天皇・皇室に対する避諱
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 18:52 UTC 版)
「菊タブー」も参照 上述の通り、貴人から臣下へ偏諱授与がされる例は多いが、天皇に関しては行われた例はほとんどない。後醍醐天皇(諱は尊治)から足利尊氏に偏諱授与がされたのは、極めて異例の事とされる。 現代に至るまで、天皇・皇族(特に天皇直系1親等の親王・内親王)に対しては、本人以外が諱で呼称することは控えられる傾向にあった。特に天皇に対しては、一般人にとどまることなく、天皇の傍系尊属の皇族といえども一切諱を用いて呼称しないのが暗黙の通例となっており、崩御した天皇については諡号(「明治天皇」・「大正天皇」・「昭和天皇」など)で呼称するのがほとんどであるほか、在位中の天皇については、現在位にある天皇という意味で、一般にはあまり用いられないが「今上天皇」、あるいはあえて名の呼称を避けて職敬名で「(天皇)陛下」と呼称する場合がほとんどである(天皇・皇后が揃って動く場合は“陛下”が並び立つ事になるため「天皇皇后両陛下」の表現が用いられる)。 親王(内親王)・宮家当主に対しても、皇室最上位にあたる天皇をはじめ直系・傍系尊属にあたる皇族でさえ諱を用いず、宮号や御称号を用いて呼称するのが慣例となっている。一般人が呼称する際には、天皇直系1親等の親王・内親王を「○○宮(親王殿下)」・「○○宮(内親王殿下)」、宮家当主を「○○宮(殿下)」と呼称することがほとんどである。その範疇から親等が進んだ皇族に関しては、天皇から2親等の親王・内親王には「○○(諱)親王・内親王(殿下)」、あるいは「○○(諱)さま」と呼称することが多い。 日本の公文書においては、伝統的な用法として天皇の署名については「御名」、捺印については「御璽」と表記して公刊されるのが通例である。外国語で天皇を指称する場合には諱を用いることが多いが、近代以前の天皇については追号で呼ぶことが多い。 天皇直系1親等の親王・内親王で、「○○宮(殿下)」と称号で呼称されることが通例であったが、特に天皇徳仁の子の世代からは、廃れつつあるのが現状である。そもそも昭和天皇の長子には3子あり、浩宮徳仁親王、礼宮文仁親王、紀宮清子内親王とそれぞれ称号を有していたが、上皇明仁の孫4人で称号を有しているのは徳仁の長女・敬宮愛子内親王のみであり、秋篠宮文仁親王の3子、眞子内親王、佳子内親王、悠仁親王にはそもそも称号がない。称号を有する皇族が愛子内親王だけであるため、称号を使用する機会が減少しているのも大きな要因である。天皇、皇后も4人の孫に言及するときは称号を有しない3人の孫に合わせて愛子内親王も名前で呼ぶ。民間でも、敬宮愛子内親王(殿下)を「愛子(諱)さま」と表記するのがもはや普通となっており、また、かつて黒田清子が内親王であった際に「紀宮(殿下)」ではなく「清子(諱)さま」・「サーヤ(皇室で用いられていた愛称)」などと表記するケースが見られた。 天皇・親王・内親王・宮家当主の著作が学術論文分野に属するものである場合(たとえば昭和天皇や上皇明仁による生物学関連の論文など)、科学的文献については出自・貴賎は不問であるという国際的解釈から、著者署名には諱を記して公刊されるのが通例となっている。またそういった文献が他者によって引用される場合でも、元著作者名として諱がそのまま用いられる。ただし日本語の文献においては、諱を漢字表記する事を憚って、例えば「アキヒト属(ハゼ科の属名)」「アキヒト・バヌアツ(アキヒト属に属するハゼの一種)」のようにカタカナ表記する場合が多い[疑問点 – ノート]。同様に外国語の文献で天皇の事について記述がある場合、それを翻訳する場合に元の記述の直訳として、諱をカタカナ表記する例が見られる。 しかし、辞典や学者の著書などでは天皇を始めとする皇室構成員に言及する場合に実名を用いたり、天皇制廃止論者などは、天皇・皇室に特別な敬意を示さないことを間接的に表現する手段として、あえて意図的に実名を用いる場合がある。天皇・皇族への実用使用に対して宮内庁が公式に不快感を表明することはない。これは日本国憲法第19条(思想・良心の自由)、第21条(言論・表現の自由)に配慮しているためである。
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