延長給付
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/25 08:13 UTC 版)
所定給付日数分の基本手当の支給では十分な保護が図れない場合に、所定給付日数を越えて基本手当を支給する制度が「延長給付」である。所定の受給期間を超えて延長給付が行われる場合、当該延長給付の終了日まで受給期間も延長される。以下の5種類がある。 訓練延長給付受給資格者が公共職業安定所長の指示した公共職業訓練(2年以内のものに限る)を受ける場合、訓練開始日の前日までの90日間(失業している日に限る)・当該職業訓練期間について、所定給付日数を超えて基本手当が支給される(第24条)。 当該訓練終了日において、基本手当の支給残日数が30日未満の場合、当該残日数では就職の見込がなく、かつ職業指導その他再就職の援助が必要と認められる者については、30日から当該残日数を差し引いた日数分を限度として、所定給付日数を超えて基本手当が支給され、受給期間もその日数分延長される。 広域延長給付地域に多数の失業者が集中的に発生滞留し、当該地域ではこれらの失業者を就職させることが困難となる場合には、公共職業安定所長が当該地域において職業の斡旋を受けることが適当と認める受給資格者に、90日を限度として所定給付日数を超えて基本手当が支給される(第25条)。船員の求人を希望する者は、広域延長給付の対象とはならない。 厚生労働大臣は、その地域における基本手当の初回受給率が全国平均の初回受給率の2倍以上となり、かつその状態が継続すると認める場合、その必要に応じ広域延長給付を発動する決定をすることができる。 「職業の斡旋を受けることが適当と認める受給資格者」とは、以下に該当する者である。求職者であって、就職のため、他地域への移動の意思があり、かつ、移動することが環境上からも可能であるものであること。 その者が有している技能、経験、健康その他の状況からみて、広域職業紹介活動による職業のあっせんが可能である者であること。 就職予定者及びその者が有している技能、経験等からみて当該地域内において短期間内に就職し得ることが可能であると認められる者でないこと。 広域延長給付を受ける者が、厚生労働大臣の指定区域内に住所を変更した場合、引き続き広域延長給付を受けることができる。一方、指定区域外に住所を変更した場合は広域延長給付は受けられなくなる。 全国延長給付失業の状況が全国的に著しく悪化したときに、受給資格者の就職状況からみて必要と認めるときは、すべての受給資格者を対象として90日を限度として所定給付日数を超えて基本手当が支給される(第27条)。 厚生労働大臣は、連続する4月間の各月における全国の基本手当の受給率が4%を超え、同期間の各月における初回受給率((基本手当の支給を受けた受給資格者数)/(基本手当の支給を受けた受給資格者数+被保険者数)))が低下する傾向になく、かつ、これらの状態が継続すると認められる場合、その必要に応じ全国延長給付を発動する決定をすることができる。 広域延長給付・全国延長給付は、期間を限って実施される。そのため、その期間の末日が到来したときには、当該延長給付の支給終了前であっても、当該延長給付は打ち切られる。 地域延長給付受給資格に係る離職日が2022年(令和4年)3月31日以前である受給資格者(就職困難者以外の受給資格者であって、特定受給資格者もしくは特定理由離職者(希望に反して契約更新がなかったことによる離職者に限る))であって、厚生労働省令に定める基準に照らして雇用機会が不足していると認められる地域として厚生労働大臣が指定する地域(最近1か月において、その地域を管轄する公共職業安定所において求職の登録をした者であって就職したもののうちその地域において就職した者の割合が50%に満たない地域等)内に居住し、かつ、公共職業安定所長が指導基準に照らして再就職を促進するために必要な職業指導を行うことが適当であると認めたもの(個別延長給付を受けることができる者を除く)については、受給期間内の失業している日について、60日(35〜60歳で被保険者期間が20年以上の者は30日)を限度として所定給付日数を超えて基本手当が支給される(附則第5条)。 個別延長給付就職困難者以外の受給資格者であって、特定受給資格者もしくは特定理由離職者(希望に反して契約更新がなかったことによる離職者に限る)であって、以下の1〜3のいずれかに該当し、かつ公共職業安定所長が指導基準に照らして再就職を促進するために必要な職業指導を行うことが適当であると認めたものについては、受給期間内の失業している日について、1,3の場合は60日(35〜60歳で被保険者期間が20年以上の者は30日)、2の場合は120日(35〜60歳で被保険者期間が20年以上の者は90日)を限度として所定給付日数を超えて基本手当が支給される(第24条の2)。心身の基準が以下のいずれかに該当する者難治性疾患を有するもの 発達障害者支援法第2条に規定する発達障害者 障害者雇用促進法第2条に規定する障害者 雇用されていた適用事業が、激甚災害法第2条の規定により指定された激甚災害の被害を受けたため離職を余儀なくされた者又は離職したものとみなされた者で政令で定める基準に照らして職業に就くことが特に困難であると認められる地域として厚生労働大臣が指定する地域内に居住する者 雇用されていた適用事業が、激甚災害その他厚生労働省令で定める災害の被害を受けたため離職を余儀なくされた者又は離職したものとみなされた者(2に該当する者を除く) リーマンショック時の暫定措置として実施された「個別延長給付」は平成29年3月31日で終了し、同名で内容の異なる新たな延長給付が平成29年4月1日より実施されている。 「指導基準に照らして」とは、具体的には具体的には受給資格者が次のいずれにも該当することをいう(規則第38条の3)。特に誠実かつ熱心に求職活動を行っているにもかかわらず、基本手当の支給を受け終わる日までに職業に就く見込みがなく、かつ、特に職業指導その他再就職の援助を行う必要があると認められること。 当該受給資格取得後最初に求職の申し込みをした日以後、正当な理由なくハローワークの紹介する就職・職業訓練・職業指導を拒否したことがないこと。 新型コロナウイルス感染拡大に伴った臨時特例による延長給付2020年の新型コロナウイルスの感染拡大による失業者を支援する為、同年6月12日の第201回国会にて、「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律」が成立。給付日数が最大で60日延長された。 対象者は以下の通り、改正・新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の発令日及び全面解除日が基準となる。 所定給付日数延長対象者離職日対象者~2020年4月7日(緊急事態宣言発令以前) 離職理由を問わず、全受給者が対象 2020年4月8日~同年5月25日(緊急事態宣言発令中) 特定受給資格者及び特定理由離職者 2020年5月26日~(緊急事態宣言全国解除日以降) 特定受給資格者及び特定理由離職者であり、かつ、新型コロナウイルスの影響により離職を余儀なくされた者 2種類以上の延長給付を同時に受けることはできず、個別、地域、広域、全国、訓練の順で優先的に給付される(第28条)。劣後する延長給付を受けているときに優先する延長給付を受けることとなったときは、劣後する延長給付は一時延期され、優先する延長給付の終了後に劣後する延長給付を再開する。このため、2種類以上の延長給付を連続して受ける場合、合計で90日を超えることがある。
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