形態と配列
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/06/18 19:44 UTC 版)
一般的な球菌は、通常、直径0.5〜2µm程度のほぼ完全な球形を示す。その大きさは菌種や生育状況によってまちまちであるが、桿菌やらせん菌では長軸が5µmから、長いものでは20µmに及ぶものがあることと比較すると、概ね細菌としては標準的な大きさ、ないし小さい部類にあたる。球菌の形状は完全な球形だけではなく、腎臓形のもの、半球形のもの、三角状のもの(ランセット形、西洋の槍であるランスと同様な円錐形)など、さまざまなものが存在する。一方、桿菌にも非常に短くて球菌と似た、球桿菌と呼ばれるものが存在し、球菌と桿菌を見た目だけで判断することは必ずしも容易ではない。 顕微鏡下で球菌を観察すると、個々の細菌細胞が離れた状態で観察されるものは少なく、ほとんどの菌種は数個から数百個の細胞が集まった状態で観察される。また、このときの細胞の集まり方(配列、 arrangement)には、菌種によってそれぞれ特徴があり、球菌はその配列の違いによって、レンサ球菌、双球菌、四連球菌、八連球菌、ブドウ球菌に分類される。この配列の違いは主に球菌が細胞分裂するときの分裂面の方向性や規則性の違いに依存しており、一個の細胞が二個に分裂した後の、二回目(二個→四個)以降の分裂の性質によって決定される。 レンサ球菌 (streptococcus)と双球菌(そうきゅうきん、diplococcus)二回目の分裂面の方向が一回目と同じ、すなわち互いに平行になる場合、配列は直線状になる。このとき、細胞同士の付着性が高いものは連なった鎖状(連鎖状)になり、付着性が弱いものはそれぞれが分離して二個の細胞が対をなした状態になる。前者をレンサ球菌、後者を双球菌と呼ぶ。「レンサ球菌」という名称は、Streptococcus属(レンサ球菌属)の細菌全般を表す名称として用いられる場合も多い。なお英語では属名を表す場合は、イタリック体(斜字体)で表記し大文字ではじめる決まりがあり、配列を指す語である「streptococcus」とは、表記によって区別される。 四連球菌(よんれんきゅうきん、tetragena、tetrad)と八連球菌(はちれんきゅうきん、sarcina)二回目の分裂面の方向が一回目のものと直交する場合、細胞が規則正しく四個または八個に配列し、前者を四連球菌、後者を八連球菌と呼ぶ。分裂面が二方向(x-y方向)である場合や、分裂後の分離が早い段階で起こるものは四連の配列になり、分裂面が三方向(x-y-z方向)である場合や、分離が遅いものは八連の配列になる。 ブドウ球菌(staphylococcus)二回目以降の分裂面が不規則である場合や、四連あるいは八連球菌と同様に直交する分裂面を持ち、なおかつ分裂後の分離が不規則になると、配列もまた不規則に乱れて、ブドウの房のような配列になる。このような球菌をブドウ球菌と呼ぶ。レンサ球菌と同様に「ブドウ球菌」も、Staphylococcus属(ブドウ球菌属)の細菌全般を指す名称として用いられる場合も多い。 このような配列の違いによる分類は球菌に独特のものであり、桿菌やらせん菌ではほとんど行われない。桿菌については、炭疽菌など連鎖状に配列するものを「連鎖桿菌」と呼ぶ場合があるが、繁用されている名称ではない。 特定の球菌がどのような配列をとるかは菌種によってほとんど決まっているため、配列は球菌を同定する上での判断材料の一つになる。しかし実際に細菌を顕微鏡で観察するときには、典型的な配列を示さないこともある。例えば、四連球菌が常に全て四個一組で観察されるというわけではない。顕微鏡で観察した大部分は四個一組に見えるだろうが、たまたま分離した直後の一個や二個のものが見えたり、あるいは四個の組が密集して八連やブドウ状に見えたりもする。このように細菌の生育状態や顕微鏡標本の出来具合、観察している視野などによっても、観察される球菌の配列は違ってくることがある。
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形態と配列
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/10 06:25 UTC 版)
ほぼ完全な球形で比較的小型の(0.5〜2µm)ものが多い球菌と比べて、桿菌は形状も大きさもバリエーションに富んでいる(桿菌の例の画像ギャラリーも参照) 一般的な桿菌の大きさとしては、短径が0.2〜1µm、長径が1〜5µm程度のものが多い。セラチア(セラチア菌、霊菌)のように0.5x0.7µm程度の小型のものから、炭疽菌のように長径が10µmを超える大型のもの(大桿菌)まで、さまざまな大きさのものが存在する。短径と長径の比率は1.5〜5倍程度のものが多いが、中には短径と長径にあまり差のない短いもの(短桿菌)や、ほとんど変わらず球菌と見分けのつかないもの(球桿菌)なども存在する。 菌体の形状も、円筒状で顕微鏡下ではほぼ長方形に見えるもの、角の丸い長方形状に見えるもの、長円形のもの、また菌体の両端または一端が膨れて棍棒やマッチ棒のように見えるもの(破傷風菌やジフテリア菌など)など、さまざまなものがある。特殊なものとしては、カビと同様に、枝分かれした菌糸状の形態をとって成長する放線菌も桿菌の範疇に含めることがある。また、研究者によってはコレラ菌やヘリコバクター・ピロリ、スピロヘータなどのらせん菌も、菌体がらせん状にねじれた桿菌の一種として分類する場合もある。特にコレラ菌に代表されるビブリオについては「コンマ状桿菌」と呼ばれる場合も比較的多く見られる。 球菌の場合は、個々の菌体の形状だけではなく、それらがどのように並んでいるかという、菌体の配列が重要視されることが多いが、桿菌の場合は配列が重要視されることは少ない。一般的に桿菌は、個々の菌体が解離して不規則に並んでいる場合が多いためである。しかしながら、桿菌の一部には特徴的な配列をとるものも見られる。炭疽菌は、大きな桿菌が長軸方向に連鎖し、一直線に長く連なった配列をとることが多く、このような形状のものを「連鎖桿菌」と呼ぶことがある。また、ビフィズス菌に代表されるビフィドバクテリウム属 (Bifidobacterium)、ジフテリア菌に代表されるコリネバクテリウム属 (Corynebacterium) などでは、V字型やY字型、T字型など、特徴的な配列が見られる。 以上のような桿菌の大きさや形状、配列は菌種によってそれぞれ異なるため、細菌を鑑別同定する上での手がかりの一つになる。ただし同じ細菌であっても、培養条件が変わるとその形状が変化する場合も多い。
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