放射性派生物集中処理施設
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「福島第一原子力発電所における放射性廃棄物の処理と管理」の記事における「放射性派生物集中処理施設」の解説
上記検討の結果、放射性派生物集中処理施設の建設が1980年11月から開始され、試運転を経た後1984年8月より本格運転を開始、当時としては日本の原子力施設で初の導入例でもあった。 集中処理施設は下記の4つの施設から構成される。 高性能集中処理設備(1984年運転開始時)設備名称対象派生物従来の処理方法集中処理設備設備供給者放射性液減容処理設備床ドレン液再生液(1~4号機) セメント固化方式 ペレット固化方式(約1/8) 日立製作所 ランドリセンタ・洗濯液濃縮処理設備洗濯液(1~6号機) 各機別々に処理し、ろ過処理後希釈放出 集中処理方式濃縮処理後、回収再利用(一部放出) 東芝 機器ドレン処理設備機器ドレン液(1~4号機) ろ過助剤を使用するため、二次派生物が発生 非助剤型のフィルタのため、二次派生物を大幅に減少 日揮 可燃性雑固体焼却設備可燃性雑固体派生物(1~6号機) 圧縮ドラム缶詰方式 焼却減容方式(約1/40) 日本碍子 集中処理施設は4号機の南側に立地。プロセス主建屋、焼却炉、工作機械設備建屋、補助建屋から成る。延床面積は36,000m2、主建屋の容積はBWR-5のような110万kWクラスの原子炉建屋に匹敵し、建設は鹿島建設、前田建設が担当した。 放射性液減容処理設備:減容の他どのような処分方法にも適用可能な形態派生物を保管することを目的に、1970年に仮固化方式との比較研究を開始し、約10年の開発期間を経て1978年から実機設計を開始した。最終的に完成するペレットの原液に対する減容比は500分の1となる。受タンクに投入された原液は濃縮プロセスで真空蒸発強制循環型濃縮器を経て濃縮される。次いで、乾燥プロセスにより遠心薄膜乾燥機により乾燥・紛体化し、ペレット作成のため所定の含水率以下であることを確認した後、造粒プロセスにてアーモンド状のペレットに成型される。ペレットを保管する貯槽は1基800m3で、1~4号機の年間発生量5年分。1984年当時は4基分の貯槽敷地が準備され、2基が竣工していた。 ランドリセンタ・洗濯液濃縮処理設備:開発期間は約2年。作業員の負担軽減を目的とし、洗濯物の放射線サーベイ、および折り畳み作業は本設備の導入によって機械化された。処理能力は2プラントの点検作業量に対応し、4,920kg/日、入域者数換算で約3000名/日に相当する。洗い水(2回)、すすぎ水(3回の内最初の1回)が大気圧蒸発式強制循環型の濃縮設備に投入される。 機器ドレン処理設備:主な仕様として、1プラント分の機器ドレン液約100m3を受入し、各80段のろ過器を2回通す。 可燃性雑固体焼却設備:古屋等によれば、この施設は当時他社でも既に導入されていたという。主な仕様としては処理容量は75万kcal/h(雑固体100kg/h)、除染係数105、減重比40分の1以上であった。 また、集中処理設備で使用する冷却用海水を取水するため、4号機の取水口と南防波堤に囲まれた取水庭の角部に取水ポンプ室が施工された。形式は縦型渦巻式で容量は1890m3を3台(内、予備機1台)設け、ポンプ本体は保守性を加味して吊り上げ可能な構造を求められている。工事に当たっては、ポンプ室建屋が従来護岸よりせり出した位置に設置するため、各種工法が検討されたが、仮締切の不要な棚式鋼構造が採用され、従来工法に比較し工期を3ヶ月短縮した。なお、ポンプ室は建屋1F床面でOP+4.200m程である。ポンプ本体と除塵機もこのレベルに据付される。その他、当地で宮城県沖地震にて取得した富岡波と呼ばれる地震波のデータを用いて予め構造解析も実施され、問題ないことを確認したとしている。最終的に、新工法を採用した成果で工期で38%、工事費で44%の削減を達成した。
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