国際法上の評価
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当時の国際法においては、国家への武力による条約の強制があっても有効であるが、国家代表者に対する脅迫があった条約は無効原因となるとされている。第二次日韓協約の締結と同一年に刊行された英国の国際法の教科書であるオッペンハイム(L. Oppenheim)には「真正の同意がない場合には条約は拘束力を欠くので、締約国には絶対的な行動の自由がなければならない。しかし、『行動の自由』という表現は、締約国の代表者に対してのみ適用される。当事国の代表者に対する脅迫に基づき締結された条約は、この者の代表する国家を拘束するものではない」との説明が見られる。同時代の代表的国際法学者であったホール(W.E. Hall)の他に、ブルンチュリ(M. Bluntschili)やフィオレ(P. Fiole)、倉知鉄吉や高橋作衛といった学者も同様の見解を示していた。このように、国の代表者に対して個人的に加えられた強制や脅迫の結果として結ばれた条約が無効となるということは、第二次日韓協約締結当時の国際慣習法として成立していたものと思われる。 今日における無効論の大多数は、以下の2点を主張し、その根拠としている。 本協約は当事国の代表者への脅迫に基づいて強制的に調印させた条約である。 本協約朝鮮には皇帝の承認(署名・調印)がない。 韓国の学者やフランス国際法学者フランシス・レイは「第二次日韓協約締結時に国家代表たる高宗に強迫が使われた」ことと「日本の韓国に対する保証義務」をあげて「無効」と主張している。また、1935年にハーバード大学法学部が米国の国際法学会から委託を受け、条約法制定に関してまとめた「ハーヴァード草案」では、条約強制に関する部分でフランシス・レイの理論をそのまま採択し、第二次日韓協約を相手国代表を強制した効力を発生しえない条約の事例として挙げた。更に1963年に国連ILC報告書の中で、ウォルドック特別報告官は第二次日韓協約を国家代表個人の強制による絶対的無効の事例としていた。ここで言う代表者個人への強制の事例としては、強硬な反対派であった参政大臣の韓圭ソル(ハン・ギュソル)の別室への監禁と脅迫、憲兵隊を外部大臣官邸に派遣し、官印を強引に奪い取極書に押捺した事などがあったとされており、その様子がロンドンデイリーメイル紙の記者マッケンジーの著書『朝鮮の悲劇』や、11月23日付けの『チャイナ・ガジェット』(英字新聞)に記載されている。一方、海野福寿(明治大教授)は協約調印の当日に韓国駐箚軍が王宮前広場で演習などを行ったりはしていたが、この日は李完用学部大臣の邸宅が焼き討ちされる等の状況にあり、過剰警備であったとしても、それが国家代表者への脅迫とはいえず、また、無効論者が強制の根拠としている『韓末外交秘話』は、その著者自身が噂をまとめたものと記しているように資料的価値がないとし、更に、条約に署名・調印する者は、国際法では皇帝でなくとも特命全権大使や外務大臣でもよいため、韓国側の外部大臣と日本側の駐韓公使が署名調印した同条約は国際法的に問題はないとしている。また、海野は1966年の国連国際法委員会で採択された条約法『国の代表者に対して強制があった条約は無効とする法』に同条約への言及がないことを指摘し、国家への強制性は認められるが、国際法的に無効原因となる国家代表者個人に対する脅迫の事実を史料的に確認することはできないとしている。また、上述(#協約締結時の高宗皇帝)のように原田環(県立広島女子大教授)からは、『五大臣上疏文』などの史料調査から皇帝の高宗は「日本の協約案を修正して調印する方向に韓国の大臣達を動かしていた」とし、脅迫をされたという皇帝自ら協約締結のリーダーシップをとっていたとの指摘がなされている。 2001年、この問題を検討するために韓国側の強い働きかけにより開催された国際学術会議、「韓国併合再検討国際会議」では、日韓および欧米の学者が参集し問題を検討している。韓国の学者は一致して不法論を述べ、また日本から参加の笹川紀勝も持論の違法論を述べるなどしたが、ダービー大学のキャティ教授が帝国主義全盛の当時において「国際法が存在していたかどうかさえ疑わしい」とし、ケンブリッジ大学のクロフォード教授(国際法)は「強制されたから不法という議論は第一次世界大戦(1914年-1918年)以降のもので当時としては問題になるものではない」、「国際法は文明国間にのみ適用され、非文明国には適用されない」とし、「英米などの列強の承認があった以上、当時の国際法慣行からするならば、無効ということはできない」としている。 「韓国併合再検討国際会議」も参照
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国際法上の評価
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李承晩ラインの設定はサンフランシスコ平和条約に反したものであるが前述のとおり韓国はこれに調印していない。しかし、韓国は同条約起草時に要望をアメリカ政府に述べることが可能な立場であり、実際に一部の要求(在朝鮮半島における日本資産の韓国政府および在韓米軍による接収)はサンフランシスコ条約に採用されている。マッカーサー・ライン継続、竹島の領有などの韓国の要望が却下されているのは前述の通りである。
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