各分野での採用例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 13:26 UTC 版)
「ヘボン式ローマ字」の記事における「各分野での採用例」の解説
上記のようにヘボン式は日本式・訓令式と競合関係にあり、また一時期日本政府の公的なローマ字表記から排除されていたにも関わらず、様々な分野で各種のヘボン式ローマ字が広く採用されている。 鉄道の駅名は運輸省「鉄道掲示規程」(1947年7月26日 達398号、後に数回改訂)でヘボン式を使うこととしている。表記法は「和英語林集成」の旧ヘボン式に準じており、大正時代から基本的に変化がない。長母音はマクロンを使用する。撥音はb/m/pの前でmを使用し、後ろに母音やyがあった場合、あるいは方角(東西南北)や新などを冠した後、もしくは固有名詞を合わせた地名等にはハイフンを加える。JR以外の鉄道事業者も概ね旧ヘボン式を使っているが、長母音や撥音、ハイフン後の大文字小文字の書き方等に多少の不統一が見られる(直通運転がある等で直通相手の路線が路線図に含まれる場合、自社局の方式と他社局の方式のどちらに合わせているかは事業者による)。 道路標識においては1986年10月25日の建設省「道路標識令」でヘボン式を採用している。概ね修正ヘボン式に準じた表記が採用されており、撥音はnで統一されているが、撥音の後ろに母音字またはyが続く場合の区切り記号は旧ヘボン式に準じたハイフンである。また、長母音は短母音と区別されない。 日本地質学会は1952年に地層命名にヘボン式ローマ字を使うことを決定した。気象庁は1955年3月1日の通達で気象年報・月報の地名にヘボン式を採用している。地質調査所は1984年4月17日の規程でヘボン式を採用した。水路部は訓令式ローマ字を使ってきたが、1999年にヘボン式に移行した。 国土地理院は原則として訓令式ローマ字を使用してきたが、2004年11月11日の国土地理院長達34号でヘボン式に改められた。道路標識と同様の修正ヘボン式であり、撥音は常にnと書くが、母音やyの前ではハイフンで区切る。また、長母音は短母音と区別されない。 日本国旅券の名前表記のローマ字は、外務省「旅券法施行規則」により、特別に申請しない場合、ヘボン式を使用する。旧ヘボン式に準じた表記法が採用されており、撥音はb/m/pの前でmを使用し、後ろに母音やyがあった場合には何も加えない。長母音は短母音と区別しない。 日本郵便は国際郵便のローマ字方式について特に規定していないが、郵便番号データファイルでは旧ヘボン式を用いており、撥音はb/m/pの前でmと記し、長母音は短母音と区別しない。 日本の地方公共団体ではその名称のローマ字表記にヘボン式を用いていることが大半であるが、長母音など記号類は省略される場合が多い。撥音の扱いについては地方公共団体によって旧ヘボン式を採用するか修正ヘボン式を採用するか方針が分かれており、二本松市(Nihonmatsu)、紋別市(Monbetsu)などで修正ヘボン式が、丹波市(Tamba)、仙北市(Semboku)などでは旧ヘボン式が用いられている。日本レジストリサービスの管理するLGドメイン名の地方公共団体ラベルは都道府県または市区町村の名称をヘボン式ローマ字に直したものを用いるとされているが、前述の地方公共団体による採用方式の違いを反映し複数のヘボン式が混在している。 アメリカ図書館協会およびアメリカ議会図書館のローマ字表記法は、前述の通り「新和英大辞典」第3版を出典とした修正ヘボン式となっており、長母音にはマクロンを使う。撥音は常にnと記し、母音やyが後続するときにはハイフンで区切る。 米国国家規格協会ではANSI Z39.11-1972 “System for the romanization of Japanese” において修正ヘボン式を採用したが、後に訓令式に基づくISO 3602の登場を受けて1994年に廃止されているアメリカ情報標準化機構(英語版)によって撤回されている。 英国においては「アメリカ地名委員会およびイギリス地名常置委員会の1976年合意に基づく修正ヘボン式」と呼ばれる表記法が用いられている。 アメリカでよく使われるエレノア・ジョーデンの日本語教科書では本文に訓令式をベースとしたローマ字表記法(JSLローマ字)を使用しているが、英文中の日本語(引用文を除く)ではヘボン式を使っている。 アメリカにおける標準的スタイルガイドである『シカゴ・マニュアル』では、日本のローマ字にはさまざまな方式があるものの、明治初年以来もっともよく使われているのは修正ヘボン式であるとしている。日本では修正ヘボン式が研究社の辞典ほか主要な和英辞典に使われているとしている。日本以外ではほとんど修正ヘボン式のみが使われているとしている。撥音に母音やyが後続するときに区切りとして入れるアポストロフィおよび長母音であることを示すマクロンについては、よく知られた地名や英語化された日本語の単語の場合、正確な発音を示す目的以外では付けないと例外も示している。
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