従兄弟・従姉妹
『嵐が丘』(E・ブロンテ) エドガー・リントンとキャサリン・アーンショーの間の娘キャサリン2世は、父エドガーの妹イザベラとヒースクリフの間の息子、つまり父方の従兄弟リントンと結婚する。リントンの病死後は、キャサリン2世は母キャサリンの兄ヒンドリーの息子、つまり母方の従兄弟ヘアトンと結ばれる〔*ヒースクリフが愛したキャサリンの甥と娘とが、結婚したわけである〕→〔結婚〕4a。
『カンディード』(ヴォルテール) ウェストファリアの伯父の城から追放されたカンディードは、リスボン・ブエノスアイレス・パリなど諸地方を遍歴し、途中、恋人の従妹キュネゴンド姫といったん巡り合ってまた別れる。何年かの後に、カンディードはコンスタンチノープルでキュネゴンド姫を見出し、彼女は外見も性質も醜く変わっていたが、かねての約束どおり2人は結婚する→〔追放〕2。
『虞美人草』(夏目漱石) 法科出身で外交官になる宗近一(はじめ)と、哲学を専攻する病弱な甲野欽吾とは、従兄弟どうしであり、また親友でもあった。一の妹・糸子は、従兄にあたる欽吾を慕い、2人は結婚した。
*『彼岸過迄』の市蔵は、従妹(=叔母の娘)との結婚を期待される→〔出生〕2e。
*『こころ』の「先生」は、従妹(=叔父の娘)との結婚を拒否する→〔チフス〕1。
『源氏物語』「少女」「藤裏葉」 夕霧は生後すぐ母葵の上を失い、母方の祖母大宮のもとで従妹雲居の雁と一緒に育ち、やがて2人は相思相愛の仲となる。雲居の雁の父内大臣は娘を東宮妃にしたいと望むが叶わず、夕霧と雲居の雁は初恋を貫いて結婚する。
『苔の衣』 苔の衣の大納言(後に大将、そして出家)は、母前斎宮の妹西院の上の娘、すなわち母方の従妹にあたる姫君を恋慕し結婚する。2人の間に生まれた女児も、成長後、父大納言の姉藤壺中宮の息子、すなわち父方の従兄である東宮と結婚する。しかし東宮の弟兵部卿宮が、彼女に恋着する→〔兄弟〕5。
『母のない子と子のない母と』(壺井栄) 小豆島に住むおとらおばさんは、空襲で夫を亡くし、事故で1人息子を失った。おとらおばさんのいとこ捨男さんは、ソ連に抑留されており、内地の妻は病死して、2人の子供(一郎と四郎)が残された。子供好きのおとらおばさんは、一郎と四郎を自分の子のように可愛がり、面倒を見る。やがて捨男さんが、解放されて小豆島へ帰って来る。周囲の人たちの勧めで、おとらおばさんは捨男さんと結婚する。
*大洪水で生き残った従兄妹→〔洪水〕1aの『変身物語』(オヴィディウス)巻1。
★2.従兄弟・従姉妹の恋。
『ウジェニー・グランデ』(バルザック) 吝嗇な金持ちグランデの家に、弟ギョームの手紙を持って甥シャルルが訪れる。手紙の中でギョームは、自らの破産と自殺の覚悟とを述べ、息子シャルルの将来をグランデに託す。グランデの1人娘ウジェニーは、従兄にあたるシャルルを一目見て心を奪われ、やがて2人は将来を誓い合う→〔妻〕4b。
『狭衣物語』 堀川関白の子狭衣は、兄妹のようにして育った従妹源氏宮を恋するが、彼女はこれに応えようとはしない。賀茂の神託が源氏宮を斎院と定め、彼女は狭衣の手の届かぬ禁忌の人となる。狭衣は、源氏宮によく似た式部卿宮の姫君を見出して結婚するものの、源氏宮への思いはやまない。
『シラノ・ド・ベルジュラック』(ロスタン) 近衛青年隊のシラノは醜い大鼻のために、従妹ロクサーヌへの恋を打ち明けることができぬまま、同僚クリスチャンとロクサーヌの仲を取り持つ。しかしクリスチャンは戦死し、ロクサーヌは尼僧になる。その後14年間、シラノは毎週土曜日に修道院を訪れてロクサーヌを慰めるが、ようやく彼女がシラノの恋を知った時、シラノは暗殺者の手にかかって瀕死の傷を負っていた。
『戯れに恋はすまじ』(ミュッセ) 男爵の1人息子21歳のペルディカンは学位を取得し、その従妹18歳のカミーユは修道院での教育を終えて、それぞれ故郷に帰って来る。男爵は2人を結婚させようとするが、カミーユは従兄に心ひかれながらも、修道院で男性不信の教えを吹きこまれていたために、結婚を拒否する。2人の恋のかけひきの結果、村娘ロゼッタが死に、カミーユはペルディカンと別れる→〔演技〕5。
『野菊の墓』(伊藤左千夫) 「僕(政夫)」の母は病気がちで、従姉の民子が家事の手伝いに来ている。「僕」たちは子供の時から大の仲良しだったが、「僕」が15歳、民子が17歳になる頃には、口さがない周囲が良からぬ噂をし、「僕」たちの仲を裂く。すべてをあきらめた民子は他家へ嫁に行き、流産して死んだ。「僕」は、民子の好きだった野菊を墓に植えた。
『紅楼夢』 賈宝玉と父方の従妹・林黛玉とは、前世からの因縁で恋し合う間柄だった(*→〔転生〕9b)。一方、母方の従姉・薛宝釵は、謎の僧から授かった「不離不棄・芳齢永継」の2句を彫った首飾りをつけており、それは、賈宝玉の頸にかけた美玉「通霊宝玉」に刻まれた文字「莫失莫忘・仙寿恒昌」と対になっていた。両親は賈宝玉を薛宝釵と結婚させ、林黛玉は病死した。それから1~2年後、懐妊した薛宝釵を残したまま、賈宝玉は出家して行方知れずになった。
★4.従兄妹間の結婚の結果、子供にその影響が出ることがある。
『赤い風車』(ヒューストン) ロートレックは、代々続く貴族の家に生まれた。彼は子供の頃、自邸の階段を転げ落ちて、両脚を骨折した。治療をしても、骨はもとどおりにくっつかず、医者は「一生このままだろう」と告げる。医者はロートレックの両親に「お2人は従兄妹どうしでしたね?」と尋ね、「そのせいかもしれません」と言う。
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