着している。

「リュウ」という名前は『ストI』でディレクターを担当した西山隆志に因み[1][2][3]、カプコンのゲームキャラクターにおいてはポピュラーな名前である[注 1]。なおフルネームに関しては明らかにされておらず、一部の関連作品で名字が設定されたことはあるが[注 2]、いずれも公式設定ではない[4]

『ストリートファイター』シリーズの主人公的キャラクターであるリュウは、カプコンを代表するキャラクターとしても認知されており、他社を含む多くのクロスオーバー作品に参加している。ただし『ストリートファイターIII』(以下『ストIII』と表記)ではアレックス、『ストリートファイター6』(以下『スト6』と表記)ではルークにそれぞれ主人公の座を譲る形になっている。

キャラクター設定

鉢巻に白い道着、黒帯、赤系の篭手(グローブ)がトレードマーク。『ストI』では白い鉢巻とカンフー靴を身に着け、髪を赤く染めていたが[5]、時系列順で『ストII』以降の作品では素足に黒髪(濃い茶髪)、赤い鉢巻となり、フルコンタクト空手の要素が入れられグローブにパットが付くようになった[6]。『ストI』の直後を描いた『ストリートファイターZERO』(以下『ストZERO』と表記)シリーズでは『ストI』に近い白い鉢巻と赤茶色の髪で、『ストリートファイターZERO2』(以降『ストZERO2』と表記)のケンのエンディングにて、ケンの髪留めのリボンを譲り受けることになる。『ストリートファイターIIダッシュ』(以下『ストIIダッシュ』と表記)、『ストリートファイターIIダッシュ ターボ』(以下『ストIIターボ』と表記)、『ストリートファイターIII 3rd STRIKE』のイラストでは薄っすら顎髭を生やしており、『スト6』ではさらに口周りに濃い髭を蓄え、晒巻の半裸に袈裟と雪駄を着用している。

初登場作品である『ストI』におけるリュウは、幼少から学んだ様々な格闘技を独自の格闘スタイルに昇華させた若き天才格闘家と設定されており「最強の格闘家」となるべく世界中のストリートファイターたちと戦う旅に出発する。戦いの末に「ムエタイの帝王」サガットを「昇龍拳」で倒し、世界一の称号と栄誉を手に入れるが、嬉しそうな素振りも見せずにすぐに姿を消し[7]、その後は“強い奴”と戦うため修行の旅を続ける。

続編である『ストII』において、暗殺拳を昇華させた格闘術を使う剛拳(ゴウケン)の弟子という設定が追加され、以後は一つの格闘流派に固執することなく他流派の技も積極的に取り入れ、空手柔道テコンドーといった各種格闘技をミックスした、独自のスタイルを作り出している[8]。その後は自身の中に眠る「殺意の波動」と呼ばれる悪しき力に苦しみながらも「真の格闘家」になることを目指して戦い続けることを決意する。

ストリートファイターV』(以下『ストV』と表記)でアートディレクターを務めた亀井敏征は「作品内の時間・時代が変化してもリュウは変化しない基準となるようにデザインしており、変わらず武を追求するリュウを基準として、他のキャラクターの成長や立場の変化などを理解できる作りにしている」と語っている[9]

人物

リュウの銅像(奈良県橿原市

『ストI』当時は確立した人物像はなかったが、時期を経た『ストII』では落ち着いた人物として描かれる。『ストII』が世に出てからしばらくは豪快な性格に描かれることもあったが、徐々に剛毅木訥な一面が強調されていく。

『ストII』以後確立されたリュウの人物像としてまず挙げられるのは、ストイックな性格である。『ストII』以降の各作品でのエンディングでは、戦いに勝利しても自分自身は満足せず、最初から修行をやり直したり、自分が求めているものは何なのかを探し直すといった描写が多い。そこからリュウのイメージは、格闘に関しては非常に求道的で妥協を許さない。礼儀正しく謙虚な性格で自分の能力を他人にひけらかすことは無い、というのが専らとなっている。技名には頓着が無く、師匠から教わった「波動拳」「昇龍拳」などに対し、自ら開発した技は「上段三連撃」など味気ない名前になっている[10]

またリュウの人柄を表す設定に、ホームステージとして使用される「朱雀城」にある師匠、剛拳の墓を参るため年に一度訪れる、とするものもある[8]。幼き頃は「朱雀城」を修行場とし、その近辺に位置する原野「玄武ヶ原」なども一部作品ではリュウのホームステージとして用いられる。

着替えの道着が入ったザックを持ち歩いている[11]。『ストIII』では対戦前のデモで背景の方に置き、攻撃などによってその付近が揺れるとザックが倒れるといった細かい演出がある。『CAPCOM FIGHTING Jam』ではアナカリスの「王家の裁き」にかかった際に姿をザックに変化させられる。

勝利時の動作により演出される姿には、『ストI』からあった片手を突き上げるもの(ケン、ショーンも同様の動作を行う)と、『ストII』からの結わえ垂れた鉢巻の布が風に流される腕を組んだ姿があり、その二つが代表的。それらの演出は『ストII』以降のシリーズにおいて、ほとんどのゲームで見られる。

主人公ならではの特別な存在として位置づけられることも多く、劇場版アニメ『ストリートファイターII MOVIE』においては、シャドルーが調査した潜在格闘値が3620(それまでの最高が2000)という高い数値を示すというシーンもあった。また潜在的な力として、“殺意の波動”(後述)を秘めているとする設定が生まれている。しかし『ストリートファイター』の世界は勧善懲悪ではない設定のため、リュウが真の格闘家を目指して己のために戦うことはあっても、世界を救うことを目的として戦うということはない[10]

ゲーム内にて血縁関係については一切描かれていない。公式にそれを示す設定はなく、両親や家族がいるかは不明である。リュウ自身も自分の出生を知らず、物心つく頃から修行の日々を送っていたと語っている。しかし漫画などメディアミックス作品の中には豪鬼との何らかの関係を示唆するものがあり、中平正彦の漫画『RYU FINAL』ではケンの台詞で血縁関係の可能性に言及している(後日、作者がそう取れるよう描いたことを認めている)。OVAストリートファイターZERO: ジェネレーションズ』では豪鬼がリュウの父親であると受け取れる描写がなされた。また当作においてリュウは轟鉄の弟子である剛拳の許で養育されたという設定だが、『ストリートファイターIV』(以下『ストIV』と表記)においては、轟鉄と面識無しとする従来の設定から、幼少期より彼らと修行に明け暮れていた、と設定が改められている。

『ストII』以降は前述の彼の性格から多くの格闘家に影響を与えている様子が描かれている。リュウの人間性や真の格闘家への道をひたむきに探求する生き様に感銘を受ける者も多く、好敵手となっている格闘家も幾人か存在する。

かつて倒したサガットに加え、『ストZERO2』以降ではリュウに憧れる女子高生・春日野さくらも登場し、リュウは格闘家として追い掛けるべき存在と目された。中平正彦の漫画『RYU FINAL』では『ストIII』のキャラクターたちからも一目置かれており、仙人であるオロにも弟子入りを勧められている。

主人公という立場上、漫画作品や4コマ漫画などでは女性ファイター兼ヒロインである春麗やさくらを始めとする、彼と関わり合いを持つ女性たちに恋愛感情を抱かれていることが多々あるが、肝心の本人がその手の話に疎く、彼女たちの想いに気付く気配は全く無い(春麗は友人の1人、さくらは後進の1人という認識)。またゲーム本編では直接そういった描写がされることは少ない。『ゲーメスト』の『ストI』攻略ページに掲載された短編漫画では恋人に別れを告げて師匠の敵討ちの旅に出たという描写があるが、これは元ゲーメストライターの転清がカプコンの許諾なしに創作したものであり、公式の設定ではない[12]

「日本の春が似合う女性」が好みの女性のタイプとする設定もある[11]

他のキャラクターとの関係

「複数の作品で関わる」「互いのストーリーに影響しあう」など、重要性の高いキャラクターのみを特記、概要を述べる。

ケン・マスターズ
同門出身の兄弟弟子。リュウの親友で、最大のライバル。
少年時代をともに過ごし、ストリートファイターとなってからも互いの修行の成果を確かめるべく、たびたび拳を交えている。
豪鬼
「拳を極めし者」を名乗る格闘家。剛拳の弟で、ケンと同じく同門の出身。
リュウとケンの流派の総帥・轟鉄と師匠・剛拳を倒した。リュウの中に「殺意の波動」と呼ばれる力を見出しており、リュウがそれに目覚めることを望んでいる。
剛拳
リュウとケンの師匠。豪鬼の兄。
豪鬼に敗れて死亡したとされていたが、『ストIV』以降では生きていたことが判明。
火引弾
剛拳の元・弟子。
立場上はリュウやケンの兄弟子だが、修行の途中で破門されたため、当初は面識がなかった。
サガット
ムエタイの帝王。リュウのライバルの1人。
かつての戦いでリュウに敗北したことが原因で復讐の相手として憎悪していたが、やがて互いを認め合うライバルと言える関係となる[注 3]
自身の胸にある大きな傷跡は『ストI』の時期にリュウの「昇龍拳」によってつけられたもので、これに対抗するべく自身も「タイガーアッパーカット(タイガーブロウ)」などの必殺技を開発している。
春日野さくら
女子高生ストリートファイター。リュウの追っかけ
リュウの戦う姿を見てストリートファイトに興味を持ち、同じ世界に足を踏み入れる。使用する技も、リュウの技を真似たものが多い。

貧乏とリュウ

「放浪の格闘家」というキャラクター設定に加え、「常に裸足で道着姿」という特徴的な風貌のリュウは、プレイヤーに「服を買うお金がない」などの印象をしばしば与える。『ストリートファイターZERO3』(以下『ストZERO3』と表記)では住所不定、無職と設定されている[8]。そのためパロディ4コマ漫画などの二次創作では貧乏ネタを描かれることが多く、カプコン公式トレーディングカードでの描き下ろしイラストでは、コインランドリーの洗濯機をブリーフ一丁のリュウが仁王立ちでにらんでいる、というものがある。イラストを担当したイケノは「リュウの普段の生活ぶりを描こうとしてやりすぎた。本当はもっと常識のある人だと思う」と語っている[13]

ゲーム中における他キャラクターとの会話でもそれらに触れる描写もあり、『SNK VS. CAPCOM SVC CHAOS』(以下『SVC』と表記)では逆に、リョウ・サカザキのことを「貧乏な方が無敵の龍か」と本人の目の前で発言して怒らせるシーンもあったが、『ストIV』ではクリムゾン・ヴァイパーに敗北した際に、「税金はちゃんと払っているのか。保険には加入しているのか」と問い詰められている。

カプコンデザイン部部長のSHOEIは「リュウが貧乏という設定を作った覚えはなく、ちゃんとお金を持っている」と語っている。またあきまんの設定によると、ギャングの用心棒など危ないことも普通にやり、基本的にはストリートファイトでお金がなくなったら自分に賭けて稼ぐという[14]

中平正彦の漫画『さくらがんばる!』では、中国の飲食店で短期間働いていたと店主が話し、『RYU FINAL』では自炊の買い出しに出かけた際、安い食材ばかり購入するリュウに対し同行して来たオロに「お前の不味い飯には飽きた」「たまには美味い物が喰いたい」とぼやかれ、「粗食も修行だ」と鼻であしらった。OVA『ストリートファイターZERO: ジェネレーションズ』や『スト6』のワールドツアーでも、少なくとも無一文である様子には描かれておらず、修行中などの時以外は普通に道着以外の服を着ており、靴も履いている。ドラマCD『ストリートファイターZERO3 ドラマアルバム』ではリュウの家も登場する。『ストIV』の勝利台詞では裸足で戦うことについて「裸足の方が楽なだけで、(金銭的に)買えないわけではない」と語っている。『週刊ファミ通』2018年11月1日号に掲載されたガイルとの対談においても、定住所を持ちオフの時は普通の生活を送っていることや、飛行機に乗るだけの金銭も持っていることを語り、放浪者扱いされていることに対しては不満を見せていた。

『スト6』のワールドツアーにおいては、基本的に現地で稼いだ金を現地で使うことで暮らしているが、時には「黒いカード」で支払うこともあると語っている。各武術大会の賞金や異種格闘大会のゲスト参加、ちょっとしたトラブル解決の礼などでリュウ自身が稼いだお金を代わりにケンが受け取って管理しているという。なお「今の使い方のままだと一生かかってもなくならない」とのことだが、具体的にどれほどの蓄えがあるのかは明言されていない。

殺意の波動

師匠、剛拳の設定が生まれたことを切っ掛けにして、やがてリュウが使う格闘術は古来からの源流を持つ「暗殺拳」がベースとなっているとされていく。『スーパーストリートファイターII X』(以下『スパII X』と表記)にて豪鬼が登場し、リュウに関わる「暗殺拳」の一類の者と位置付けられ、続く『ストZERO』シリーズにて“殺意の波動”という名称がゲーム上で語られ始める(瞬獄殺豪鬼#殺意の波動も参照)。同シリーズでは豪鬼はその力を持っているとされ、リュウもまた潜在的に殺意の波動を秘めているとされた。

以後より現在まで、シリーズを通してその設定は引き継がれている。しかし殺意の波動とはどのような力なのか、ゲーム本編で言及されることはほとんどない。ただ発現した者に強大な戦闘力をもたらすということは表現されており、ゲーム以外の媒体でも描かれている。

漫画作品、映像作品にはリュウがこれを克服することがテーマとなっているものがあり、ゲームによっては殺意の波動を忌まわしいものとするリュウが、克服を目標として旅するストーリーとなっているものもある。また『ストリートファイターZERO2 ALPHA』(以下『ZERO2 ALPHA』と表記)以降のゲームのいくつかでは、殺意の波動に呑まれてしまったリュウを個別のキャラクターとして使用できる(後述)。

この力を持つリュウを利用するため、登場する悪役キャラクターが彼に目をつける、というシークエンスもある。ゲーム本編の一つのストーリーでは、殺意の波動の使い手である豪鬼はリュウが完全に殺意の波動に目覚めて自らに匹敵する相手となることを望んでいる。また一つに、軍事企業・S.I.N社のCEOであるセスは殺意の波動を兵器に利用することを計画しており、リュウの身柄を狙っている、というものもある。

『ストIII』においてのリュウは殺意の波動を克服することも修行の旅の目的となっており、スーパーアーツのひとつ「電刃波動拳」は、殺意の波動をある程度制御することで使用を可能としている[11]。また同作品に登場するショーンが殺意の波動に目覚めるにはリュウやケンに近いレベルまで成長する必要があり、まったく可能性がないわけではない[11]。中平正彦の漫画『RYU FINAL』では、「殺意の波動」と対極を成す形の技として「風の拳」が描かれている。

時系列が『ストII』以後、『ストIII』以前のものとなっている『ストIV』では、リュウのエンディング、並びにオリジナルアニメーション『ストリートファイターIV〜新たなる絆〜』の終盤にて、リュウが殺意の波動を御するシーンがある。

『ストV』のゼネラルストーリーでは、今まで抑えつけていた殺意の波動と向き合い、ネカリとの二度目の闘いにおいて「破壊の力」としか考えていなかった殺意の波動を、自らの力のひとつとして受け入れることで、「無の波動」の覚醒に成功。この力を用いてネカリやベガとの決着を果たす。

殺意の波動に目覚めたリュウ

殺意の波動に目覚めたリュウ
ゲームでの初登場 Street Fighter ALPHA2
高橋広樹(『スパIV AE』以降)
#声優も参照
詳細情報
格闘スタイル
  • 殺意の波動(『CvS』)
  • 不明(『スパIV AE』)
出身 日本
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殺意の波動に支配された状態のリュウ。「殺意リュウ」とも略される。黒い道着を身に着け、肌の色は浅黒い姿で表される。基本的に「もしリュウが殺意の波動に目覚めたら?」という設定の、いわばif的な存在であるため、一部を除いてストーリー上でこの状態が正史になることはない。

破壊の衝動に駆られ、死闘を求めて戦いを繰り返すが、わずかに本来のリュウの精神を残しており、完全な「殺意」に囚われていない。豪鬼の持ち技が使えるようになっているが、豪鬼が使う同様の技よりキレや威力は劣っている[15]

『ストZERO2』の北米版『Street Fighter ALPHA2』(以下『ALPHA2』と表記)において、この黒い道着で豪鬼の技を使うリュウが隠しキャラクターとして初登場。その後、日本のみで稼働した『ストZERO2 ALPHA』にも登場し、通常のリュウとは異なる独自の勝利メッセージや中間デモ、エンディングなどが追加された。この作品での勝利メッセージの台詞は、波動に精神を囚われた状態と我に返った状態が半々で、後者では道を誤ったことへの後悔や力への恐れが見られるものとなっている。最終的には意識が混濁した状態で師匠の敵である豪鬼を前にし、勝利後に失踪するという結末になる。

続編の『ストZERO3』のアーケード版では登場しないが、家庭用および『ストリートファイターZERO3↑』での追加キャラクターとして再び登場した。ここでは、精神は殺意の波動に引き寄せられ、殺意の波動とそれに目覚めた自分を肯定する様子が勝利メッセージ画面の台詞からうかがえる。同作の対CPU戦を殺意リュウでプレイした場合、ボスとして真・豪鬼が登場する。その戦いに勝利したエンディングシーンでは、殺意リュウ自身の台詞により豪鬼を「殺した」ことが語られ、殺意リュウは殺意の波動に完全に魅入られて第二の「拳を極めし者」へと変貌する(この時に「滅」の字を背負う演出がなされる)。

『ストリートファイターEX plus α』では辛うじて己の拳の間違いに気づき、格闘家として修行をやり直すことで、殺意の波動を克服しようとするリュウの姿が描かれている。また、『ストリートファイターZERO3↑↑』のイングリッドのストーリーでは、ベガによって殺意の波動を引き出されたリュウが登場し、このリュウに勝利した場合、正気を取り戻すシーンが演出される。

スーパーストリートファイターIV アーケードエディション』(以下『スパIV AE』と表記)でも登場。本作では、頭髪は豪鬼のように赤黒く染まり毛が逆立ち、肌が褐色になり、黒くなった道着は袈裟懸けに破れている。また胸部には背中まで突き抜けた巨大な穴状の傷(背中側は6方向に裂けている)[注 4]が存在する。眼が赤く光り、全身から常時炎のような気が放たれている。リュウの記憶は遺すものの精神は喪失し、従来作以上に強者への殺人衝動が強くなっている。『ウルIV』のオメガエディションでは新たな技も追加され、豪鬼のように重い闘い方ではなく、とにかく荒々しい闘い方が目立つ。『スパIV AE』で殺意の波動に目覚めたリュウのデザインが変更されたことに関して、アシスタントプロデューサーである綾野智章は「ユーザーの反応を知るのが怖かった」と語っている[1]

影ナル者

影ナル者
ゲームでの初登場 ストリートファイターV アーケードエディション
高橋広樹
詳細情報
格闘スタイル 不明[17]
出身 不明
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リュウから乖離した「殺意の波動」の化身。「殺意の波動に目覚めたリュウ」とは違い、殺意の波動の化身という思念体のような形で登場[注 5]。姿形はリュウそのもので服装は道着を上半身だけ脱いだ状態。肉体の一部からオーラのような光が漏れ出し、また頭部には鬼の角のようなものが付いている。目は豪鬼などと同じように白目の部分は黒く、黒目の部分は赤い。

ゼネラルストーリーで己が有する殺意の波動の「力」を「自身の力の一部」とリュウが受容したことで、リュウの心身の支配を求めていた殺意の波動の「精神」が乖離して自我を持ちリュウの姿で強者との死合いを求め彷徨い始める。その後、同じく殺意の波動を秘めるサガットや豪鬼の所に現れ力を受け入れるよう促すも、サガットには「確かな強さだが、お前では帝王の心は砕けない」と一蹴され、「魂なき影法師風情」と断じた豪鬼には「真の一撃は肉のみにて練るに非ず、殺意のまま突くに非ず」と言われ、新たな奥義「崩天正拳撃」で打ち消された。秘める殺意の波動を受け入れたリュウ本人からは「在りたければ在るがいい」「去りたければ去るがいい」と言われ、リュウの「ありのままの自分を受け入れる」という考え方を理解できずに消滅した。

主な技

波動拳(はどうけん)
体内の気を組み合わせた両手に集め、前方に突き出して気弾を発射する。西山隆志によると、原型は『宇宙戦艦ヤマト』の波動砲であり、力を貯めて一気にそのエネルギーを解放するところが必殺技らしいと語っている[1]
灼熱波動拳(しゃくねつはどうけん) / ファイヤー波動拳
赤色の「波動拳」を発射し、相手を燃やす。元は『ストII』シリーズ初期において稀に出る色違いの赤い波動拳で、それが別の技として独立したものである[要出典]
真空波動拳(しんくうはどうけん)
複数の「波動拳」を1つに合わせて発射する。 『ZERO2』における本技のバックストーリーでは、師匠からいつか伝授されるはずだったという記述がある[要出典]
電刃波動拳(でんじんはどうけん)
波動の気の練り方を、短い間に交互に反転させることで波動を帯電させ[11]、電気を帯びた「波動拳」を撃ち出す。殺意の波動の気を少しの間制御することで可能となったもので、殺意の波動を完全に克服すると使えなくなるとされる[11]
昇龍拳[注 6](しょうりゅうけん)
沈み込んだ態勢から、アッパーカットと膝蹴りを同時に繰り出し[18]、上空に跳び上がる。いくつかの漫画作品では、「威力が高すぎて致死性が高い」「拳を突き上げる動作は天(神仏)に対して拳を向ける」など、作品によって異なる理由で禁じ手になっている。
真・昇龍拳(しん・しょうりゅうけん)
強力なアッパーを繰り出し、最初の一撃がクリーンヒットしたときのみ、すかさず逆の腕でのアッパーと飛び膝蹴りを垂直に繰り出して追撃する[19]。「真・昇龍拳」という名称自体は、中平正彦の漫画『ストリートファイターZERO』が初出であり、ゲームに逆輸入された[20]。「殺意の波動」を克服したリュウの偽りでない「まこと」の昇龍拳という考えから生まれており、「真」の字はOVA『真魔神伝 バトルロイヤルハイスクール』から取られている[20]。ゲームのストーリー上の設定としては、この技はリュウがある闘いの最中、無意識のうちに繰り出した技が原型であるとされている[11]
竜巻旋風脚(せんぷうきゃく)
宙に浮き上がり、竜巻のように回転しながら連続して回し蹴りを放つ。動作中は前方に直進する。
空中竜巻旋風脚(くうちゅうたつまきせんぷうきゃく)
ジャンプ中に「竜巻旋風脚」を繰り出す。直前のジャンプの軌道を維持し、放物線を描くように飛ぶ(一部の作品では水平に直進する)。
真空竜巻旋風脚(しんくうたつまきせんぷうきゃく)
体をひねって勢いをつけてから「竜巻旋風脚」を繰り出す。通常の「竜巻旋風脚」とは異なり、その場から移動しない。
上段足刀蹴り(じょうだんそくとうげり)
前へ大きくサイドステップしつつ体を捻り、足の側面(足刀部)とカカトで蹴りを突き込む。
鎖骨割り(さこつわり)
振り被って前方に踏込み、フックを振り下ろす。地上から繰り出すしゃがみガードできない技=“中段”の端緒の一つである。
鳩尾砕き(みぞおちくだき[注 7]
通称「大ゴス」[注 8]。前方に踏み込みつつ逆突きでのボディブローを放つ。

三種の神器

『ストI』から全作を通じて使われている「波動拳」、「昇龍拳」、「竜巻旋風脚」の3つの技は、一部で「三種の神器」と呼ばれるようになった[21]。このことから、他の格闘ゲームの必殺技コマンド入力を確認・説明する場合などに「波動コマンド」「昇竜コマンド」というように使われている[22]

この3つの技を考案したのは西山隆志であり、西山によるとパンチとキックだけではゲームとしてのダイナミックさに欠け、より奥深い駆け引きを実現するにあたってできることを考えたときに必殺技のアイデアが生まれたという[1]。「昇龍拳」が無敵技となったのは『ストI』のプランナーである松本裕司によるアイデア[1]

ロックマンX』シリーズにも隠し要素などに採用されており、特に「波動拳」「昇龍拳」は複数のキャラクターが使用する。『デビルメイクライ』シリーズにも「昇龍拳」「竜巻旋風脚」をモデルにした攻撃アクションが存在している。

また各雑誌に掲載されているコラムや漫画などでも、ツッコミなどで「昇龍拳」が使われることがあり、ゲーム業界以外にも影響を与えている。お笑い芸人の猫ひろしは「昇龍拳」を自らのギャグとして使用している[23]

その他

B-BOYコスチューム リュウ
Red Bull BC One World Final 2016(レッドブル・ビーシー・ワン・ワールド・ファイナル2016)』でのキャンペーン専用DLコスチュームで、『ストV』の公式サイト「シャドルー格闘家研究所」の「キャラ図鑑」にて個人プロフィールが紹介された[24]
銅像・ご当地ナンバー
橿原市の大和八木駅前広場に銅像がある[25][26]
橿原市は令和5年からご当地ナンバーにリュウを採用している[27]

登場作品

リュウ

ゲーム
漫画
ドラマCD
  • ストリートファイターII 春麗飛翔伝説
  • ストリートファイターII 復讐の戦士
  • ストリートファイターII -魔人の肖像-
  • ストリートファイターZERO 外伝 〜春麗旅立ちの章〜
  • ストリートファイターZERO3 ドラマアルバム
  • ストリートファイターEX ドラマCD
  • ストリートファイターEX2 ドラマCD

殺意の波動に目覚めたリュウ(登場作品)

ゲーム
  • 対戦型格闘ゲーム
    • 『ストリートファイターZERO』シリーズ
      • 欧米版『Street Fighter ALPHA2』、および『ストリートファイターZERO2 ALPHA』以降
    • 『ストリートファイターEX』シリーズ
      • 『ストリートファイターEX plus』
      • 『ストリートファイターEX plusα』
      • 『ストリートファイターEX3』
    • 『ストリートファイターIV』シリーズ
      • 『スーパーストリートファイターIV アーケードエディション』
      • 『ウルトラストリートファイターIV』
    • 『ウルトラストリートファイターII』
    • 『CAPCOM VS. SNK』シリーズ
  • 対戦型格闘ゲーム以外
    • 『アスラズ ラース』
  • カプコン以外の他社製作ゲーム
    • 『SNK VS. CAPCOM 激突カードファイターズ』シリーズ
    • 『頂上決戦 最強ファイターズ SNK VS. CAPCOM』
    • 『NAMCO x CAPCOM』
    • 『モンスターストライク』(分岐神化時に出現[29]
    • 『ヴァルキリーコネクト』
    • 『TEPPEN』
漫画
  • 『ストリートファイターZERO』 - 中平正彦

声優

格闘ゲームでの担当声優
  • 石塚堅(『ストリートファイターZERO』、『ストリートファイターZERO2』、『ストリートファイターEX』シリーズ)
  • 保志総一朗(『スーパーパズルファイターIIX[30][31][注 9]、『ポケットファイター』)
  • 高木渉(『ストリートファイターIII』、『ストリートファイターIII 2nd IMPACT』)
  • 森川智之(『ストリートファイターZERO3』、『CAPCOM VS. SNK』シリーズ、『SNK VS. CAPCOM SVC CHAOS』、『NAMCO x CAPCOM』[32]、ドラマCD『ストリートファイターZERO3 ドラマアルバム』)
  • 大川透(『ストリートファイターIII 3rd STRIKE』)
  • 高橋広樹(『ストリートファイターIV』以降の関連作品)
  • カイル・エベール(『ストリートファイターIV』以降の英語音声)
その他の関連作品での担当声優

脚注

注釈

  1. ^ カプコン初期の格闘系アクションゲーム『闘いの挽歌』『必殺無頼拳』の主人公にも「リュウ」の名が付けられており、『ストリートファイター』シリーズのリュウは3代目にあたるが、前2作とは外観・設定ともに関わりはない。
  2. ^ 「リュウ・ホシ」(実写映画『ストリートファイター』)や「武神 隆」(カプコンのクイズゲーム『クイズアンドドラゴンズ』など)。
  3. ^ 『ZERO』シリーズでのリュウとサガットの関係が描かれたストーリー展開では、中平正彦の漫画『ストリートファイターZERO』と相互に反映しあう様子があった。
  4. ^ これは雑誌『月刊アルカディア』の綾野智章のインタビューにおいて、狂オシキ鬼の技「冥恫豪波動」を受けた跡であることが示唆されている[16]
  5. ^ ただしアーケードモードの『ストZERO』および『ストIV』コースでは「殺意の波動に目覚めたリュウ」と同様の扱いになっており、エンディングもそれに準じている。
  6. ^ 一部作品では「昇拳」。
  7. ^ 『ストEX』シリーズでは「きゅうびくだき」。
  8. ^ 『スト6』の自動実況機能にて、この通称が使用されている。
  9. ^ 新規収録分のみ。
  10. ^ 日本語版・英語版共に担当。

出典

  1. ^ a b c d e 『ストリートファイター アートワークス 極』カプコン、2012年12月17日、434-439頁。
  2. ^ akiman7のツイート(19728041949274112)
  3. ^ akiman7のツイート(19908628530073600)
  4. ^ 『ALL ABOUT ストリートファイターZERO3』電波新聞社、1998年11月30日、386頁。
  5. ^ 『COMPLETE FILE STREET FIGHTER II』朝日ソノラマ、1992年12月30日、74頁。
  6. ^ 「頂上対談 船水紀孝 vs 安田朗」『ストリートファイター15周年 最強読本』宝島社、2003年9月26日、ISBN 4-7966-3545-9、30頁。
  7. ^ 月刊ゲーメスト増刊『ストリートファイターIIダッシュ』p7より。
  8. ^ a b c 『ALL ABOUT ストリートファイターZERO3』電波新聞社、1998年11月30日、24-25頁。
  9. ^ 『ストリートファイター キャラクターメイキング』ボーンデジタル、2018年11月25日、32頁。 
  10. ^ a b 『ストリートファイター 俺より強いやつらの世界展』西日本新聞イベントサービス、2020年3月14日、179-180頁。 
  11. ^ a b c d e f g 「カプコンオフィシャル回答!強いヤツらの秘密を知ろう STREET FIGHTER III Q&A」『ゲーメストムックVol.81 ストリートファイターIII ファンブック』新声社、1997年7月27日、85頁。
  12. ^ ゲー夢エリア51編『転清アート・ドット・ワークス【インタビュー編】』2011年、216頁。
  13. ^ 『ストリートファイター アートワークス 極』カプコン、2012年12月17日、231頁。
  14. ^ 「CAPCOM DESIGN TEAM インタビュー」『ストリートファイター エターナルチャレンジ』双葉社、2003年7月5日、130頁。
  15. ^ 『ストリートファイター エターナルチャレンジ 永遠の挑戦者たち』カプコン、2003年7月5日、233頁。 
  16. ^ 『月刊アルカディア』2011年6月号、エンターブレイン、2011年4月30日、5頁。
  17. ^ イーカプコン限定特典「ストリートファイターV チャンピオンエディション スタイルガイド」156頁。
  18. ^ 『月刊ゲーメスト』1987年10月号、新声社、24頁。
  19. ^ ALL ABOUTシリーズ Deluxe Vol.2 『ストリートファイターIII THE CHARACTERS』電波新聞社、P27。
  20. ^ a b 『GAMERATIONS』STUDIOZERO、2019年12月29日、63頁。
  21. ^ ストリートファイターシリーズの顔「リュウ」の歴史に追る”. IGN JAPAN (2017年8月8日). 2018年6月6日閲覧。
  22. ^ 6時間目 ~コマンドの基本~|ストゼミ|活動報告書”. シャドルー格闘家研究所. CAPCOM (2016年7月15日). 2018年6月6日閲覧。
  23. ^ 「ネコまっしぐら」で3千人抜き 猫ひろしさん、マラソン盛り上げ”. 福井新聞. 福井新聞社 (2017年10月2日). 2018年6月6日閲覧。
  24. ^ キャラ図鑑番外編:B-BOYコスチューム リュウ|キャラ図鑑|活動報告書|CAPCOM:シャドルー格闘家研究所 2016年11月10日閲覧。
  25. ^ 「ストリートファイター」銅像で世界のファンお出迎え 奈良・橿原
  26. ^ 橿原市と「ストリートファイター」シリーズが包括連携協定を締結!
  27. ^ 「波動拳」ご当地ナンバー、ストⅡ世代に「刺さる」 最高倍率は6倍
  28. ^ Vジャンプ、2015年9月号『モンスターストライク×ウルトラストリートファイターIV 開催期間2015年7月17日〜2015年7月31日』P210 - 211。
  29. ^ a b 宝島社『モンスターストライク最強攻略BOOK5』P77。
  30. ^ 『ALL ABOUT スーパーパズルファイターIIX』電波新聞社、1996年8月30日、ISBN 4-88554-459-9、122頁。
  31. ^ 保志総一郎公式プロフィール:GAME Archived 2010年1月7日, at the Wayback Machine.
  32. ^ NAMCO x CAPCOM公式サイト、キャラクター1
  33. ^ 冬馬由美のオフィシャルウェブサイト Works CDドラマ
  34. ^ a b 猪 虎太郎さんのプロフィール【クラウドワークス】

参考文献

  • 『映画ストリートファイターII メモリアル公式ファンブック』小学館
  • 『ストリートファイターIII ファンブック』新声社〈ゲーメストムック〉
  • ALL ABOUT カプコン対戦格闘ゲーム 1987-2000』電波新聞社

昇龍拳

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/07/13 05:41 UTC 版)

エース (ストリートファイター)」の記事における「昇龍拳」の解説

リュウケン必殺技アッパーカット膝蹴り繰り出しながらジャンプするヒット数が弱・中・強の順に1発ずつ多くなるようになっている最大まで強化した状態で、弱版の最後レバーボタンを完全に同時に入力すると体光り浮かせ技に変化する

※この「昇龍拳」の解説は、「エース (ストリートファイター)」の解説の一部です。
「昇龍拳」を含む「エース (ストリートファイター)」の記事については、「エース (ストリートファイター)」の概要を参照ください。

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