影響と思想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/10 07:02 UTC 版)
「ジョージ・ハーバート・ミード」の記事における「影響と思想」の解説
ミードはデューイ哲学を高く評価しその解説を書いているが、ミード自身の思想にデューイの影響の跡をたどることができない、とされる。一方デューイはミードの社会心理学の理念を受け継いでいる。同時代の思想家ではミードに対するベルクソンやホワイトヘッドの影響は顕著であり、先行する社会学者ではチャールズ・クーリーの影響を受けている。 1910年『心理学はいかなる社会的対象を前提とするか?』『社会的意識と意味の意識』、1912年『社会意識のメカニズム』、1913年『社会的自我』などの論文で書かれていたことを、一つの体系としてまとめたのが1925年の論文『自我の発生と社会的統制』である。 一人ではできず、数人の協力で成り立つ行動を「社会的行動」と呼び、そのような行動が働きかける対象を「社会的対象」と呼ぶことにする。この「社会的対象」は多くの違った個人のそれぞれの異なった行為に対して応える性格を持つ。「社会的対象」はそれと関わる個人の行動が、もう一人別の個人にとってはっきり見えている場合にしか成立しない。ある人が「財産」を持っていて、その財産が他の人にとってどういう意味を持ち、どう関わり合うのかを理解したときに初めて、その「財産」は「社会的対象」となるのである。「自我」は、ある個人が自分以外の他人の役割を想像できるときに、初めて発生する。自分以外のメンバーがどのような行動をするかの傾向を知り、また自分がどのように行動すれば他のメンバーによって「正しい」と見なされるかも知っている。つまりその時、「自我」は自分にとって一つの「社会的対象」となる。 相手からある種の反応を引き出すために使われた「音声をともなう身振り」が、人間集団に共有されるようになると、それは社会のメンバーにとって共通の意味を持つ「象徴」となる。この「象徴」を産み出すメンバーの協力は、共同の労働を可能とし、さらに複雑な「象徴」の組み合わせが進み、「言語」となる。言語による会話が個人の内面に持ち越されたものが「思想」であり、すべての思想の根底には「身振り」がある。身振りが「自覚された意味を持つ象徴」まで高まると、それは「社会的対象」として一定の広さの社会集団を組織することができる。個人が他人と協力して行うことについて、自分以外の個人の役割をも考慮して、おたがいに行動を統制するようになる。このような「社会的対象」の範囲を更新し拡げることで、地球大の社会性さえ獲得することができよう。 「自我」とは自覚されたときから社会の場にいる、つまり「孤立した自我」は本来の自我の状況ではないというのが、ミードの立場である。「個人」「経験」「精神」はコミュニケーションをとおして出現する。こうしたミードのコミュニケーション論を、デューイが教育・芸術に応用した。
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