日本人とマグロ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 01:41 UTC 版)
日本人は古くからマグロを食用とし、縄文時代の貝塚からマグロの骨が出土している。『古事記』『万葉集』にも「シビ」の名で記述されており、「大魚(おふを)よし」は「鮪」の枕詞。 江戸の世相を記した随筆『慶長見聞集』ではこれを「しびと呼ぶ声の響、死日と聞えて不吉なり」とするなど、その扱いはいいものとはいえなかった。これは鮮度を保つ方法が無く、腐敗しやすいことが原因である。かつては魚介類の鮮度を保つには、水槽で生かしたまま流通させる方法があったが、マグロの大きさではそれが不可能であった。また干魚として乾燥させる方法もあるが、マグロの場合は食べるに困るほど身が固くなる(カツオの場合は、乾燥させた上で熟成させ、鰹節として利用したが、マグロはその大きさから、そういった目的では使われなかった)。唯一の方法は塩漬にする事だが、マグロの場合は食味がかなり落ちたため、下魚とされ、最下層の庶民の食べ物だった。 江戸時代中期から調味料として醤油が普及した。これにより、マグロの身を醤油漬けにするという新たな保存方法が生まれ、「ヅケ」と呼ばれ、握り寿司のネタとして使われ出した。 近代以降は冷蔵技術が進歩した事から、赤身の部分の生食が普及したが、第二次世界大戦前までは大衆魚であった。北大路魯山人は「マグロそのものが下手物であって、一流の食通を満足させるものではない」と評していた。脂身の部分である「トロ」は特に腐敗しやすいことから、(魚を好んで食べると思われがちな)猫もまたいで通る「猫またぎ」とも揶揄されるほどの不人気で、もっぱら缶詰などの加工用だった。冷凍保存技術の進歩と生活の洋風化に伴う味の嗜好の濃厚化で、1960年代以降は生食用に珍重される部位となった。マグロの品質が低下しない冷凍温度帯は-30℃以下であり、実際の流通上では-50℃の超低温冷蔵庫に保管する。一旦解凍したマグロを再凍結すると組織が破壊され、非常に質が劣化する。再解凍後にはドリップ(旨味成分等を多量に含んだ汁)が流れ出すなどして風味も落ちてしまう。 1995年の統計では、世界のマグロ漁獲量191万tに対し、日本の消費量は71万t。そのうち60万tを刺身・寿司等の生食で消費している。加工品では「ツナ」もしくは「シーチキン」(商標名)と呼ばれるサラダオイル漬けの缶詰が多い。 日本の各都道府県庁所在地での家計調査によると、一世帯当たりのマグロの購入量は年々減少している。消費率はマグロ水揚げ日本一の静岡県および隣接する山梨県、関東地方が上位を占める。一方で西日本の数値は軒並み低く、食文化の相違がみられる。 2019年1月5日、豊洲市場で青森県大間産のクロマグロ(大間まぐろ、278キログラム)が3億3360万円の史上最高値で落札された。近年の史上最高値更新は、2001年に青森県大間産2020万円(202キログラム)、2011年に北海道戸井産(2004年までは戸井村および戸井町、それ以降は函館市戸井町)3249万円(342キログラム)、2012年に青森県大間産5649万円(269キログラム)、2013年に青森県大間産1億5540万円(222キログラム)となっていた。 和歌山県の「県の魚」に指定されている。
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