子音交替
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/03 04:13 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動子音交替(しいんこうたい)とは、一つの言語の中で、語の置かれた環境によって(他の語との複合などで)子音が変化する現象。また言語によっては子音が変化することにより、単語が別の単語に変化するなど文法上の機能を持つこともある。子音変異などともいう。
なお、これとは別に、別の関係のある言語・方言の間で対応する単語に子音の違いが見られること(歴史的な子音推移による)を指す場合もある。
概要
接合によって接続部の子音が変化する例は多くの言語に見られる。たとえばトルコ語のkitap「本」に所有接辞の-ım「私の」が接合するとkitabım「私の本」となる。ドイツ語やオランダ語、ロシア語やポーランド語などにも同様の現象が見られるが、これらの言語では子音の変化を正書法に反映させないことが多い。
日本語の連濁も子音交替の例である。また音便の一部も子音交替に含めることもできる。
- はる+あめ→はるさめ(春雨)
なども子音交替もしくは子音挿入と考えられる。これらに似た現象はほかの言語にも多くみられる。
ラテン語で、接頭辞の末尾子音が変化する(英語にも contain : compare : correlation などと残る;別にインドネシア語でも類似の現象がある)のも子音交替とされるが、これは後続子音との間の同化による。
ウェールズ語では単数の女性名詞に冠詞や所有形容詞がつくと名詞の語頭子音が変化するという独特の現象がある(merch「少女」、y ferch「その少女」)ため、性の表示という文法機能を兼ねる。特定の文法的条件下で語頭子音が変化する現象はウェールズ語などのケルト諸語の他、西アフリカの諸言語やアメリンド諸語、ニヴフ語、そしてニアス語やバヌアツの諸言語といったオーストロネシア諸語にも見られる[1]。
英語では、名詞の数(knife-knives)や品詞の転換(life-live)などの文法的変化に伴い語尾の子音交替が見られる。
フィンランド語では語幹内の子音交替(子音階梯交替;格語尾の付加に伴う)による格変化が見られる。
似た現象にフランス語などのリエゾン(単独では発音されない子音が母音の後続によって出現する)がある。
脚注
- ^ Brown (1997:397).
参考文献
- Brown, Lea (1997) Nominal Mutation in Nias. In Odé, Cecilia & Wim Stokhof Proceedings of the Seventh International Conference on Austronesian Linguistics, pp. 395-414. Amsterdam: Rodopi. ISBN 90-420-0253-0
関連項目
子音交替
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ヒキダシ(引き出し)がシキダシ、ヒトリ(一人)がシトリとなるように、/hi/ が /si/ と交替することがある。秋田方言の /hi/ は元々は [ɸï] (フィ)と発音されていたが、唇音性が弱まって [çï] (ヒ)と発音されるようになってきたために、/si/ ([sï])と音が近付いてこのような交替が起こるようになったものである。 /ta/ が語中で有声化して [da] となり、さらに /ra/ と交替する場合がある。例えば「走っていた」がハシッテラ、「見ていた」がミデラ、「ぶっ叩く」がブッタラグのようになる場合がある。また、「そんな」に相当する「ソンタナ」は、秋田方言で連体形が終止形と同形になるためにソンタンダとなり、さらにソンタラとなる。これは /da/ から /ra/ への交替である。 アレオネ(あれをね)がアデオネとなるような /re/ から /de/ への交替も稀に見られる。 ヤッパリ(やっぱり)、マルッキリ(丸っきり)のような語には、ヤッパシ、マルッキシのように /ri/ から /si/ への交替を起こした形が見られる。 ヤ行音の /j/ が、硬口蓋接近音の [j] から摩擦を強めて有声硬口蓋摩擦音の [ʝ] になり、さらに無声化により無声硬口蓋摩擦音の [ç] になり、そこから無声歯茎硬口蓋摩擦音の [ɕ] や無声声門摩擦音の [h] に変化する現象が見られる。特に「言う」(ユウ)に多い。由利本荘市の子吉や鮎川(旧本荘市)では、ユウがヒュウを経てシュウ、シュとなっており、シュワネァ(言わない)、シュッタ(言った)、シュ(言う)、シュトギ(言うとき)、シュエンバ(言えば)、シュエ(言え)のように活用する。また山本郡三種町鵜川(旧八竜町)でもシュッタ、シュッタッテの形がある。鹿角地方から北秋田地方にかけてもこの現象が見られる。この地方ではワ行五段が規則的にラ行五段になり、「言う」はヘルやシェルの形で現れる。「入れる」もイレルからイエル、イェルを経てシェル、セルになっていることがある。依頼の「~してください」がタンエ、タンシェとなることがあるが、これはタモレからタンイェ、タンヒェを経て変化したものであり、秋田県内ではタモレ、タンエ、タンシェが並存している。 /s/ が /h/ に変化する現象も見られる。例えば「そうですね」がホーンデシネのように発音される。また、近畿から日本海沿いに伝わってきた理由表現の「-さかいに」が、由利地方南部で「-サゲ」とともに「-ハゲ」の形で現れる。由利地方では、本荘のンデゴザリアンホ、ンデゴザラホ、ンデガホ、矢島のンダンダホ(そうでしょう、ソンデゴザリアンショから)のように、ショがホに変化した形もある。このような変化は由利地方と庄内地方に共通して見られる。 語頭で無声の子音が有声に交替する現象が語彙的に見られる。とくにガニ(蟹)、ガメ(亀)、ガンバン(鞄)のように /k/ から /ɡ/ へ変化している例が多い。他にドド(魚)、バジ(蜂)などの例もある。 /ki/ や /kj/ が口蓋化して /ci/ や /cj/ に変化している例も見られる。例えばチャファン(脚絆)やチョー(今日)などの例がある。また、/ɡj/ が /zj/ に変化しているジュニグ(牛肉)のような例や、/zi/ が /ɡi/ に変化しているノキ゜(虹)、チチキ゜(躑躅)、ギシャグ(磁石)のような例もある。
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子音交替と同じ種類の言葉
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