戦闘用装甲車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/06/16 01:13 UTC 版)
歩兵戦闘車 装輪式の戦闘用装甲車の最も代表的なものに、歩兵戦闘車がある。歩兵戦闘車は、戦闘地域まで戦車に随伴して6-9名程度の歩兵を運搬し、敵との戦闘においては乗車していた歩兵を降車させ戦闘を行わせながら歩兵戦闘車も固有の機関砲や対戦車ミサイルなどで支援的な戦闘を行なう。装甲兵員輸送車に比べて戦闘能力は勝るが、収容できる歩兵の人数はその分だけ減る。また、装甲兵員輸送車に比べれば、装甲が厚く堅固になっていることが多い。 従来は歩兵戦闘車は戦車と共に戦場に赴き、ハイローミックス的な役割分担を行なった戦闘形態がとられていた。それに合わせて、2名程度が収まった砲塔に25-35mmの中口径機関砲を装備したものが多かったが、21世紀になってからは、戦車を伴わずに単独での治安維持活動やゲリラに対処する非対称型戦闘に歩兵戦闘車が用いられることが多くなり、機関砲の口径が30-40mmへと拡大する傾向がある。 装輪戦車 1世代前の戦車と同等の主砲を装輪装甲車に搭載した車両は、かなり初期から運用されており、一部は実戦で使用されている。これらは、威力偵察任務の他、歩兵部隊の支援戦力として対戦車戦闘や敵陣地、建造物などへの直射支援砲撃を任務とする。また、不正規戦において輸送用の車列(コンボイ)の護衛にも用いられることがある。 こういった新たな戦闘車両に対する定まった分類名称はないが、装輪戦車(一般的な名称)、機動砲(アメリカ軍での名称)と呼ばれることが多い。 戦車砲に相当する大口径砲を搭載することで攻撃力は高いが、装甲は小銃弾程度、良くても20mm機関砲弾を防ぐほどで、どのような戦車砲弾も防げず、防御力は極めて限定的である。105mm程度の戦車砲を15-25tという中程度の車体に搭載することは元々限界ぎりぎりであり、装甲を充実させるために重量を大きく増やせば装輪では車体を支持できなくなるので、今後、防御力の向上を望めば爆発反応装甲(ERA)のような追加装甲と、敵弾を物理的に撃墜するAPSによって強化されると思われる。故に、本来の用途は対戦車戦闘ではなく、歩兵への直射火力支援であり、自走歩兵砲という言い方もできる。戦車と対峙する場合に初弾で撃破できなければ、機動力を生かして逃走避難を図るのが最良だと考えられ、本格的な機動砲車両では最新戦車と同等の高価な射撃管制装置(FCS)やセンサー類が装備されていて目標の自動追尾まで行なえるものもある。 対戦車ミサイルの高性能化に伴い、装輪戦車という通称とは裏腹に、この種の車両は積極的に対戦車戦闘に投入されることは少なくなっている。たとえばM1128 ストライカーMGSを運用するアメリカ軍においては、FM 3-20.151において、ストライカー旅団の最有力の対戦車火力はM1134 ストライカーATGMであって、MGSの対戦車任務は副次的なものに過ぎないと規定した。しかしながら、直接照準の大口径砲による火力支援という点で、これらの車両は、現在でも極めて大きな有用性を備えている。 迫撃砲搭載車(自走迫撃砲) 歩兵戦闘車型や装甲兵員輸送車型から小さな変更で作られるものが多く、後部兵員室の屋根を左右に大きく開き、兵員室床面のターンテーブル基台上の81mmや120mm程度の迫撃砲から攻撃する形式が多いが、砲塔型で搭載したり、連装砲にする考えもある。また、主たる迫撃砲とは別に、小型の迫撃砲を搭載することもある。 対戦車ミサイル車型(戦車駆逐車) BGM-71 TOWのような対戦車ミサイルを車体上の全周式発射機から発射する。 偵察車型 比較的4輪駆動車が多いが、タワー状のセンサー装置を10m程にまで上げる偵察車では6輪のものになる。機械的な偵察だけでなく斥候チームを敵性地域内で運ぶ任務を行なう。今後は無人偵察機によって偵察任務は比較的後方から行なえるようになるため、偵察車両も無人航空機(UAV)の運搬操作車両となる可能性がある。 対空砲・ミサイル車型(自走対空砲・自走対空ミサイルランチャー) 比較的短射程の対空機関砲と対空ミサイルをレーダーと共に備え、部隊規模での防空を担う。
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