影響と後年の評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 07:12 UTC 版)
「月世界旅行 (映画)」の記事における「影響と後年の評価」の解説
本作はメリエスの最も有名な作品であり、かつ初期の映画の古典的な例でもあり、特に人間の顔をした月面の右目に宇宙船が刺さるシーンはよく知られている。『A Short History of Film(映画小史)』は、本作を「スペクタクル、センセーション、技術的な才覚が組み合わされ、世界的なセンセーションを引き起こした宇宙ファンタジーである」と紹介した。本作は後世の映画人に多大な影響を与え、映画という媒体に創造性をもたらし、当時の映画では珍しい目標だった純粋なエンターテインメントとしてのファンタジーを提供した。さらにメリエスの革新的な編集技法や特殊効果の技術は、後年の作品で広く使われた。また、本作は科学的なテーマがスクリーン上で機能すること、あるいは現実がカメラによって変えられることを示し、映画におけるSFやファンタジーの発展に拍車をかけた。 エドウィン・S・ポーターは1940年のインタビューで、『月世界旅行』や他のメリエス作品を見て、「物語を描いた映画が観客を劇場に呼び戻せるのではないかという結論に達し、その方向でこの仕事を始めた」と語っている。同様に、D・W・グリフィスもまたメリエスについて「私はすべて彼から恩恵を受けている」と語っている。この2人のアメリカ人監督は、今日までの映画の物語技法を発展させたことで広く認められているため、エドワード・ワゲンクネヒトはメリエスの映画史における重要性を「ポーターとグリフィスの2人に大きな影響を与え、彼らを通してアメリカの映画製作の全過程に影響を与えた」と評している。 本作はさまざまな作品で何度も参照されてきた。1908年にはパテ社のセグンド・デ・チョーモン(英語版)により、本作の無許可のリメイク作品『Excursion to the Moon』が作られた。1956年の映画『八十日間世界一周』のプロローグには、エドワード・R・マローの解説とともに本作の映像が引用されている。1998年のHBOのテレビシリーズ『フロム・ジ・アース/人類、月に立つ』の最終話では、本作の製作風景を再現したシーンがある。2007年にブライアン・セルズニック(英語版)が発表した小説『ユゴーの不思議な発明』及び、それを2011年にマーティン・スコセッシが映画化した『ヒューゴの不思議な発明』ではメリエスと本作を含む作品への大規模なオマージュが見られた。ミュージック・ビデオでは、1995年のクイーンの楽曲『ヘヴン・フォー・エヴリワン』が本作の映像を引用し、1996年のスマッシング・パンプキンズの楽曲『Tonight, Tonight』の映像が本作に触発されている。月面の目に宇宙船が刺さるイメージは、1989年のヨリス・イヴェンスのドキュメンタリー映画『風の物語(フランス語版)』で再現されたほか、視覚効果協会のロゴマークのモチーフとなったり、アメリカのアニメシリーズ『フューチュラマ』の第2話「The Series Has Landed」などで真似されたりしている。 映画研究者のアンドリュー・J・ラウシュは、本作を「映画史において最も重要な32の瞬間」の1つに挙げ、「映画の製作方法を変えた」と評している。『死ぬまでに観たい映画1001本(英語版)』の年代順のリストでは、本作がいちばん最初の作品として選ばれており、その本における映画研究者キアラ・フェラーリの作品コメントでは、本作について「メリエスの劇的人格が色濃く反映されている」と指摘し、「世界の映画史におけるマイルストーン的作品のひとつとして、この映画はしかるべき地位が与えられるべきだろう」と論じている。2000年にヴィレッジ・ヴォイス紙が映画批評家の投票により選出した「20世紀の最高の映画100本」のランキングでは、本作が84位にランクされた。映画レビューサイトのRotten Tomatoesでは、14件の批評のうち支持率は100%で、平均評価は8.90/10となっている。
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